勉強にしてもスポーツにしても、何にでも必要になってくる集中力。この集中力について、わが子は駄目だと感じているパパ・ママは少なくないと思います。そこで今回は小学生の集中力について、まとめてみました。
目次
集中力とは?子どもの集中力を高めるために
そもそもこの集中力、わが子は問題だと感じているパパ・ママが、どの程度居るのでしょうか。過去にHugKumが独自に行ったアンケート調査(7歳〜12歳の子どもを持つ保護者122人)によれば、
・子どもに集中力がない(続かない)と思う・・・43.8%
・子どもに集中力がない(続かない)と時々思う・・・43.8%
という割合で、わが子の集中力についてパパ・ママが問題意識を持っていると分かります。
文部科学省のホームページにも、学びに向かうためには、意欲、持続力などに加えて、集中力が必要だと書かれています。学びたいと思い、意欲をもって学び始めても、集中力、持続力がなければ、学びに向かう姿勢はくじけてしまいます。それだけ、集中力は子どもの学びにおいて、重要な要素なのですね。
子どもの集中力が続く時間はどれくらいか
ただ、集中力が大事だからと言って、「集中しろ」とハッパをかけるだけでは駄目だと、多くのパパ・ママがすでに感じていると思います。
パパ・ママ自身も生活や仕事で、自分の集中力に限界を感じる瞬間もあるはず。日によって、条件によって、環境によって、集中力が続かないケースもあるはずです。
まずはわが子の集中力を高めさせるために、集中力に対する基礎的な理解、例えば集中力はどの程度続くのかといった知識を深める必要があります。
子どもの集中力は年齢で異なる
集中力の持続時間は、年齢によって異なります。そもそも小学校、中学校、高校、大学と、1時限の時間数は異なっていますよね。
例えば小学校は「学校教育法施行規則第51条」の別表第1に、1時限=45分と書かれています。授業時間が40分の私立の小学校など、細かな違いはあるようですが、例えば大学のように1時限を90分にするような学校は存在しないはずです。
その理由は、年齢に応じて子どもの集中力が異なるから。
例えば朝に放送されるNHK(Eテレ)の幼児番組は、5分や10分など細かい刻みで展開していきます。
もちろん、食事、登園の準備、出発など、慌ただしい朝に長時間の番組が流れれば、子どもも切り替えができません。その切り替えのタイミングを提供する意味でも、番組が小刻みに変わっていくのだと思われます。しかし一方で、集中力の問題も間違いなくありますよね。
HugKumの過去記事においても、年齢別で子どもたちの集中できる時間は異なるとされていました。具体的には、
・未就学児・・・10分程度
・小学校低学年・・・15分程度
・中学生・・・30分程度
との話。小学校の高学年は20分前後でしょうか。子どもの集中力は大人と比べて短いと理解し、本当にわが子は集中力がないのか、長い集中を求めすぎているのではないか、しっかり見てあげたいものです。
子どもの集中力がない・続かない原因
子どもの集中力は短いと分かりました。しかし、その大前提を踏まえた上でも、わが子の集中力がない・続かないと思ったら、どうすればいいのでしょうか。
夜型の生活環境、睡眠不足
子どもの集中力をなくす代表的な原因として、睡眠不足、睡眠の乱れが知られています。パパ・ママであっても、睡眠不足が続けば集中力は続きませんよね? 子どもの集中力が気になる場合は、睡眠が十分か、考え直したいです。
「早寝早起き朝ごはん」という国民運動が平成18年からスタートしました。その理由は睡眠不足が子どもの心身、集中力に悪影響を与えると分かっているからです。
文部科学省も、睡眠を含め、基本的な生活習慣が身に付いていない育ちの現状が、学校において学習に集中できない、教員の話が聞けない子どもを生んでいるのではないかと指摘しています。
基本的な生活習慣や態度が身に付いてない
基本的な生活習慣で言えば、食事も一緒です。例えば夜型の生活で、朝起きる時間が遅くなれば、学校へ行く時間までに余裕がありません。朝ご飯も不十分になり、空腹の状態で登校するといった悪循環が生まれます。
おなかが空いていれば、集中力は高まりません。先ほども言ったように、自ら学びに向かう姿勢は、生まれませんよね。集中力はもちろん食事だけでは説明できませんが、食事が不足すれば集中力に影響が出るとは、多くの研究でも分かっています。
最低限、早寝早起きと3食をきちんと食べさせる、それこそ「早寝早起き朝ごはん」の運動を、もう一度家庭内で見直してみるといいはずです。
また、基本的な生活習慣で言えば、整理整頓と集中力の関係も、幾つかの研究で明らかにされています。デスクが散らかっていると作業スピードや意思決定の速度が落ちるといった研究があるように、部屋の中、子ども部屋、勉強机の上が散らかっていれば、学習に向かう気持ちにも影響が出てくるはず。
規則正しい生活に加えて、家の中をすっきりと片付ける習慣も身に付けさせたいですね。
子ども同士が集団で遊ぶ機会が減っている
睡眠や食事だけでなく、子ども同士の体験の少なさも、集中力に影響していると指摘があります。集中力とは一見すると何も関係のないように思えますが、例えば厚生労働省のホームページ上に公開されている「保育所保育指針解説」には、
<途中であきらめず、友達と一緒に達成感や充実感を味わうことを通して、子どもは物事を最後までやり遂げようとする集中力や持続力を培っていきます。>(保育所保育指針解説より引用)
と書かれています。
<子どもが安心感、安定感を得て、身近な環境に自ら働きかけ、好きな遊びに熱中したり、やりたいことを繰り返し行うことは、主体的に生きていく基盤となります。>(保育所保育指針解説より引用)
とも書かれています。安心した環境で子ども同士が遊びに熱中する、遊びを繰り返す中で、やり遂げよう、やり通そうという集中力や持続力が養われるのですね。
子どもの集中力を高めるには
睡眠、食事、片付け、子ども同士で遊ぶといった点が重要だと分かってきました。では、こうした点にどうやって取り組めばいいのでしょうか?
睡眠サイクルの改善
厚生労働省が健康についてまとめたウェブサイトに『e-ヘルスネット』があります。その中には、快眠のためのポイントをまとめたページがあります。
快眠とは、部屋の湿度、温度、光、音といった寝室環境と、布団の温度(33℃前後)と湿度(50%前後)、柔らかさ、軽さ、耐久性といった寝床内環境の両方に、とても大きな影響を受けると言います。詳しくは後述しますが、この点を意識して、子どもの睡眠サイクルを改善したいです。
生活習慣の改善
生活習慣も、快適な睡眠に直結します。厚生労働省によれば、
・毎日規則正しい時間に布団に入る
・規則正しい時間に起きて、朝の日を浴びる
・朝ご飯を食べる
・日中、自然光の中で活動する
・昼寝は短時間
・運動をする
・寝る2~3時間前にお風呂に入る
・夜に明るい光を浴びない
・就寝前に刺激のある飲食物を口にしない
などの習慣が、快眠をもたらしてくれるとの話です。
決まった時間に寝起きして、朝ご飯を食べ、日中は自然光の中で遊ぶ、夜はきちんとお風呂に入って、その後は明るい光を避け、寝る前の間食を避けるように工夫してください。
子ども同士の遊び時間を増やす
子ども同士の遊びは、集団の中で集中力を養う訓練にもなります。成功体験や達成感を味わう機会にもなるといいます。しかし、文部科学省によれば、
<少子化,核家族化が進行し,子ども同士が集団で遊びに熱中し,時には葛藤しながら,互いに影響しあって活動する機会が減少するなど,様々な体験の機会が失われている。>(文部科学省のホームページより引用)
とあります。さらに、
<都市化や情報化の進展によって,子どもの生活空間の中に自然や広場などといった遊び場が少なくなる一方で,テレビゲームやインターネット等の室内の遊びが増えるなど,偏った体験を余儀なくされている。>(文部科学省のホームページより引用)
といった問題も指摘されています。
少子化、核家族化が避けられず、都市化や情報化も避けられないのであれば、親、きょうだい、親せき、子どもの同級生の保護者と連絡を取り合い、テレビゲームやインターネットなど室内での遊びに偏らないよう留意したいものです。
集中力の向上におすすめの方法
睡眠、食事、片付け、子ども同士の遊びが大事で、そのための改善点も確認してきました。しかし、睡眠サイクルを変える、親せきや親同士で連携するなどの試みは、時間も労力もかかります。もっと気軽にチャレンジできる改善点はないのでしょうか?
電球を交換する
快眠のための工夫として今すぐ実践できる方法は、電球の交換が挙げられます。電球(LED)には、
・昼光色(青っぽい寒色系の色)
・昼白色(白っぽいナチュラルな色)
・電球色(黄色っぽい暖色)
があります。青っぽい寒色の昼光色は、脳を冷静にする、集中力を高めると言われていますので、子ども部屋の照明に使います。
一方で、この手の光は勉強に向いていても(頭をさえさせる効果はあっても)、眠る前には浴びたくありません。リビングやダイニング、寝室など、眠る前に過ごす空間の照明は、黄色っぽい暖色の電球色に切り替えてください。
また、一室を1つの照明で照らすのではなく、テーブルライト、フロアライトなど、部屋を多灯で照らす工夫も効果的です。光の数を細かく調整しながら、眠る時間が迫ってくるとともに、ちょっとずつ電気を消せるようになります。
持ち物の「おうち」を考え直す
片付けもすぐに取り組めるポイントです。ただ、子どもに片付けをさせたいと思ったら、おもちゃや子どもの道具に「おうち」という概念を取り入れてみましょう。
水谷妙子監修『すみっこぐらしのおかたづけ』(小学館)によれば、片付けとは
- わける(整理する)
- おうちを決める(収納する)
- 戻す(片付ける)
- 奇麗にする(掃除する)
といった4つに分けて考えられるそう。
片付けというと、例えばおもちゃを元の場所に戻す行為を連想しますが、その「元の場所」がしっかり定まっていない、あるいは子どもの手の届きにくい場所にあると、上手に片付けができません。
まずは子どもの持ち物を整理して、その持ち物にふさわしい、子どもでも十分に戻せる(片付けられる)場所に、定位置(おうち)を設けてみてはどうでしょうか。
それでも「わが子は片付けが続かない」と嘆くパパ・ママには、HugKumで過去に取材したライフオーガナイザーの鈴木尚子さんが、「続かないは当たり前」というメッセージを送っています。
そもそも片付けとは、1回で成功するわけがなく、試してみて初めて問題点や失敗の原因が見えてくるといいます。
「一度で諦めないでください」とは鈴木尚子さんの言葉。
・入れ物が片付ける物に対して小さすぎないか?
・中が見えない収納が駄目なら、中が見える収納にしてみてはどうか?
・片付けるまでに、容器のふたをあける、引き出しをあけるなど、アクションが多すぎないか?
など、失敗を繰り返しその原因を分析しながら、物の「おうち」をつくってあげればいいのですね。
子どもの集中力について、おさらい
子どもの集中力は、年齢によって異なります。能力以上の集中力を求めすぎていないか、まずは親が振り返る必要があります。
その上で、早寝早起き朝ごはん、片付けを含む規則正しい生活習慣、子ども同士の豊かな体験と遊びが大事だとも紹介しました。親自身の生活習慣を見直さなければいけない必要も出てくるかもしれません。電球の交換など、できる工夫から始めつつ、じっくりと取り組みたいですね。
文・坂本正敬 写真・繁延あづさ
【参考】
資料1 育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会 -「主な検討の視点等について(案)」に係る主な論点について- 文部科学省
荒井詩万『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。』(サンクチュアリ出版)