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てんとう虫の餌や飼い方はどうすればいいの?
てんとう虫、特に小さな小さな背中に7つの模様があるナナホシテントウは、子どもたちに人気のある昆虫です。また、てんとう虫は幸せを運ぶとか、体に止まると運が良くなるなどとも言われいるようです。てんとう虫を「幸運を運ぶ虫」とするのは、日本だけではなく世界中で共通のようです、面白いですね。
今回は、てんとう虫の成長過程やふさわしい餌、飼い方などをご紹介します。
てんとう虫とは
ここからは、てんとう虫とはどのような昆虫なのかを見ていきましょう。
分類
てんとう虫は、生物学的にはコウチュウ(甲虫)目テントウムシ科に分類される昆虫です。コウチュウ目とは、わかりやすく言うと、堅い羽(まえばね)が背中を覆い、飛ぶときはその下にあるうすい羽(うしろばね)を使う昆虫のこと。カブトムシ、クワガタムシなどが甲虫の仲間で、地球上の生物の中で動物も含めて、一番種類が多い目(生物学上の分類のひとつ)です。
名前の由来
てんとう虫は、漢字で書くと「天道虫」。草や枝に止まると上の方に登っていく習性があり、先まで行くと空中に飛び立ちます。その様子がまるで太陽に向かって飛んでいくように見えることから「お天道様(太陽)に向かって飛んで行く虫」、すなわち「てんとう虫」と名づけられたと言われています。
太陽に向かって飛んでいく姿から、てんとう虫は日本だけでなくアメリカやヨーロッパでも縁起の良い、幸運を運ぶ虫とされています。
種類
鮮やかな色をしているてんとう虫は、種類が多いことが特徴で、食べものの違いから、肉食・草食・菌食にわけられます。
肉食と菌食のてんとう虫は、植物につくアブラムシや、うどんこ病の原因となる病原菌などを食べることから人間の役に立つ「益虫(えきちゅう)」になっています。てんとう虫を農薬の代わりに使う農家もあるほどです。
一方、草食のてんとう虫はナスやジャガイモの葉を食べてしまうことから「害虫」とされています。同じテントウ虫でも益虫と害虫に分かれるなんて、不思議ですね。
ペットとして飼育するならナナホシテントウムシ
ペットとして、あるいは観察のために飼育するなら、ナナホシテントウムシがおすすめです。赤い小さな体に7つの黒い模様があるナナホシテントウムシは、てんとう虫の種類の中で一番よく知られている代表的な種類で、20日ほどで卵から成虫までに育ちます。そのため、春から秋にかけてのワンシーズンで、2〜3回くらい、卵から成虫までのサイクルを見ることができます。
てんとう虫の成長過程
てんとう虫は、卵→幼虫→蛹(さなぎ)→成虫と成長過程で姿を変えていく「完全変態」をする昆虫です。卵から成虫になったてんとう虫は2カ月程度生き続けます。てんとう虫の成長過程を見ていきましょう。
卵
ナナホシテントウムシの場合、メスは一度に30個くらいの卵を生みます。卵は濃いオレンジ色で、2日ほどで幼虫になります。
幼虫
幼虫の期間は約2週間、その間に3回脱皮して、一令幼虫、二令幼虫、三令幼虫、四令幼虫(終令幼虫)と成長していきます。食べもの(エサ)が足りないと共食いすることもあります。たくさん食べていた四令幼虫が突然食べるのをやめたら、それは蛹(さなぎ)になる準備です。
蛹(さなぎ)
幼虫は安全な場所で頭を下にし、お腹の先で草や木にくっついて蛹(さなぎ)になります。蛹の期間は約1週間、色が徐々に濃くなっていきます。
成虫
蛹から成虫になることを「羽化」と言います。羽化したばかりのてんとう虫は、まだ黒い模様(星)も現れておらず、飛ぶためのうすい羽(うしろばね)が堅い羽(まえばね)からはみ出しています。羽化したばかりで、まだ濡れているうしろばねを乾かしているのです。うしろばねが乾くと、まえばねの下にしまわれ、背中の模様(星)も少しずつはっきりしてきます。
メスの成虫は10日〜2週間くらいで卵を生み始めます。アブラムシをたくさん食べ、1回につき30個くらい、およそ1カ月程度の期間中に数百個の卵を生みます。
成虫の寿命は約2カ月ですが、秋に産まれたてんとう虫は越冬します。また真夏に気温が上がると、エサとなるアブラムシが少なくなるので、涼しい場所で眠ってしまいます。これを「夏眠」と言います。
てんとう虫におすすめの餌は何?
てんとう虫は、肉食・草食・菌食に分かれます。ペットとしておすすめのナナホシテントウムシは肉食です。餌には何がふさわしいでしょうか。
アブラムシ
ナナホシテントウムシの好物はアブラムシです。幼虫も成虫もアブラムシが大好きで、成虫だと1日に100匹も食べると言われています。アブラムシは、植物の新芽やつぼみにつく、小さな虫。植物の汁を吸って生きています。アリマキとも呼ばれます。
ナナホシテントウムシに卵を産ませたいときは、じつはこのアブラムシが欠かせません。他の餌でも飼育することができますが、植物の汁を吸い、ナナホシテントウムシにとって栄養がいっぱいのアブラムシを食べないと、卵を生むことが難しいとされています。
アブラムシ以外でおすすめの餌
アブラムシを集めるには、アブラムシがついた植物を探さなければなりません。それが難しい場合は、次のような餌でもてんとう虫を育てることができます。
りんご
りんごを薄く切って与えてあげるのもいいでしょう。
砂糖水、ハチミツ
砂糖水やハチミツをキッチンペーパーなどに湿らせて与えます。そのまま与えると、てんとう虫が溺れる可能性もあるため、キッチンペーパーなどに吸わせてからあげてください。
昆虫ゼリー
カブトムシやクワガタムシの飼育用に販売されているものです。昆虫のための専用餌なので、栄養のバランスもばっちりです。
てんとう虫の飼育に必要な餌以外のもの
小さなてんとう虫は飼育に場所を取らず、比較的小さなケースで飼育することができます。ここからは、てんとう虫の飼育に必要な餌以外の物をご紹介します。
飼育ケース
てんとう虫は上の方に登っていく習性があるため、ケースの上部に集まってしまいます。そのため、隙間があると逃げてしまいますのでフタが必要になるでしょう。小さなプラスチック製のケースに、ラップでフタをするだけでもOKです。餌をあげるときにラップを開けるので、空気が足りなくなることはないでしょう。
筆
小さくて丸いてんとう虫を、手やピンセットで捕まえるのは大変。てんとう虫を飼育するときに大活躍するのが「筆」です。てんとう虫は上に登る習性があるため、筆を近づけると筆に登ってきます。移動させるときにはその習性を利用すれば簡単です。
餌のアブラムシを与えるときも、植物についたアブラムシを筆で払い落とすことができます。
てんとう虫の飼い方・注意点
小さなてんとう虫は、飼育ケースから逃げないようにすることが大切です。ここでは、その他の注意点をご紹介します。
ニセアカシアについたアブラムシに注意
ニセアカシアは道路や公園などに植えられているマメ科の木。5〜6月頃に白や薄いピンク色の小さな花がたくさん咲きます。花は甘い香りで、ハチミツが取れるほど。
ですが、このニセアカシアの葉や樹木には毒が含まれています。ニセアカシアについていたアブラムシは餌として与えないようにしてください。
ひっくり返っても戻れる場所
ガラスケースなどで飼育した場合、テントウ虫はガラスの壁を登ることもできますが、底でひっくりかえってしまった場合、元に戻れなくなることがあります。植物の葉などを入れて、てんとう虫がひっくり返っても元に戻れるような場所を作ってあげてください。
幼虫が大量発生したら?
てんとう虫は、餌が足りなくなると共食いをすることがあります。幼虫がたくさん生まれたときは、筆に捕まらせて移動し、10匹ずつくらいにわけてから飼育してください。
てんとう虫飼育の体験談
HugKumでは、12歳までのお子さんがいるママやパパに、ご家庭でてんとう虫の飼育経験があるかアンケート調査しました。体験談をご紹介します。
餌に気をつけて「幸運を呼ぶ虫」てんとう虫を身近に
小さなてんとう虫は、飼育するのに大きなケースは不要です。餌にさえ気をつければ、完全変態する様子を子どもと一緒に観察することもできます。太陽に向かって飛び立つような姿から「てんとう虫」と名づけられ、日本だけでなく世界各地で「幸運を呼ぶ虫」と呼ばれるてんとう虫。身近な存在にすると、いいことが起きるかもしれません。
文・構成/HugKum編集部