お宮参りとは、赤ちゃん誕生後に初めて外で行われるお祝い事です。出産予定日が近づいてきたら、なるべく早くお宮参りの疑問を解消しておきましょう。「いつ頃どこへ行くの?」といった基本から服装や費用まで、悩みやすいポイントについて一挙に解説します。
お宮参りとは
「お宮参り」は、日本の伝統行事の一つです。まずは、何のために行うものなのか、正しい知識を持っておきましょう。
赤ちゃんの誕生を感謝し、健康を祈る行事
お宮参りとは、その土地に宿る神様に子どもが生まれたことを報告して感謝を伝え、健やかな成長を祈願するために行う儀式です。
土地に宿る神様は「産土神(うぶすながみ)」と呼ばれます。氏子となった子どもを生涯に渡って見守ってくれるありがたい神様なので、お宮参りの際は心を込めてお祈りしましょう。
古くは、穢れとされていた出産の忌明けの儀式でもあったようです。お宮参りと呼ばれるようになったのは鎌倉時代のことで、室町時代に入ると現在のようなご祈祷を受ける形を取るようになりました。
いつ・どこの神社に行くの?
次に、生後何カ月でお宮参りに行くのか、どこの神社に行けばよいのかについて確認しましょう。
男の子は生後31日、女の子は生後32日ごろ
古くからの習わしでは、「男の子は生後31日」「女の子は生後32日」がお宮参りの日とされています。生まれた日を1日目とするのが正しい数え方です。
つまり、1月1日に生まれた男の子であれば、カレンダー通りの1月31日がお宮参りの伝統的な日取りになります。
しかし、男の子は生後30~31日、女の子は31~32日とされているなど、地域によって日数が異なるのが実際です。気になる場合は、前もって住んでいる場所の正式なお宮参りについて確認しておくとよいでしょう。
体調や季節によって時期をずらしてもOK
お宮参りの時期はあくまで目安にすぎず、現在では「だいたい生後1カ月頃」に行うことがほとんどです。産後間もない母親と赤ちゃんの体調を最優先に、天候に恵まれた日に行うのがベストでしょう。
また、都合が悪ければ産後1カ月にこだわらなくても構いません。生後100日(およそ生後3カ月)を目安にお宮参りをする人も多くいます。
もっとも大切なことは、無事に出産できたことへの感謝と赤ちゃんの健康をお祈りすることです。あまり伝統的なしきたりにこだわらず、無理のない日程を組むようにしましょう。
参拝する神社に決まりはなし
お宮参りは、地元の神社へ参拝してもよいですし、足を伸ばして有名な神社へ参拝しても構いません。
もともとは氏子入りの儀式なので、住んでいる地域を治める氏神様のいる神社に参拝するのが習わしでした。しかし、現在では氏子入りの意味は薄れ、生後1カ月のお祝いとご祈祷がメインとなっています。
ただし、お祝い事ですから、祖父母の意見にも耳を傾けるとよいでしょう。赤ちゃんの誕生を喜ぶ全員が参加しやすい場所を選ぶのも一つの方法です。
当日の服装は和装?洋装?
もっとも準備に気を遣うのが「服装」ではないでしょうか。お祝い事なので、あまりにカジュアルすぎる服装だと周囲から浮いてしまいます。
「赤ちゃん」「両親」「祖父母」それぞれについて、現在のお宮参りで一般的とされる服装を確認しておきましょう。
赤ちゃんの服装
家から神社までの間、赤ちゃんは「白羽二重(しろはぶたえ)」の内着、または「ベビードレス」を着ていくのが一般的です。
参拝するときには、白羽二重の内着やベビードレスの上から「晴れ着」をかぶせ、赤ちゃんを抱っこしている人の首の後ろで晴れ着の紐を結びます。
男の子の場合は黒・紺・ロイヤルブルーなどに鷹や兜、龍といった勇壮な柄を選ぶ人が多いでしょう。女の子の場合はピンク・赤の綸子(りんず)・ちりめん地に、毬や鈴、和花柄が人気です。
また、最近ではベビードレスを略式の祝い着として使用することも増え、暑い時期には赤ちゃんの負担を減らすために和柄のカバーオールで代用する家族も見受けられます。
両親の服装
両親の服装は「赤ちゃんに合わせる」ことが大前提です。赤ちゃんが正式な祝い着を着ているのであれば、母親は色無地・訪問着、父親は黒や紺の紋付袴に羽織でバランスを取ります。
しかし最近では、男性の和装は珍しく目立ちやすいため、略礼服に白いワイシャツとネクタイで正装とすることが多いようです。また、ダークカラーのビジネススーツを着用しても問題ありません。
母親もスーツやフォーマルなワンピースにジャケットスタイルで参拝する人がたくさんいます。小さな赤ちゃんを連れての外出は大変なので、無理のない範囲できちんとした服装を心掛けましょう。
祖父母の服装
祖父母の服装は「両親の服装に合わせる」のが一般的です。母親が和装であれば、祖母も和装でそろえたほうがよいでしょう。同じく、父親がスーツなら祖父もスーツで合わせます。
もっとも重要なのは、「格を合わせること」です。母親がシンプルなスーツで祖母が格の高い和装だと、あまりバランスがよくありません。
当日に気恥ずかしい思いをさせないよう、赤ちゃんと両親の服装が決まったら前もって祖父母に伝えておくとよいでしょう。
参拝の方法とかかる費用
神社への参拝がお宮参りの本番です。神社では具体的にどのようなことをするのか、参拝の方法や流れについてチェックしておきましょう。また、気になる初穂料(はつほりょう)についても紹介します。
お参りのみか、ご祈祷を受けるかを決める
参拝は、「お参りのみ」と「ご祈祷あり」の二通りの方法があります。
ご祈祷をしてもらうのが正式なお宮参りの形式ですが、必ずしなければいけないわけではないので、家族で話し合って決めておくとよいでしょう。
お参りだけする場合は、特に予約は必要ないことがほとんどです。お正月の初詣と同じ手順でお賽銭を入れ、鈴を鳴らしたら、「二礼二拍手一礼」の作法にのっとりお祈りをします。
ご祈祷を受ける場合は、「お参りのみ」の場合と同様の作法でお祈りをした後、社務所に向かいましょう。ご祈祷する場合は「初穂料」と、納めるときに使う「熨斗袋(のしぶくろ)」が必要です。
初穂料の目安
初穂料とは神社へ納める謝礼金のことで、「祈祷料」とも呼ばれます。
初穂料は個人であれば「5000円」が一般的な金額とされていますが、金額を設定している神社もあるため、確認が必要です。ご祈祷のほかに縁起物をいただく場合は「10000円」が目安になります。
また、結婚式とは異なり、新札でなくても構いません。新札が用意できないときは、汚れやシワの少ないお札を納めるとよいでしょう。
お宮参りに関するさまざまな疑問
お宮参りの形式は時代とともに少しずつ変化してきました。そのため、自分が赤ちゃんだった頃の話を祖父母から聞いても、参考にならないといったことがあるでしょう。
そこで、最近のお宮参りに関するさまざまな疑問について回答していきます。
記念撮影はどうする?
記念撮影をする方法としては、主に次の三つが考えられます。
- 自分で撮影する
- フォトスタジオを利用する
- 出張サービスを利用する
最近ではスマホのカメラ機能を使いこなせば、プロ並みの写真を撮ることも可能です。趣味でよいカメラを持っているという人もいるでしょう。しかし、撮影者があまり写真に入れないというデメリットがあります。
写真スタジオを利用する最大のメリットは、プロが子どものかわいらしい表情を引き出してくれる点にあるでしょう。豊富な衣装や、写真を豪華なアルバムにしてもらえるのも魅力の一つです。
出張サービスを利用すれば、神社でお参りする家族全員を写真で残せます。衣装の準備は自分たちでする必要がありますが、費用を抑えてプロに撮ってもらいたいという場合に検討してみてはいかがでしょうか。
赤ちゃんは誰が抱っこする?
お宮参りで赤ちゃんを抱っこするのは「誰でもよい」というのが正解です。
「父方の祖母」が抱っこするものだと耳にしたことのある人も多いでしょう。これは、昔はお産が穢れのあるものだとされており、「忌明けまでは母親が抱いて参拝してはいけない」という考えが根付いていたためです。
現在では出産が穢れだと思っている人はほとんどいませんし、母親以外に抱かれることを嫌がる赤ちゃんもいるので、お宮参りで母親が赤ちゃんを抱っこしても問題ありません。もちろん、父親や祖父母に抱っこをお願いしてもよいでしょう。
あまりしきたりにとらわれず、順番に抱っこして参拝するのもよいのではないでしょうか。
参拝には予約が必要?
ご祈祷をお願いする場合は、基本的には予約が必要であると考えた方がよいでしょう。神社によって違いはありますが、「1週間前」までに電話で予約しておくことをおすすめします。
参拝を希望する日時に加えて「赤ちゃんの誕生日と名前」や「参拝に訪れる人数」を聞かれることもあるため、事前に誰が参加するか確認しておきましょう。
会食はした方がいいの?
必須ではありませんが、お宮参りの後に会食という流れが一般的です。
もともとお宮参りの日には親戚や知人を招いて赤ちゃんのお披露目をし、ごちそうを振舞うのが習わしでした。こうした慣習が形を変え、今ではみんなでお祝いをする場として会食の場がもうけられています。
しかし、小さな赤ちゃんと産後間もない母親にとっては、2~3時間の外出でも大きな負担になるものです。ご祈祷から写真撮影までこなすとけっこうな時間が掛かるため、赤ちゃんや母親の体調優先で予定を組みましょう。
お店を選ぶ際には、個室のあるレストランがおすすめです。赤ちゃんを平らな所に寝かせてあげられるため、大人もゆっくり食事を取ることができます。
しっかり準備をして思い出に残る1日に
お宮参りの時期は生後1カ月頃が一般的ですが、特に決まりはないため体調や季節を考慮して日程を決めるとよいでしょう。同様に、参拝する神社も好きな場所を選んで構いません。
服装についてはやや注意が必要です。基本は赤ちゃんの祝い着に合わせますが、両親と祖父母の格も合わせましょう。主役である赤ちゃんより目立ってしまわないよう、前もって話し合いをしておくとよいですね。
産後すぐは赤ちゃんのお世話があり、体調も万全でないことから思ったように動けません。できるだけ早めに準備に取りかかり、記念に残る素晴らしい思い出作りをしましょう。
文・構成/HugKum編集部