人気ドラマ「おいしい給食」が映画に!コミカルな教師役を演じた市原隼人さんを直撃
俳優の市原隼人が、給食をこの上なく愛する“給食絶対主義者”の教師、甘利田幸男役に扮し、中学生の男子生徒と、「どちらがよりおいしく給食を食べるか」というガチバトルを繰り広げた人気ドラマ「おいしい給食」。この抱腹絶倒のコメディがバージョンアップし、『劇場版 おいしい給食 Final Battle』としてスクリーンに登場しました。
市原隼人さんが語る、『劇場版 おいしい給食 Final Battle』の魅力は
本作で、給食マニアの教師・甘利田役に扮し、とびきり振り切った演技を魅せている市原さんに単独インタビュー。給食が大好きだったという市原さんに、本作の魅力や撮影秘話をはじめ、好奇心旺盛だった小学生時代の思い出や、俳優としての今についてたっぷり語っていただきました。
給食をおいしく食べることに情熱を注ぐ中学校の教師・甘利田は、ある日、学校から給食が無くなるという衝撃の情報を耳にします。そんな甘利田がライバル視するのは、同じく給食に対して熱い情熱を燃やす生徒、神野ゴウ(佐藤大志)。彼は「給食改革」を掲げ、生徒会選挙に出馬すると宣言します。新人教師の御園ひとみ(武田玲奈)が2人を見守る中、甘利田はなんとか給食をなくさないようにと、策を練りますが……。
――非常にユニークな教師、甘利田幸男役ですが、まずは、脚本を読んだ感想から聞かせてください。
原作があるものなのかと思っていたら、オリジナル脚本で、非常に面白かったです。僕は自分で料理もしますし、市場に魚を買いつけにも行ったりもしますが、これまで食を描くジャンルの作品と向き合ったことがなかったので、ぜひトライしてみたいと思いました。
――甘利田役にはどんなふうにアプローチをしていきましたか?
どのように作っていくかはギリギリまで悩みましたが、現場で綾部(真弥)監督を信頼していたからこそ、ここまで振り切れた感覚になれたのかなと。足をピーンと伸ばしたところなど、自分が勝手に始めたこともありますが、生徒への威圧感や、給食の前に校歌を歌うハッチャケぶりなどは、監督とも相談しました。何よりも1から作り上げていく面白さがありました。
――ハイテンションな表情が多く、どちらかというと変人的な要素もある甘利田ですが、市原さんが演じることで、愛すべきキャラクターになりましたね。
アニメのようにキャラ立ちした動きもあるし、演技がいきすぎていないかと、その微妙なさじ加減を考えました。滑稽だけど、ちょっと愛くるしく見えるようなキャラクターでもあってほしかったので。どんな作品でも悩みますが、今回はよりスーパーポップなエンターテインメント作品だからこそ、より難しかったです。
――中学生の子役たちとの現場は、どんな雰囲気でしたか?
夏だったので、すごく暑かったですが、いつも子どもたちがいたので、自然とパワーは落ちなかったです。控室は、怪獣がいっぱいいるような感じでした(笑)。みんな、食べるのも好きで、給食もたくさん食べるので、見る見るうちにでかくなっていくんですが、かわいかったです。
――給食を食べるシーンは、本作には欠かせないですからね。
給食はすごくおいしかったです。ただ、1回だけじゃなく、2回は通しで同じ献立を食べなきゃいけないので、スープがある時は、お腹がはち切れそうでした。また、献立の歴史や文化の重みも一緒に知ることができたし、日本独特の「いただきます」「ごちそうさま」と言う言葉がしっかり入っている点もすごくいいなと思いました。
――新人教師の御園ひとみ役を演じた武田玲奈さんとのやりとりも絶妙でした。
武田さんは、前にも出すぎず、与えられた仕事をしっかり務めながら、ちゃんと華を添えてくださるという、内面的な美しさがある方だなと思いましたが、現場ではあまり話す時間は取れなかったです。甘利田は、給食だけに固執している、ある意味ちょっと孤独な男で、そんな男が唯一給食を通して生徒とふれ合ったり、誰かとの距離を縮めたりできるという設定なので、御園先生との距離感としては、ちょうど良かったのかなと思います。
――神野ゴウ役の佐藤大志くんの堂々とした存在感も光っていました。佐藤くんとドラマから共演してみていかがでしたか?
最初は、原石を見つけたという印象でした。本当に無垢で、汚れがなく、神野ゴウ役にぴったりだと思いました。イメージどおりで驚きましたね。
現場では、かわいくて仕方がなかったです。すべてを悟ったような顔がたまらなくて。大志は芝居経験がなかったけど、回を重ねていくうちにどんどん成長していきました。それを目の前で見ることができたのは、すごく貴重な経験でした。人はこんなに可能性を秘めているのかとびっくりしましたし、映画では、しっかりした感情の芝居も見せてくれたので感動しました。
――市原さんは、小中学校時代、給食は好きでしたか? また、好きだったメニューも教えてください。
僕も給食の時間が大好きでした。給食当番になるのもうれしかったです。メニューでは、きな粉を付けて食べる揚げパンが一番好きでした。
――給食の思い出についても聞かせてください。
給食は好きでしたが、小さい頃は好き嫌いがあったので、周りの子どもたちがみんな食べ終わった後も、最後まで1人だけ残されて食べていたことがありました(苦笑)。あと、パンを残して、下校中に、犬にあげるのが楽しみでした。
――市原さんは、どんな少年時代を過ごしていたのですか?
好奇心の塊で、常にトム・ソーヤのような冒険がしたいと思っている子でした。登下校の道端は、僕にとってはテーマパークのようなもの。石があれば石蹴りをしたり、友だちと話したり。知らない人にも挨拶をするので、それがルーティンになると「今日も笑顔で返してくれた」とか「今日は、あの人がいないな」とか思ったりして。毎日すごく楽しかったです。
――小学生の時にスカウトされて、俳優を始めた市原さんですが、まさに天職ではないかと。
でも、前に出たり、写真や動画を撮られるのはすごく苦手でした。
――実はシャイなんですね。そんなふうに見えませんが。
僕は、役者業を裏方だと思っているので、こうして宣伝でしゃべったり撮られたりすることも得意ではないですし、いまだに慣れません。俳優としていろんな現場にいても、常にアウェイな感じですし。でも、芝居で前に出るのはうれしいし、常に試行錯誤しながら夢中でやっているので、緊張もしません。ただ、いつも自分では闘っているイメージです。
――『リリイ・シュシュのすべて』(01)で映画デビューされ20年近くが過ぎましたが、今回の甘利田役は、市原さんにとってどういう位置づけの役になりましたか?
僕が約20年間やってきたことがふんだんに入っている役となりました。スポ根ものから人間ドラマ、コメディに至るまで、全部が統合されて甘利田幸男が出来上がったキャラクターだと思っています。綾部監督にもすごく感謝していますし、自分のなかでも貴重な役柄だし、作品としても、この先、間違いなく残っていくものに仕上がったと思います。
監督:綾部真弥
出演:市原隼人、武田玲奈、佐藤大志、豊嶋花、辻本達規、水野勝、直江喜一、ドロンズ石本、いとうまい子、酒向芳…ほか
公式HP: https://oishi-kyushoku.com/
取材・撮影・文/山崎伸子