向田邦子の名エッセイを角田光代が絵本に『字のないはがき』が大賞を受賞!【第1回親子で読んでほしい絵本大賞発表】

「親子で読んでほしい絵本大賞」の受賞作品が決定!

「親子でもっと絵本を読んでほしい。いい絵本を親子に届けたい」という思いをこめて、JPIC読書アドバイザークラブ(JRAC)が2019年に創設した「親子で読んでほしい絵本大賞」。この度、第1回の受賞作が決定し、3月16日に東京の「出版クラブホール」にて贈賞式が執り行われました。

JPIC読書アドバイザーとは、読書や出版について専門的な講座を修了することで資格を得られる、本を取り巻く環境を知り尽くした、いわば本のプロ。約2500名の読書アドバイザーの中から、現在660名がJPIC読書アドバイザークラブ(JRAC)に属して、読書推進活動に勤しんでいます。

「親子で読んでほしい絵本大賞」は、JRACの会員からなる選考委員40名が、季刊誌「この本読んで!」 2019 年春号から冬号で紹介された 400冊の新刊絵本( 18 9 月から 19 8 月までに刊行された絵本)の中から入賞作品 12 冊を選出。その 12 冊をJRAC 会員が読んで、「親子で読んでほしい絵本」 1 位から 3 位を選んで投票。 1 年をかけて選考した投票結果を集計し大賞作品を決定しました。

大賞作品、ならびに入賞作品を、読書アドバイザーの推薦のコメントとともにご紹介します。学校での読み聞かせ活動、また、お子さんとの絵本タイムの候補の参考にしてください。

*推薦コメントは、『この本読んで!』2020年春号から引用しています。

 

第1回大賞は『字のないはがき』。向田邦子の名エッセイを角田光代さんが絵本に

向田邦子/原作 角田光代/文 西加奈子/絵 小学館

読書アドバイザーからの推薦コメント

  • 向田邦子・角田光代・西加奈子。本好きならきっとワクワクする名前が並びます。この作品を教科書で読んだ方も多いでしょう。昭和の戦争を令和の子たちにも伝えたいですね。戦争中の家族の絆に心打たれます。
  • 気難しい父親が、幼い娘をひとりで疎開させることへの心配が、痛いほど伝わってきました。素直にマルとバツで様子を伝えてくる娘の純真さにも心打たれます。戦争のもたらすつらい側面を親子の交流から理解でき、親子でその気持ちを語り合えたら、と思いました。
  • 西加奈子さんは人々の表情や戦火の街をまったく描いていません。末娘を抱いて慟哭する父親が蹴散らかした下駄と、汚れた足の裏を描くことで、戦争の悲惨さを強く想像させます。字のないはがきの絵が、平和の尊さを強く訴える1冊だと思います。

 

作品に込められた角田光代さんのメッセージとは

大賞の受贈式でJRACの洞本代表幹事と並ぶ、作家・角田光代さん

向田邦子の大ファンだった作家の角田光代さんに、編集者から絵本の企画構成の依頼があったのは2018年。長年、この企画の実現を夢見てきた編集者が、この絵本の主役ともいえる向田邦子の妹である和子さんに企画の相談をしたところ、「絵本へのリライトは角田光代さんに依頼すること」を条件に了解をくださったのだそうです。

二つ返事で引き受けた角田さんでしたが、向田さんの文章をできるだけそのまま生かして構成することに心を砕いて、完成までに3年を要しました。向田さんの原文から「引くことはあっても、足してはいけない」を信条に構成された『字のないはがき』ですが、角田さんがただ1箇所付け加えた部分があります。

それは、疎開先から帰ってきた妹を迎えたときの父親の泣き声でした。数々の向田作品に登場する父親は、一貫して「明治生まれ」を体現する厳格さをもって描かれています。その厳しい父親が感情をほとばしらせて泣く様を、角田さんがどのように表現したか。それは、是非、みなさんがご自身で確かめてください。

「時代に即した戦争の伝え方」(読書アドバイザー・児玉ひろ美さん)が家族の絆と共に描かれた、いつまでも読み継がれてほしい絵本です。

第1回 親子で読んでほしい絵本大賞 入賞作品を一挙に紹介!

そのほかにも、名作絵本が入賞を果たしました。読書アドバイザーのコメント共にご紹介します。

2位 「なまえのないねこ」

竹下文子/文 町田尚子/絵 小峰書店

読書アドバイザーからの推薦コメント

  • ストーリーもさることながら、絵の構図がネコの目線で、私たちが普通に見ている世界と違うところに面白さを感じました。おはなしの中にすっと入っていける、絵に力がある絵本なので選びました。ネコが好きな親子でなくても楽しく読めると思います。
  • 「親子で読む」というコンセプトにぴったり。読んだあとに、やさしく名前を呼んでほしくなる(呼びたくなります)。あたたかい時間が流れる絵本。ページいっぱいのネコの顔には、ネコ好きでなくても緑の目に心をつかまれます。

 

3位『このほんよんでくれ!』

ベネディクト・カルポネリ/文 ほむらひろし/訳

読書アドバイザーからの推薦コメント

  • 偶然、人間の親子の読み聞かせを聞いたオオカミ。落としていった絵本を読んでもらおうと、動物たちに頼むけど、怖がられてしまい…。本を読んでもらう楽しさを知ったオオカミと、やさしく勇気のあるウサギ。ほのぼのとしたやさしい気持ちになります。是非、親子で読んで欲しい本です。
  • 忘れちゃいけないこの気持ち、本を読むとき、すすめるとき。知りたい気持ちから始まることを、身悶えするオオカミは教えてくれました。

4位 『かんけり』

石川えりこ/作 アリス館

アドバイザーからの推薦コメント

懐かしい子どもの遊びをめぐるおはなしです。もしかすると缶蹴りを知らない親もいるかもしれませんが、そのときは祖父母や親子で3世代のコミュニケーションができるかもしれません。

4位 『じゃない!』

チョーヒカル/作 フレーベル館

読書アドバイザーからの推薦コメント

すてきにだましてもらえるトリックアートに夢中になってしまいます。最後に出てくるアイスクリーム。よーく見ると手かな?とわかるように仕掛けてあるところなど、感覚を研ぎ澄まさせてくれます。新鮮なユーモアにあふれています。

6位『おおかみのおなかのなかで』

マック・バーネット/文 ジョン・クラッセン/絵 なかがわちひろ/訳  徳間書店

読書アドバイザーからの推薦コメント

3歳から60歳までの人に読みきかせましたが、みんな「おう、おう、おう」と大喜び。全体の色調は暗いのに、なかがわちひろさんの名訳には、一緒に踊りたくなる明るさがあふれています。

7位 『水の絵本』

長田弘/作 荒井良二/絵 講談社
>

読書アドバイザーからの推薦コメント

絵本ですが、とてもすてきな「詩」の本です。是非、親子で「詩」と「絵」を楽しんでもらえたらと思います。

8位 『ぬかどこすけ!』

かとうまふみ/作 あかね書房

読書アドバイザーからの推薦コメント

愉快な絵本です。漬け物や発酵食品についてもわかります。力強いイラスト、渋い内容がおすすめポイント。ちょいと大人が補足してあげると理解が深まるので会話しながら楽しんでください。

8位 『タタタタ』

りとうようい/作・絵 鈴木出版

読書アドバイザーからの推薦コメント

最後まで読んで、あ~!と思わず声が出てしまった。小さい子から大きな子まで笑える絵本だと思います。

10位 『おしいれじいさん』

尾崎玄一郎、尾崎由紀奈/作 福音館書店

読書アドバイザーからの推薦コメント

怪談ものかと思わせる書名と絵。しかし、内容は冒険もの(?)であり。押し入れの中の暗闇が細密に描かれ、宝箱を見ているような印象を受けます。教え入れという家族に取って現在と過去をつなぐタイムカプセルの中身に、親子で話が弾むことでしょう。

11位 『ねこです。』

北村裕花/作 講談社

読書アドバイザーからの推薦コメント

絵を指差しながら読んでいける、そんな本です。「ほんとにネコ?」と親子で一緒に確かめる楽しい情景が浮かんできます。

12位 『お話しの種をまいて』

アニカ・アルダムイ・デニス/作 パオラ・エスコバル/絵 星野由美/訳 汐文社

読書アドバイザーからの推薦コメント

置かれた場所で、コツコツと続けることの大切さを読み取りました。蒔いた種はやがて、見事に花開きました。継続は力なりですね。

 

『この本読んで!』

年4回刊行されている、絵本選びのヒントがぎっしりつまった絵本と読み聞かせの情報誌です。現在発売中の春号では、「親子で読んでほしい絵本大賞」の詳しい情報の他、「新しい赤ちゃん絵本」を特集しています。メールマガジンも配信中。お申し込みはこちらから。

取材・構成/HugKum編集部

編集部おすすめ

関連記事