小学生が効率良く勉強するには?
すでに小学校に通う子どもを持つパパ・ママも、来年いよいよ小学校への進学を控えている子どもを持つパパもママも、気になる問題は「子どもの勉強」だと思います。
国語、算数、理化、社会で終わりならまだしも、生活、音楽、図画工作、家庭、体育、道徳、外国語、プログラミング教育、総合的な学習の時間など、それこそ学校での学びの量は膨大です。
効率的な勉強の方法を身に付けさせないと、学年が進むほどにわが子が学校の授業に付いていけなくなってしまいそうな不安もありませんか? そこで今回は公的な研究結果や過去にHugKumが専門家に取材した記事を中心に、小学生の効率よい勉強方法についてまとめてみました。
小学生の効率の良い勉強法とポイント
小学校の学びには、さまざまな科目があります。にもかかわらず、学校帰りに習い事があれば、家庭で復習をする十分な時間も取れないかもしれません。「週末にまとめて」と思っていても、外出の予定などが入ってくる場合もあり、復習の時間が後回しになってしまうかもしれません。
こうなってくると、「効率よく」勉強をする必要が出てきますよね。「効率の良い勉強」とは、どうやって実現すればいいのでしょうか。
規則正しい生活を送らせる
効率の良い勉強方法について、1つの参考となる情報が、仙台市教育委員会と東北大学加齢医学研究所の教授らが中心になって取り組んでいる「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」です。この中では、規則正しい生活が学習意欲や学習態度の支えになっていると明らかにされています。
例えば仙台市標準学力検査の成績を基に行った調査では、成績上位のグループと下位のグループで、朝食習慣の有無や早寝早起きの習慣が違っていると明らかにされています。
朝ご飯を食べずに学校に行けば、学校の授業も集中力が下がります。学校での理解が進まない中で、家庭学習を取り組んだところで、効果は知れているはず。感覚的に言っても、容易に納得ができますよね。
親子の会話を増やす
規則正しい生活に加えて、親子の会話も、効率のいい勉強法の秘密が隠れているようです。
効率の良い勉強法というタイトルを見て、今すぐ効果の出てくるノウハウのような情報を期待していたかもしれません。しかし、先ほどの「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」によると、家の人に話をしっかり聞いてもらっている子どもほど、成績が上位グループに入る傾向が高いと分かっています。
その理由は何なのでしょうか? 例えば、鹿毛雅治著『学習意欲の理論ー動機づけの教育心理学ー』(金子書房)の情報が引用された文部科学省の「学習意欲と学習プロセスとの関係」という資料が参考になりそうです。
その資料よれば、勉強や課題そのものへの興味・夢の実現が勉強の動機になっていると、多面的な学習に発展しやすく、深い理解、客観的な知識、応用力が身に付くとされています。
学びのベースとなる興味関心・目標意識は、すごくシンプルで、家族とのコミュニケーションによって育つというのです。
子どものやる気のスイッチは、どこで入るか一概には言えません。さまざまな会話をする中で、物事への興味や関心、将来の夢や目標が自然と育まれていき、その知的探求心や目標が、自学自習や積極的な授業態度を育てるのだとか。
この学びの土台がしっかりと育っていれば、どれだけ時間が限られていても、外的な環境が整っていなくても、自分で身になる(効率の良い)学びのペースをつかめるはずです。
注意するべき、要領の悪い勉強法
遠回りに見えますが、規則正しい生活習慣・親子の会話が子どもの目標意識を育て、知的探求心を育むという話をしました。目標や好奇心が出てくれば、自然と自主的な学習習慣と積極的な授業態度も育っていきます。
では逆に、効率の悪い勉強法とは、どういった形になるのでしょうか?
「勉強しろ」と強要する
目標意識や知的な探求心が育まれて初めて、自主的な学習習慣や積極的な授業態度が生まれます。逆を言えば、目標意識や知的な探求心が育っていないのに、単に「勉強しろ」と言い続けても、子どもは苦しいだけ。
勉強の動機が「勉強をやらきゃ」「終わらせなきゃ」という外的な気持ちになり、気持ちがこもらない、早く終わらせたいだけの「作業」になってしまいます。
このような状態の子どもに、いくら集中力を高めさせるテクニックを用いても、結果は知れているはずですよね。
罰則を設けて勉強をさせる
勉強をせずにゲームばかりしている子どもを目の前にすると、思わず「勉強しないと、お菓子抜きだよ」だとか、「宿題しないと、週末のお出掛けをキャンセルをするよ」だとか、罰を与えたくなります。
しかし、罰を与えられたくないというマイナスな気持ちが勉強の動機となると、先ほどと同じで、「早く終わらせる」が勉強の最大の意図になってしまいます。机に座っても、学びではなく「課題をこなす作業」をしているだけですから、時間の割に成果がとぼしい、非効率的な勉強になってしまいます。
好成績の見返りにご褒美をちらつかせて勉強をさせる
勉強をさせる際に、「いい点をとったら、ゲームを買ってあげる」など、よい成績の達成=ご褒美という動機で勉強をさせる場面もあると思います。しかし、この手の動機付けでは、効率的な勉強にはならないと文部科学省の資料「学習意欲と学習プロセスとの関係」でも明らかにされています。
「ニンジン」をぶら下げる勉強法は、学ぶ意図が目標の達成(得点の獲得)にフォーカスされていますから、必ずしも理解するための勉強になるとは限りません。単にテスト対策のための勉強に終始してしまう心配もあるはずです。
丸暗記や語呂合わせのような理解ばかりが先行して、テスト後は忘れてしまう、結果として時間の割に身に付かない、非効率な勉強になってしまう心配があるのですね。
勉強に集中するには学習環境も見直そう
子どもの効率的な勉強には、表面的なテクニックではなく、親子の対話を通じて子どもの興味関心や目標を育むといいと紹介しました。その深い動機付けが、単なる暗記ではない、応用力の効く深い学びになっていくとも分かりました。
とはいえ、こうした方法が効果を生むには時間がかかります。何か手っ取り早く子どもを勉強に集中させるテクニックを知りたいというパパ・ママの本音もあると思います。学びに集中できる学習環境づくりとして、今すぐ取り入れられる方法はないのでしょうか。
すぐに褒められる距離で学習をさせる
HugKumでは過去に、「百ます計算」などの「隂山メソッド」で成果をあげる隂山英男先生の考える家庭学習のポイントを紹介しています。
その中で、特に小学校に入りたての子どもには、
<1.親が家事をしている近くでさせる
2.終えた課題をしっかり見て『とても上手にできたね』など、大いにほめてあげる>
(HugKumより引用)
が大事だと紹介されていました。親が家事をしている近くで目配せをしながら、すぐにでも「上手にできたね」と声を掛けられる場所と言えば、やはりダイニングのテーブルなどではないでしょうか。
仙台市教育委員会らによる「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」によれば、褒める際のポイントとして、結果や成績の良しあしではなく、子どもなりの工夫や努力に目を向けて褒めてあげるといいとのこと。その工夫や努力に気付いてあげるためにも、やはり目に留まる場所で勉強をさせる必要があります。
共働きで帰宅後は勉強を見てあげる時間がないという家庭も少なくないと思いますが、状況が許す場合、目の届く範囲で勉強をさせる習慣を取り入れてみてはどうでしょうか。
「スマホ」やゲーム機を遠ざけ、雑音の少ない環境で
HugKumでは過去に、7歳〜12歳のお子さんをお持ちのママ・パパ122人にアンケートを行い、子どもの集中力について聞いています。
その中で、子どもの集中力が途切れる環境についても聞いていて、結果として以下のような環境で子どもの集中力が途切れがちだと、パパ・ママが答えています。
・生活の中にいろいろな刺激がある周りが
・うるさかったり、見られていたりする
先ほどの「学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト」でも、「スマホ」の使用時間が長い子ども(中学生)ほど、当然ですが学びの時間が減りますから、テストの平均点が低いくなる傾向(相関関係)が確認されています。
小学生に「スマホ」を持たせている家庭はまだまだ少数派ですが、親の「スマホ」を貸してYoutubeを見させたり、ゲームをさせたりしている場合もあるはずです。普段は仕方がないにしても、少なくとも勉強の時間は目に留まらない場所に隠しておいたほうがいいかもしれません。
例えばダイニングで勉強をさせる際にも、「スマホ」以外の誘惑も目に留まらないように片付けをしたいところ。耳にも刺激が入らないように、子どもが勉強をする際には、少なくとも周りで誰か他の家族がテレビや「スマホ」を見るなどの行為を、避けたいですね。
高率のいい勉強法のためには、根っこを育てる
以上、小学生に勉強を効率的に続けてもらうための工夫を紹介しましたが、いかがでしたか? 根っこの部分で子どもの興味や関心が高まっていなければ、あるいは目標が育っていなければ、どのようなテクニックを駆使したところで、付け焼刃に終わってしまうはずです。
その根っこの部分の興味関心や目標を育てるためにも、親子で会話を楽しんで、子どものやる気スイッチが入るように導いてあげたいですね。
文・坂本正敬 写真・石川厚志
【参考】