HugKumでは、新型コロナウイルスを機に、子どもにどのくらいストレスがかかっているのか、家庭学習はどう進めたら良いのか、筑波大学医学医療系教授で教育学博士・臨床心理士・子育てに悩む保護者からの相談に応じる子育て支援のスペシャリストである徳田克己先生を取材しました。
【前編】では、新型コロナウイルスを機に子どもにかかるストレスやそれに対する心のケアを中心に伺いました。
今回は、緊急事態宣言が出た今の親御さんの悩みや不安で多かった「家庭学習」を中心に伺いました。私はコロナヒステリー?と思う前に、具体的なアドバイスを頂きましたので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
外出自粛のさなか、学童に行かせている我が子にかける言葉は
小学生のお子さんがいるお母さんからの質問です。
Q1.「新型コロナウイルスの感染防止で、外出自粛要請が出ていますが、両親ともに仕事があるため、子どもを学童へ行かせています。迎えに行くと、家にいさせてあげられないことから、つい『ごめんね』といってしまうのですが、その言葉かけもどうなのか……気になります」
徳田先生:なるほど。このお母さんは新型コロナウイルスとは関係なく、普段からお子さんに「ごめんね」と謝っているのではないでしょうか。例えば、子どもが風邪をひいても「ごめんね、気を付けてあげられなくて」など。
実は、先に謝ることと言うのは、誰からも責められないからなのです。しかし、「ごめんね」と言われたことで子どもは癒されません。さらに、このように、育てられた子どもは同じように友達などに先に「ごめんね」というようになります。これは、人間関係の方法として、先に謝ることで大丈夫になると思ってしまっているから。これでは、自分に自信のない子どもに育ってしまいます。
では、どのような声かけが良いのでしょうか。それは、前向きな言葉をかけることが良いでしょう。例えば、「今日はどうだった?」などはいかがでしょうか。子どもが「ちゃんと手を洗ったよ!」と言えば「じゃあ、大丈夫だね!」と前向きな会話が続きます。
これからは、子どもに「ごめんね」は禁句にしてくださいね。
夫婦間で、感染予防に関する危機感レベルが違うときは
子どもへの悩みではなく、夫婦の危機感に対するズレが生じているという、高校生のお子さんがいる、お母さんからの質問です。
Q2.「我が家はパパがすごく過敏で。スーパーで買ってきたものは、全部消毒するまで家族に触らせませんし、外から帰宅した人は、『バイキン扱い』。子どもにどんな声かけをすると良いのでしょうか?」
徳田先生:もしかしたら、パパは理科系でしょうかね。パパが先走っているように感じますが、間違いではありませんし、より新型コロナウイルスにかからないですよね。でも、ママはそこまですることはないと感じている様子。
もし、パパのやり方にママが「キリがないわよ!」などと言い返したとしたら夫婦ゲンカに発展してしまい、子どもへも悪影響を及ぼします。この場合は、ママが諦めて付き合うことがベストでしょう。子どもには「より感染しないものね」と言って。パパは止めさせることはできないので、事前に夫婦でどこまで行うべきかルール化しておくと良いでしょう。
例えば、買ってきたモノはどうするか、帰宅したときはどうするかなど、ルールを決めちゃうと、ママも気にならなくなると思いますよ。
交換条件を出さないと、家庭学習をしない子は
小学生のお子さんがいるお母さんからの質問です。
Q3.「休校中は『勉強を〇分したら、TVを〇時間見てOK』と決めていたのに、子どもは課題の家庭学習をやりたがず、イライラ。そもそも、交換条件を出すのはいいのでしょうか?」
徳田先生:交換条件での育児は、交換条件を出さないと何もしない子どもになってしまいます。そこで、オススメする方法は、「計画表(スケジュール表)」を子どもと一緒に作ることです。
子どもは自分で決めたことだからと守ります。また、“ここまでやったら〇〇ができる”など、計画表は全体が分かるので、子どもは親に何かをねだらなくてもスケジュール通りやったらできることが分かります。
では、 一緒に計画表を作った後、親はどうしたらよいのでしょうか。
ありがちなNGケースは、その日一日のスケジュールが終わるまで褒めない、というケースです。1日=全部を褒めるのではなく、一部分すなわち1つできたら褒めるというスモールステップを心かけてくださいね。
在宅ワークをしているので、子どもを静かにさせる方法は
幼児や小学生のお子さんがいるお母さんからの質問です。
Q4.「在宅ワークになり、家で仕事をしています。子どもが騒ぐので、『大きな声を出さないで!』『うるさい!』などつい言ってしまいます。これは子どもの権利を奪っているのでは?と気になります」
徳田先生:怒鳴られる子どもの身になってほしいですね。テレワークに切り替わった親御さんも1日中仕事をしているわけではないでしょうから、先に述べたように、親子で計画表を立てるときに、「ここまでやったら、一緒に遊ぼう!」と入れておくと良いでしょう。子どもは、「いったい、いつ遊んでくれるの?」と思うはずですから。
特に、普段一緒に遊ぶ時間の少ない親御さんの場合、新型コロナウイルスにより仕事がピンチの状況かもしれませんが、子どもを理解する最大のチャンスと思って過ごしてほしいです。
子どもの家庭学習や外遊びに親が付き合えないときは
乳幼児と小学生のお子さんがいるお母さんからの質問です。
Q5.「在宅ワークだから、勉強を見てあげたり、遊びに連れて行ってあげたりすることができません。子どもの体力や学力が低下してしまうのでは?と心配です」
徳田先生:在宅ワークだからこそ、勉強を見てあげられるのでは?出勤していて、見れないと言うのなら分かりますが……。子どもと遊ぶことでサボっていると罪悪感に駆られてしまうのでしょうか。先に述べたように、計画表を立てれば、子どもも勉強を自主的にするでしょうし、親子で一緒に過ごす時間も決めることができるはずですよ。
午前中は勉強と決めたのに、朝から「工作をしたい」と言われたら
小学生のお子さんが2人いる、お母さんからの質問です。
Q6.「休校中は、1日のスケジュールを午前は勉強、午後は自由時間と決めていたのに、朝から『工作やりたい!』といった時は柔軟に対応した方がいいのでしょうか?そもそも、親がプロデュースする、で良いのでしょうか?」
徳田先生:工作=勉強と私は思うのですが、まず、午前中は勉強と決めたのは母親ですよね。子どもが主体的に決めていたとしたら、おそらく守ろうとするはずなので……。自分で決められる子は、自己肯定感が育っていきます。難関の学校に合格する子どもは、親の言いなりではなく、自己決定ができる子ばかりです。
では、親子でどのようにスケジュールを立てたら良いのでしょうか。計画表は、具体的に決めることが大事です。例えば、午前中は勉強という決め方ではなく、月曜日は漢字ドリル2ページ、火曜日は工作など、その時間に何をするのか明確にスケジュールを立てることで子どもは勉強に取りかかりやすくなります。
いかがでしたか。徳田先生は「親は、子どものスモールステップを褒めて」と強調されていました。また、「今こそ、習慣作りのチャンス」とも。家で過ごす時間が長い今だからこそ、家庭学習の習慣作りを作るために、親子でスケジュールを立てるところからまず始めてみませんか。
文・構成/HugKum編集部