円形脱毛症は子どもにも起こる? その症状・種類・原因、治療法やケア法を探る【医師監修】

頭髪が抜けてしまう円形脱毛症は、大人だけの症状ではありません。15歳未満の子どもでも発症する病気なのです。子どもが円形脱毛症になった場合、家族はどうすればよいのでしょうか?

この記事では、子どもの円形脱毛症の症状やその種類、原因に迫ってみました。また、子どもの円形脱毛症の治療法や自宅でもできる子どもの円形脱毛症ケアについても詳しくご紹介していきます。

円形脱毛症は子どももなるの?

大人の病気と思いがちな円形脱毛症なのですが、この病気に年齢や性別は、まったく関係ありません。円形脱毛症の患者、その約1/4は15歳以下の子どもといわれています。早ければ、1歳から症状が現れるケースもあるようです。

子どもの円形脱毛症の症状

子どもでも発症する円形脱毛症。その症状とは、具体的にどんなものなのでしょうか?ここでは、円形脱毛症という病気についてやその初期症状、種類などを詳しく解説していきます。

円形脱毛症とは

円形脱毛症は、円形の脱毛斑が突然現れる疾患のことです。10円玉ほどの脱毛をはじめ、頭部全体、眉毛やまつ毛、体毛の脱毛に及ぶ重度の症状まであります。ただし、子どもの場合、1日に50本~200本ほどの抜け毛なら正常範囲内です。

また、ストレスから自分で頭髪を抜いてしまう「抜毛症」のケースも考えらるため、しっかりと見極めなければいけません。

初期症状について

円形脱毛症にも初期症状があります。何の前触れもなく急に脱毛が始まったり、頭部の地肌があらわになってきたりする場合です。また、つむじ部分の抜け毛や髪の毛の境界がわかりやすくなってきた場合、爪に小さな凹凸が表れた場合なども初期症状といわれています。

繰り返したり長期化したりすることも

円形脱毛症は、一度完治した後でも再発を繰り返したり、症状が長期化したりするケースもあります。信憑性のない噂やあいまいな情報などに惑わされず、しっかりとした治療やケアをすることが大切です。

円形脱毛症の種類

円形脱毛症の症状には、いくつかの種類があります。ここでは、一般的に表れる症状の中でも多いとされる「単発型」「多発型」「蛇行型」の3種類について、詳しく解説していきます。

種類1:単発(たんぱつ)型

円形脱毛症の症状として、最も多くみられるケースが「単発型」です。頭髪をはじめ、眉毛やまつ毛、体毛に突然円形や楕円形の脱毛斑が表れます。この単発型の場合、約80%の患者が1年以内に治癒します。

種類2:多発(たはつ)型

「多発型」の症状は、円形や楕円形の脱毛斑が同時に複数できるものです。完治までに要する期間は半年~2年ほどといわれ、一度治癒しても再び発症するケースも。脱毛斑が結合して大きくなる「多発融合型」もあります。

種類3:蛇行(だこう)型

生え際の頭髪が帯状に抜ける症状を蛇行型といいます。脱毛斑が細長く結合し、後頭部から側頭部などの生え際にそって、まるで蛇のように脱毛するケースです。蛇行型の場合、治療が数年にわたり長期化することもあります。

子どもが円形脱毛症になる原因は?

なぜ、子どもが円形脱毛症を発症するのでしょうか?  実のところ、そのはっきりとした原因はまだ解明されていません。しかし、ストレスや体質など、いくつかの要因が考えられています。

ストレス

子どもが円形脱毛症になる大きな要因に、ストレスが挙げられます。強いストレスや長期的なストレスを感じた場合、体内の自律神経が異常をきたし、頭部への血流が悪くなってしまうため、頭髪の栄養補給が不十分になり、脱毛につながることがあります。

免疫異常

近年の研究によれば、自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)が、子どもの円形脱毛症に大きな影響を与えているといわれています。体の免疫機能が異常を起こし、毛根を異物と間違って攻撃してしまうため、脱毛症になるのではないかという説です。

遺伝

アメリカや中国の調査では、円形脱毛症になった子どもの約8%に同じ脱毛症を発症した家族や親族がいると報告されました。しかも親等が近いほど発症率が高くなるため、遺伝も大きな要因のひとつになっていると考えられています。

子どもの円形脱毛症の治療について

子どもの円形脱毛症は、早めに根気よく向かい合えば、治療ができる病気です。医療機関は、脱毛症の専門である皮膚科を選んでください。専門医のいる病院や脱毛症専門の病院もあるため、その情報をしっかりと調べるようにしましょう。

内服薬

子どもの円形脱毛症治療に効果が期待できる内服薬があります。アレルギー症状を緩和・抑制する抗アレルギー薬やセファラチン、炎症を抑えるグリチルリチン、メチオニン、グリシン複合薬などです。ただし、どの内服薬も副作用を起こす可能性があります。

外用薬

円形脱毛症への効能がある外用薬の選択肢としては、ステロイド外用薬やフロジン液といわれる塩化カルプロニウム外用などがあります。ステロイドの局所注射や内服、点滴は小児で選ばれにくい一方、ステロイドの外用は小児でもおこなうことができる治療の一つです。

その他の治療法

内服薬や外用薬以外にも、紫外線療法や冷却療法、局所免疫療法などが円形脱毛症に効果的な治療法として挙げられます。一方でステロイドの全身投与(内服や点滴)は、子どもの発育障害や過度な副作用につながる恐れがあるため、基本的におこなわれていません。

円形脱毛症が治るまでの期間

円形脱毛症が治るまでには、どれほどの期間を要するのでしょうか?脱毛症の種類によっても異なりますが、治りやすい単発型で約80%の患者が1年ほどで治癒しています。その他の重度な症状になると、現状維持や悪化する場合が約60%もあり、治癒に10年以上かかってしまうこともあるようです。

自宅でできる子どもの円形脱毛症ケア

子どもの円形脱毛症は、自宅にいながら家族でケアすることが可能です。専門医の治療だけに任せるのではなく、日常生活における親や祖父母といった家族のサポートが、子どもの脱毛症対策につながるものと心がけましょう。

ストレスの軽減

まずは、円形脱毛症の大きな要因と考えられているストレスを軽減してあげましょう。ストレスの原因となる問題を親子で話し合ったり、信頼できる専門医などに相談して、ストレスの原因を究明してみてください。大切なポイントは、焦らずに子どもの心と向き合うことです。

ヘアケアを見直す

子どものヘアケアを見直すことも、円形脱毛症対策の大切なポイントです。ヘアケアの方法や毛髪の基本知識を学び、正しいシャンプーや頭皮マッサージを子どもに実践してあげましょう。また、脱毛斑をスカーフやウィッグ・化粧品でカバーしてあげれば、精神的な負担の軽減になります。

食事や生活リズムを見直す

食事、運動、睡眠といった日頃の生活リズムを見直すことも重要です。頭皮に栄養が届くようなバランスのよい食事を与え、適度な運動や入浴で血行を促進させることを意識してください。さらに十分な睡眠時間を確保するため、熟睡できるように子どもの不安を和らげてあげましょう。

子どもの円形脱毛症とは焦らずにじっくりと向き合うこと

子どもの円形脱毛症は、治りにくい病気のひとつといわれています。だからこそ、焦らずにじっくりと治療を続けることが重要です。「そのうち自然治癒するだろう」などと安易に考え、放置してはいけません。円形脱毛症の場合も抜毛症の場合も、その原因がストレスを起因としていることが多いため、どちらにしても早期発見、早期治療が求められるからです。専門医での治療、家族のサポートはもちろんのこと、SNSや子どもの脱毛症の会などから得られる正しい情報などをフル活用し、子どもの心に優しく気長によりそってあげましょう。

記事監修

天下茶屋あみ皮フ科クリニック 院長
山田 貴博

名古屋市立大学医学部卒。NTT西日本大阪病院にて初期臨床研修。大阪大学医学部神経細胞生物学教室助教を経て、阪南中央病院皮膚科勤務。2017年6月天下茶屋あみ皮フ科クリニック開院。

http://ami-skinclinic.com/

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文・構成/HugKum編集部

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