「子どもが生まれたばかりで、長時間の勤務が難しい」という人や、「要介護の家族がいてフルタイムで働けない」という人が利用できる制度が「短時間勤務制度」です。どのような人が対象になるのか、取得方法や期間など、詳しく説明していきます。
時短勤務とは
小さな子どものいる家庭や、介護が必要な家族のいる家庭では、仕事と育児・介護の両立が難しい場合があります。そこで活用したいのが「短時間勤務制度」です。
勤務時間をフルタイムで働くよりも短くすることで、仕事と育児・介護の両立を促す制度です。どのような制度なのか、まずは詳しい内容について見ていきましょう。
所定労働時間を原則6時間とする制度
「短時間勤務制度」いわゆる「時短勤務」とは、「育児・介護休業法」という法律によって定められている制度の一つです。
これにより、1日8時間といった所定労働時間を、原則6時間に短縮できます。
7.5~8時間勤務が当たり前のフルタイム社員の場合、勤務時間を6時間に減らすことで、育児や介護に専念する時間が確保できます。
会社によって、出勤時間を遅くしたり、退社時間を早めたりするだけでなく、フレックスタイム制を取り入れるなど、対応の仕方は様々です。
短時間勤務制度は、子育てや介護に追われて時間に余裕がない人にとって、大きな助けになる制度だといえるでしょう。
出典:短時間勤務制度(所定労働時間の短縮等の措置)について 厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課
法律改正により小規模事業所にも義務化
「短時間勤務制度」は、平成21年に改正された「育児・介護休業法」によって定められた制度です。
現在まで、複数回にわたり改正が行われており、平成24年7月1日からは従業員数が100人以下の小規模事業所でも義務化されました。
大企業でなくても短時間務制度を活用できるようになったことで、育児や介護と仕事の両立に悩む多くの人が、より効率的に働けるようになったのです。
正社員だけでなく、派遣社員やパートでも利用できる制度なので、希望する場合はまず会社に相談してみるとよいでしょう。
時短勤務の活用ケース
1日の勤務時間を短縮できる短時間勤務制度ですが、どのようなケースで利用できるのでしょうか。具体的なケースを紹介します。自分が利用できるのかどうか、確認してみましょう。
3歳までの子どもの育児
「短時間勤務制度」により、3歳に満たない子どもを養育する従業員は、希望すれば原則として1日5時間45分~6時間まで、勤務時間を短くすることが可能です。
生まれたばかりの新生児を育てる人や、まだ手のかかる幼い子どもを育てている場合、短時間勤務で働けるというのは大きなメリットです。
また、短時間勤務制度は「男性も申請が可能な制度」であることも覚えておきましょう。
出典:平成24年 7月1日 から 改正育児・介護休業法が 全面施行されま 全面施行されます!! 厚生労働省
3歳以上の未就学児童の育児
3歳から小学校へ就学するまでの子ども(未就学児童)がいる場合も、短時間勤務制度を活用できます。
始業時間や就業時間を調整しての勤務も可能になるため、幼稚園や保育園の送り迎えがある親にとっては大変役立つ制度といえるでしょう。
万が一子どもが病気になった場合、会社によっては「フレックスタイム制の導入」などもできるため、育児や生活をないがしろにせずに働けます。
ただし、「3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」への対応は、あくまで企業側の「努力義務」とされています。
自分の勤める会社の制度がどのようなものなのか、しっかりと確認しておきましょう。
出典:H29.01・育児・介護休業制度ガイドブック 厚生労働省
家族の介護のため
「短時間勤務制度」を利用できるのは、子どものいる家庭に限った話ではありません。両親や祖父母、兄弟などに「要介護状態」のいる場合にも制度を活用できます。
要介護状態とは、「負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」のことです。
介護による離職を防ぎ、介護する人が仕事と両立しやすくなるように定められた法律です。
出典:平成24年 7月1日 から 改正育児・介護休業法が 全面施行されま 全面施行されます!! 厚生労働省
労使協定により対象外となる労働者も
子育て中の人にとって、便利な「短時間勤務制度」ですが、適用対象外になるケースもあります。
「雇用期間が1年に満たない人」「1週間の勤務が2日以下の人」は、短時間勤務制度の利用はできません。
また、仕事の内容によって「時短勤務が困難な職に就いている場合」も対象外となるため注意しましょう。
短時間勤務制度が対象外の場合は、「フレックスタイム制度」や「時間差出勤」「保育施設の設置」など代替措置が検討されることになっています。
労使協定により対象外となる場合、自分の会社がどのような対応をしてくれるのか、一度確認してみるとよいでしょう。
出典:平成24年 7月1日 から 改正育児・介護休業法が 全面施行されま 全面施行されます!! 厚生労働省
期間中の給料はどうなる?
短時間勤務を利用した場合「給料」について気になるという人は多いでしょう。短時間勤務をすると、フルタイム勤務よりも給料が下がってしまうことがほとんどです。
給料がいくら減るのかは会社によって異なりますが、一般的にどのような影響があるのかを見てみましょう。
短縮分の給与支払義務はない
短時間勤務の場合、フルタイムと比べて仕事をする時間が減る分、給与も下がります。
会社側は、短縮した時間分の給与を支払う義務はなく、減給に関しては全て会社が決めることなのです。
そのため、短時間勤務で働いた場合、基本給はフルタイム時の約3/4に減ると考えられます。これは、8時間勤務から6時間勤務になることで、労働時間が3/4に減っているということから算出される目安です。
しかし、会社によっては「裁量労働制」を取り入れているところもあり、通常と同等の仕事量をこなすことで給与が減らないというケースもあります。
まずは会社の担当者に相談し、給与額にどの程度の変動があるのかを確認してみましょう。
残業代は法定労働時間を超えた場合のみ
時短勤務で働いている場合、残業をした分の給与はどうなるのでしょうか?
この場合、法定労働時間である1日あたり8時間以上、週あたり40時間を超えた部分のみ残業代が支払われることになります。
例えば、時短勤務で6時間働いている人が2時間残業をして8時間勤務になった場合、残業代は出ず、通常の給与が支払われる形です。
「短時間勤務制度」を利用している場合は、申請をすることで「残業を免除」することができます。
3歳までの子どもがいる場合には「所定外労働の制限」を、小学校就学前の子どもがいる場合には「時間外労働の制限」を申し出ておくことで、企業は所定労働時間を超えて労働させてはいけない決まりになっています。
「残業は避けたい」という場合には、「短時間勤務の申請」をする際に一緒に提出しておきましょう。
ボーナスは減額もしくは無し
ボーナスなどの賞与に関しても、会社側が決めることができます。
時短勤務の場合、ボーナスの査定期間に労働時間が減っていることで減額、もしくは無しというケースも少なくありません。
同時に、査定期間に育休を取っている場合なども、ボーナスが出ないことが多いでしょう。
時短勤務はいつまでするべき?
「短時間勤務制度」を利用するときに悩むのが「いつまで時短勤務を続けるべきなのか」という点です。制度を活用する前に、ある程度の目安を考えておくとよいでしょう。
法律で定められている期間や検討すべきポイントを紹介します。自分の会社の規則と合わせて参考にしてみましょう。
法律で定められているのは最短期間
改正された「育児・介護休業法」において「短時間勤務制度」は、「子どもが3歳になる日まで」が原則として定められていますが、それ以降は企業の努力義務にすぎません。
会社によっては、3歳以降も小学生にあがるまで短時間勤務を許可してくれるというケースや、小学校卒業まで可能というケースもあるため、「自分の会社が具体的にいつまで時短勤務が可能なのか」を、しっかり確認しておく必要があります。
法律で定められている期間はあくまでも最短期間です。3歳といえば反抗期の子どもも多く、まだまだ手がかかる年頃のため、できる限り時短勤務で早めに家に帰り、子どもの面倒を見たいという人もいるでしょう。
業務の都合もありますが、時短勤務をいつまで続けていくのか、しっかり会社側と話し合ってみることも大切です。
出典:H29.01・育児・介護休業制度ガイドブック 厚生労働省
子どもの成長や環境が検討ポイント
たとえ、法律で定められた期間が3歳までであっても、その後すぐにフルタイムに戻るのは厳しいという場合もあるでしょう。
短時間勤務をやめるタイミングは、「子どもの成長や育児環境」を見て検討するのがおすすめです。
子ども自身がある程度、自分のことをできるようになり、保育園でも楽しく過ごせるようであれば、安心してフルタイムに復帰できるかもしれません。
しかし、まだまだ子どもに手がかかるようであれば、短時間勤務の延長を検討する必要があるでしょう。
また、保育園の預かり時間の延長や、祖父母の協力など、周りのサポート体制も考慮して、フルタイムへの復帰時期を検討しましょう。
時短勤務の手続き方法とポイント
短時間勤務は、対象となる人であれば誰もが利用できる制度です。しかし、立場や仕事内容によっては気軽に活用しにくいという場合もあるでしょう。
時短勤務を行うにはどのような手続きが必要なのか、その方法とポイントを紹介します。制度を賢く活用して、肉体的・精神的に楽な働き方ができるようにしましょう。
手続きは基本的に事業主が定める
短時間勤務制度の手続きは、会社側が定めたとおりに手続きを行うことになっています。そのため、制度を利用したい人は、前もって会社に相談する必要があります。
育休から復帰する1カ月前までには手続きを終え、スムーズに業務に復帰できるようにしておきましょう。
なお、短時間勤務制度を理由にした「解雇」や「減給」などは法律で禁止されています。「時短勤務をしたら周りに何か言われるのでは……」と心配という人も、安心して制度を活用しましょう。
出典:短時間勤務制度(所定労働時間の短縮等の措置)について 厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課
出典:男女雇用機会均等法_育児・介護休業法のあらまし 厚生労働省
上司や人事としっかり話し合おう
職場復帰後に「短時間勤務制度」を活用するためには、上司や人事担当などと、事前にしっかり話し合っておくことが大切です。
始業時間や退勤時間、制度の延長はできるのかなど、会社が整えている仕組みを、産休前にあらかじめ聞いておくと安心です。
短時間勤務制度は、自分から申告して適用されるものです。
具体的な勤務時間や期間など、自分の要望と企業の体制がマッチするかどうか、復帰前にしっかりと話し合いを行いましょう。
制度を上手に活用しよう
「時短勤務」と聞くと「楽をしていると思われるのではないか」と不安になる人もいます。しかし、「短時間勤務制度」は育児や介護との両立を図るために、法律によって定められている制度です。
1日の勤務時間が短くなれば、育児・介護を行うための時間が確保でき、余裕が生まれます。短時間勤務制度を活用して、自分らしく両立を目指しましょう。
文・構成/HugKum編集部