HugKumでは、新型コロナウイルスを機に、子どもにどのくらいストレスがかかっているのか、筑波大学医学医療系教授で教育学博士・臨床心理士・子育て支援学専門の徳田克己先生に取材しました。そこで、緊急事態宣言が出た今の親御さんの悩みや不安を相談。子育て支援のスペシャリストである徳田先生が分かりやすくアドバイスをしてくれましたので、ぜひ参考にしてみてください。
子どもが「コロナごっこ」をするのは、止めさせるべきか
小学生のお子さんがいる、お母さんからの相談です。
Q.1「コロナだー」とか「コロナうつしちゃうぞ」とふざけ合って、子どもが「コロナごっこ」をします。親として止めさせるべきでしょうか?
徳田先生:私は、東日本大震災のときも支援をしましたが、避難所にいる子どもたちは「津波ごっこ」をしていました。子どもは戦地にいても「戦争ごっこ」をしますし、子どもは身近に起こったことを遊びにするのが当たり前のことなのです。だから、「コロナごっこ」を無理にやめさせるのはよくありません。
東日本大震災のとき子どもが津波ごっこをしたら、私は親御さんにこうアドバイスをしました。「もし、子どもたちが津波ごっこで『みんな津波に流れて死んでしまいました』などと言ったとしたら、『救助が来ました!みんな救助されて無事でした』と大人も一緒に遊び、付け加えてください」と。
東日本大震災と今の新型コロナウイルスの状況は同じではありませんが、「コロナごっこ」をしたときも、「特効薬ができました!」「いいワクチンができ、その病気にかかりにくくなりました」などワクチンの話を教えるなどしながら、大人も一緒に遊び、遊びの方向性を変えると良いでしょう。
新型コロナウイルスを機に、子どもにかかる3つのストレスとは
幼児と小学生のお子さんがいる、お母さんからの質問です。
Q2. 新型コロナウイルスを機に、子どもにはどのくらいストレスがかかっているのでしょうか?また、今だからこそ、子どもの心のケアはどうしたらよいのでしょうか?
徳田先生:東日本大震災のときは、家が津波で流されてしまうような映像を見ることで子どもたちはストレスを感じることがありました。新型コロナウイルスでは、このような映像からのストレスはほぼないのですが、新型コロナウイルスは、大きく分けて子どもへ3つのストレスがかかっていると考えます。
【1】体を思いっきり動かせないストレス
東日本大震災のとき、福島の子は外に出られなくて家の中で煮詰まり、叫んでしまうほどストレスを抱えていました。その際、ショッピングセンターの中にある遊戯施設で全身を使って遊ばせたら、すっきりした顔になったという事例がいくつもありました。
このように、新型コロナウイルスでも、室内遊技場で思いっきり遊ばせてあげたいのですが、新型コロナウイルスの場合は感染防止のため、そういった大規模な室内遊戯施設は閉鎖されていますよね。これでは子どもは、ストレスがたまってしまいます。
【2】コミュニケーション不足によるストレス
3つのストレスのうち、もっとも大きいストレスは「コミュニケーション不足」と私は考えています。なぜなら、新型コロナウイルスの感染防止のため、今、外出自粛により友達と遊ぶ機会がありません。そうなると、唯一コミュニケーションが取れるのは親と兄弟姉妹など同居している家族のみとなります。
にもかかわらず、コミュニケーションが取れる親から叱られたり、小言を言われたりするケースが多く、コミュニケーションの質はとても低くなっているのです。
では、親子のコミュニケーションの質を上げるにはどうしたら良いのでしょうか。それは、2つの方法があります。
コミュニケーションの質を上げる方法は2通り!
【Aの方法】
ストーリーのある、テレビやアニメなどを親子で一緒に見て、その後にその内容について話す方法。例:ドラえもんを見て「しずかちゃんはどうして泣いたんだろうね」などと話し合います。
【Bの方法】
質問タイムを毎日1日2回(10分~15分間)設ける方法。この方法は、ある家庭で実際に行われたのですが、絶対叱らないことをルールとします。
子どもが親に質問をして良い時間を作るのですが、質問内容はコロナのことでも、違うことでも自由。すると、子どもは、1日家で過ごしたとしても、「今日はパパにコレを聞いてみよう」とか、考えながら過ごせます。もし分からないことを聞かれても、「インターネットで調べてみるか?」など、一緒に答えを考えると良いでしょう。
※注意:Bの方法で気を付けなければならないことは、家族での約束はなぁなぁになりがちなので、質問タイムは朝食後の8時からと、夕食後の19時からなどとしっかり時間を決めておくことです。
家族でしかコミュニケーションを取れない今は、無理にコミュニケーションの形を変えてみることが大切です。
【3】親の2つのセリフからのストレス
3番目のストレスは、新型コロナウイルスによって親がよく口にする次の2つのセリフからが原因と考えています。「コロナにかからないように手を洗いなさい」、「遅れないように、勉強しなさい」とばかり言っていませんか。こればかりでは、子どもは耐えられません。
私は最近、公園を回っているのですが、父親と公園に遊びに来ている子どもをよく見かけます。こういった家族単位での公園遊びはとても良いことだと思うのですが、気になるのは、母親が子どもを公園に連れて来ているときです。というのも、母親はどうしても母親同士で集まりがちなんですよね。すると、今の時期のおしゃべりの話題はだいたい3つ。「勉強が遅れそうで心配、どうしている?」「うちの子、全然勉強しないのよ」「〇〇で、コロナに感染した人が出たみたいよ」。こういう話題をされている母親は、家でもそういう会話をしている可能性が高いのです。
子どもに、「遅れないように、ちゃんと勉強しなさい」「ちゃんと手を洗わないと、コロナになって死んじゃうわよ」など叱っていませんか?「死」の意味は、少なくとも小学3年生まで分からないものです。親は「死んだら、パパママに会えなくなるのよ」「死んだら、好きなお菓子が食べられなくなるのよ」などと、子どもに言えば言うほど、子どもは死に対して怯えてしまいます。
このように、死に怯えさせて、子どもに言うことをきかせることで、子どもは耐えがたいストレスを感じていきます。
また、「映像を見せる」、「ゲームをさせる」、「お菓子を食べさせる」この3つの方法で子どもを静かにさせようとする親も多いですよね。子どもは、始めはどれか一つの方法で静かにしていると思いますが、やがて飽和状態に。すると、親はお菓子を食べさせながらゲームをさせてしまいます。映像やゲームは、将来「依存症」になりやすく長時間やらせるのはよくありません。
重複しますが、たとえ仕事が忙しくても、コミュニケーションの質を上げる2通りのどちらかの方法、例えば一緒にストーリーのあるテレビを見て話し合うなど、コミュニケーションの質を上げるよう親は心がけ、子どもの心のケアをしてあげてくださいね。
子ども同士で公園に遊びに行かせるのは「あり」なのか
小学生と幼児のお子さんがいる、お母さんからの質問です。
Q3.緊急事態宣言が出ている今でも、子どもたちもふつうに公園で遊んでいます。小学生同士で、公園に遊びに行かせるのはありでしょうか?
徳田先生:これは、「なし」です! それをやってしまったら、感染のリスクが高まり非難されてしまいます。先に述べた通り、親子など家族単位での公園遊びにしてくださいね。
いかがでしたか。徳田先生は、「親の不安は、子どもへ伝わります」とおっしゃっていました。大人も先が見えない今、とても不安になっていると思いますが、意識して親子のコミュニケーションの質を上げていく努力が必要なのでしょう。
文・構成/HugKum編集部