レジ袋が有料化され、エコバッグを利用する人を多く見かけるようになりました。少なからず有料化に批判的な意見も未だあります。なぜエコバッグが推進されるのか、レジ袋を減らすことがどうして環境問題へのアプローチになるのか、レジ袋有料化の目的と効果について解説しましょう。
なぜレジ袋は有料化されたのか
2020年7月1日、小売店の事業者を対象にレジ袋の有料化がスタートしました。これまで長く無料で提供されてきたレジ袋が、なぜこのタイミングで有料化されたのでしょうか? まずは、その理由について解説します。
環境問題への取り組みの世界的な流れ
近年、世界中でプラスチックごみによる環境への悪影響が大きく取り沙汰されるようになってきました。2018年6月に開催されたG7(主要7カ国首脳会議)では、「海洋プラスチック憲章」が採択されています。これは、「2030年までに産業界と協力し、リサイクルまたはリユースできる環境を整える」「2040年までにプラスチックごみを100%リサイクル、もしくは回収しよう」「ライフスタイルから不要なプラスチックを取り除いていこう」といった活動を推進するものです。
海外や日本国内の一部の店舗では、ひと足早くレジ袋の無料提供がストップしていました。こうした国際社会の流れを受けて、経済産業省・環境省の主導の下、日本全国でレジ袋の有料化が始まったのです。
海洋汚染や地球温暖化問題も
プラスチックごみは「海洋汚染」や「地球温暖化」の原因となっています。ブラスチックは自然界で分解されにくい素材です。そのため、埋め立て処理や放棄されたプラスチックごみが海洋に流れ込むと、いつまでも海の中を漂い続けることになります。実際に、海の生き物がプラスチックを獲物と間違えて飲み込んでしまう事例があとを絶ちません。ウミガメやクジラ、絶滅危惧種のジュゴンなどが死亡し、その胃袋からレジ袋が発見されているのです。
Good bye little princess Marium! You were #conservation superstar.
It’s heartbreaking to see you die by the people’s neglect towards environment. We are all guilty, as each thrown #Plastic bag, straw, bottle is killing an animal somewhere#saynotoplastic #Dugong #plasticpollution pic.twitter.com/ejRWceKSJE— Seaweed and Seagrass Research Unit (@SSRU_PSU) August 17, 2019
▲海藻・海草研究組織のSSRUはツイッターで、ジュゴンの死を悲しみ、人間がプラスチックゴミを放棄するという罪を犯して動物を死なせている現状に、大きな警鐘を鳴らしました。
またプラスチックは石油からできているため、燃やすと二酸化炭素、いわゆる「温室効果ガス」が発生します。このまま二酸化炭素の放出量が増えれば、気温の上昇のみならず異常気象の発生率も上がっていくでしょう。
プラごみ削減のきっかけとなることが目的
レジ袋の有料化は、確かにプラスチックごみの削減を狙ったものではあります。しかし、それよりも「有料化することで国民1人1人の意識を変える」といった点に、重きが置かれているといえるでしょう。日本では、国民1人に換算して1日約1枚のレジ袋を使用していると考えられています。総数でいえば、年間約300億枚です! これは2002年の消費量から試算された数字のため、現在どれだけのレジ袋が消費されているかははっきりしていません。
「このまま使用を続ければ、30年後には魚の数を超えるプラスチックごみが海洋を漂うだろう」ともいわれています。目先の利便性より将来の環境問題を見据えることが今後の課題となるでしょう。
有料化の効果はどれくらいあるの?
さまざまな問題を引き起こしているとされるプラスチック製品は、レジ袋に限ったことではありません。プラスチックごみの総量から、レジ袋有料化による環境改善効果がどれくらい期待できるか確認していきましょう。
レジ袋はプラごみ全体の数%程度
「環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室」が発信している「レジ袋有料化」についての資料によると、毎年の廃プラスチック総排出量に対してレジ袋が占めるのは「2%」程度に過ぎないとされています。有料化してもレジ袋の利用がまったくなくなるわけではなく、環境省の掲げる目標も「レジ袋総量の10%削減」としているのが現状です。つまり、プラスチックごみ全体では、わずかな量しか削減できません。レジ袋有料化だけで環境問題が大きく改善できるとは言い難いでしょう。
紙袋など有料化されないものもある
レジ袋といっても、レジで利用される袋全てが有料化されたわけではありません。素材や形態の異なる次のような袋は、無料のままです。
・紙袋
・布の袋
・持ち手の飛び出ていない袋
持ち手のない袋とは、「アームバッグ」とも呼ばれる、ビニール袋の端に持ち手となる穴を開けたものです。書店や衣料品店などでよく見かける形でしょう。また、レジ袋と見た目は同じでも、次のような袋は無料提供が可能です。
・厚さ50μm以上のもの
・植物資源から作られたバイオマスプラスチック製のもの
・100%微生物により分解されるもの(海洋性分解性プラスチック)
これらは、再利用可能・温室効果ガスが出ない・自然界での分解が可能といった点から、有料化の対象外となっています。
プラ製のごみ袋を別途買う必要も
有料化に伴い、レジで袋を辞退するケースが増えました。しかし同時に「束になったレジ袋を購入するケース」も増えているようです。レジ袋を「家庭ごみ用の袋」として再利用していた人は多いでしょう。「家にあるごみ箱にセットし、回収日がきたら持ち手を結んで捨てる」といった習慣を急に変えるのは、難しいのかもしれません。
レジ袋に代わるエコバッグ
レジ袋の有料化をきっかけに、「エコバッグ」に切り替えた人も多いでしょう。しかし、使い方によってはエコバッグがエコにならないケースもあるのです。ここでは、本当に環境のためになるエコバッグの使い方を紹介します。
実はそんなにエコじゃない?
エコバッグとして市販されている製品には、プラスチック製のものが主流です。厚みがあり繰り返し使用できるため、使い捨てのレジ袋よりもエコだとされています。しかし、プラスチック製エコバッグを処分するときには、厚みがある分だけ余計に二酸化炭素を排出するのです。「日本LCA学会」の調査によれば、「環境への負荷をレジ袋1枚以下にするには、プラスチック製エコバッグを50回以上使うことが必要である」という結論が出ています。エコバッグを利用していても、汚れたらすぐ捨てるという使い方をすれば、かえって環境にとって害を与える結果につながりかねません。
できる限り長く使うことがポイント
エコバッグを使っていればエコというわけではなく、「1枚を長く使い続けることがエコになる」という意識を持つことがプラスチックごみ問題の解決につながります。近頃ではさまざまなデザインのエコバッグが販売されており、おしゃれなものを見かけると目移りしてしまうこともあるでしょう。新しいバッグに買い替えれば、何となく心も浮き立ちます。しかし、その心地よさと引き換えに、環境へより多くの負荷をかけてしまうかもしれません。ライフスタイルをよりミニマムに、有料化本来の目的を見失わないことが大切です。
▼HugKumママライター愛用のエコバッグはこちらの記事をチェック!
エコバッグ選びのポイント
不便であったり不衛生であったり、「使い心地が悪い」と感じることは長続きしにくいものです。使用する習慣をつけるためにも、次のような利便性を備えたエコバッグを選びましょう。
長く使える丈夫さ
「耐荷重」は、エコバッグを選ぶうえで重要なポイントです。調味料や飲料、水分の多い野菜や果物は結構な重量があります。薄手のものや作りが甘いものだと、袋が破れてしまうこともあるでしょう。取っ手部分は特に壊れやすいため、縫製をよく確認しておくことも大切になります。1人暮らしなら「5kg」、家族分も購入するなら「20kg」くらい運べると安心です。エコバッグ1枚で済ませたい場合は、重いものを入れても破れにくい「キャンバス地」などを選ぶとよいでしょう。
▼「無印良品」のエコバッグも人気!
容量や収納のしやすさ
耐荷重だけではなく「容量」も重要なチェック事項です。買い物に来てからあれこれと不足しているものを思い出し、荷物がかさばってしまうことも少なくありません。一般的なレジかごの容量は「30L」です。これを一つの目安にして、いつもの買い物に必要なサイズを見極めましょう。レジかごにセットできるタイプなら、サッカー台で詰め替える手間も省けます。
また、「コンパクトにできる」「サっと折りたためる」といった性能も、ばかにできません。エコバッグ自体がかさばってしまうと荷物になるうえ、たたみにくいと持ち歩くのが面倒になってしまいます。特に、徒歩や自転車移動が多い人は、エコバッグのコンパクトさを重視するとよいでしょう。
エコ重視なら素材も大切
エコバッグの素材は「洗濯できるもの」「拭き取りできるもの」がおすすめです。長く使っていると、野菜くずや泥など、どうしても汚れが付着してしまいます。長く使うべきとわかっていても、汚れたエコバッグに食べ物を入れるのは気持ちのよいものではありません。傷みを気にせず「洗える素材」なら、目に見えない汚れもすっきりきれいに落とせます。表面がツルっとした素材なら、「除菌シート」で手早くウィルス対策も可能です。
これからエコバッグを用意するなら
エコバッグを購入する前に、家の中を見渡してみましょう。あちらこちらに、活躍の場を待っているアイテムが眠っているかもしれません。
すでに持っているバッグなどを使う
手持ちの袋をエコバッグとして利用すれば、わざわざエコバッグを購入せずに済みます。もう普段使いしなくなった大きめのバッグがあれば、捨てる前にエコバッグとして再利用してはいかがでしょうか? 車に積んでおけば「うっかりエコバッグを忘れて有料レジ袋を購入した」といったこともなくなります。今までにもらったレジ袋があれば、丸めてバッグに入れておいてもよいでしょう。
ショッパーなどの紙袋もおすすめ
「ショッパー」とは、購入品を入れるためにブランド独自で使用されている袋のことです。ブランドロゴが入っていたり凝ったデザインだったりと、おしゃれなショッパーもたくさんあります。1回使用したくらいではヘタらないため、「いつか再利用できるかも」とショッパーをとっておくのも一つです。紙袋は11回使えば、使い捨てレジ袋よりエコになるといわれています。使い終わった後は、紙ごみとしてリサイクルに出しましょう。
エコバッグも使い方が大切
気に入ったものを長く使って初めて、エコバッグをエコに使えます。これから購入する場合は、利便性や飽きのこないデザインのバッグを選ぶことがエコにつながります。手持ちのバッグを再利用すれば、エコだけではなく節約にもなりますね。ママ・パパがエコバッグを使うことを習慣にすれば、子どもたちもエコバッグを使うことが当たり前になってくるでしょう。生態系を守り、大切な子どもたちの未来を守るためにも、できることから環境問題の改善に取り組んでいけたらいいですね。
文・構成/HugKum編集部