正期産はいつから? 正期産児の特徴や正期産のトラブルの症状・原因・治療法【助産師監修】

正期産とは、妊娠37週〜42週未満の期間に出産することを言います。この時期になると、おなかの赤ちゃんはいつ生まれてもよい状態まで成長しており、「早く赤ちゃんに会いたい」という気持ちから、運動などを行い、陣痛を促そうと考える人も多いのではないでしょうか。

当記事では、正期産児の特徴や正期産のトラブルの症状・原因・治療法など、正期産について解説します。また、正期産の運動や正期産の過ごし方の注意点もご紹介します。

正期産とは

出産は時期によって、「早産」「正期産」「過期産」に分けられます。では、「正期産」はどのように定義されているのでしょうか。

正期産の定義

「正期産」とは、妊娠37週0日〜41週6日までの期間に出産することを言います。おなかの赤ちゃんは、この時期になるといつ生まれてもよい状態まで成長しています。

早産や過期産の定義

妊娠22週0日〜妊娠36週6日までの期間に出産することを「早産」、妊娠42週0日以降のお産は「過期産」と言います。

日本産科婦人科学会によると、「早産」は全妊娠の約5%に発生すると言われています。
また、妊娠42週の「過期産」になると死亡率や病気になる確率が上がります。

そのため予定日を過ぎると産科医と相談しながら、人工的に分娩を誘発したり、場合によっては帝王切開するなどの対策を取ることが多くなります。

参考:「早産・切迫早産」-公益社団法人 日本産科婦人科学会

正期産児の特徴

正期産児の特徴には、どんなものがあるのでしょうか。

正期産児の割合

正期産で出産される方の割合は、全体の約80%以上となっています。

ほとんどの妊婦さんが妊娠37週~41週までの間に出産を迎えていることになります。

「低出生体重児」として産まれる場合も

日本の出産数は低下傾向にありますが、低出生体重児」の割合は1980年代から増加し、近年では増加傾向は落ち着いているものの、全体の9~10%前後の赤ちゃんが低出生体重児となっています。

低出生体重児とは、生まれた時の体重が2,500g未満の赤ちゃんを指し、生まれた後に医療的ケアが必要になる場合も多く、発育や発達の遅延、障害、健康に関するリスクが大きいと言われています。

低出生体重児の原因は主に2つ、「早産」と「子宮内発育不全」の可能性があげられます。

正期産での低出生体重児の原因として考えられる、子宮内発育不全は子宮内での胎児の発育が何らかの原因で不良になってしまうことです。胎児自身の異常のほか、胎盤の異常、妊娠中の喫煙、母体の低栄養状態、飲酒、妊娠高血圧症候群なども原因とされていますが、はっきりと原因がわからないことも多いようです。

子宮内発育不全は、妊娠中期以降にエコーでわかることが多いため、妊婦健診にきちんと通うことが大切です。

もちろん、飲酒・喫煙を控え、栄養バランスの取れた食事も心掛けてください。

参考:
メディックメデイア「病気が見える産科Vol.10」
母子保健の現状 – 厚生労働省

死産のリスク

厚生労働省の人口動態統計によると、2019年度の妊娠満22週以後の死産率は0.27%。ここ数年、0.3%弱となっています。

死産とは、お腹の中で胎児が亡くなってしまい、死んだ胎児が娩出されることを指します。

厚生労働省は、妊娠12週以降に死亡した胎児を出産することを死産と定義しており、死産の届け出が必要となります。

死産が起こる原因は、臍帯の異常や先天性異常染、感染症などによる赤ちゃん側の要因、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剝離や子宮の異常などの母体側の要因などが考えられますが、はっきりとわからないケースがほとんどです。

死産を防ぐ明確な方法はありませんが、無理をせず、定期的な妊婦健診を受け、お腹の張りや胎動の有無など、少しでも違和感や異常を感じたらすぐに産院に相談することが大切です。

参考:「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況」-厚生労働省

正期産のトラブルの症状・原因・治療法

正期産に起きる、トラブルの症状や原因には、どのようなものがあるでしょうか。また、治療法にはどんなものがあるでしょうか。

吐き気

つわりがやっと終わった!と思ったのに、正期産の時期にまた吐き気の症状が出てくることもあります。

「後期つわり」とも呼ばれるこの症状の原因は、胎児の成長とともに子宮が大きくなって胃が圧迫される、エストロゲンやプロゲステロン、プロラクチンなどの出産の準備のために排出されるホルモンの影響、母体の寝不足やストレスなどが考えられます。

妊娠36週以降から赤ちゃんが子宮の下の方に下がってくるため、それまで圧迫されていた胃は少しずつ楽になることもありますが、なかには出産直前まで吐き気の症状が収まらないケースもあります。

症状が辛い場合は、産院で吐き気止めを処方してもらうとよいでしょう。また、妊娠高血圧症候群や逆流性食道炎など、妊娠以外の原因で吐き気が起こっている可能性もあるため、異常を感じた時は産院で医師に相談してください。

おりもの

出産が近づいてくると、おりものの量が増えます。

これは子宮頚管の粘液を増やす働きをするエストロゲンというホルモンの分泌量が増えることによって起こります。

おりものの特徴は、量が増えることのほかに、黄体ホルモンであるプロゲステロンの影響で色が濃くなる、においが強くなる、卵白やスライムのような粘り気のあるドロッとしたおりものが出てくる、水っぽいおりものが出てくる、などがあります。

水っぽいおりものの場合は破水の可能性、おりものに血が混じっている場合は「おしるし」や不正出血の可能性もあるため注意が必要です。

また、強いかゆみや外陰部の腫れなどの症状、魚の腐敗臭のような臭い、おりものがぽろぽろとしているなどの症状を伴う場合は、感染症の可能性があるため、産院で医師に相談してください。

お腹の張り

臨月に入るとお腹の張りが頻繁になってきます。お腹の張りとは、ギューっという感じでお腹が硬くなる感覚のことです。

このお腹の張りは「前駆陣痛」と呼ばれ、分娩へ向けた準備として、子宮の収縮によって起こります。

前駆陣痛の痛みや強さ、間隔は人によって違いますが、本格的な陣痛と違って不規則で、痛みの間隔が短くなっていくというようなことはありません。本格的な陣痛は、1時間に6回以上の規則的な間隔で起こり、痛みもだんだん強くなっていきます。

前駆陣痛は赤ちゃんがお腹の中で動いたタイミングや、たくさん歩いたり動いたりして疲れた時、ストレスを感じた時にも起こりやすくなります。お腹が張った時は慌てず、座ったり楽な体勢をとって体を休めてください。しばらくするとお腹の張りはおさまってくるはずです。

本格的な陣痛との違いがわからなくて不安に感じる方もいるかもしれません。経産婦の方でも、前駆陣痛を陣痛と間違えてしまうこともあるので、前駆陣通と思われる場合でも、出血や破水があった場合や、お腹の張りがおさまらず持続的な痛みを感じる場合、また赤ちゃんの胎動が極端に少ない、またはまったく感じられない場合はすぐに産院を受診してください。

激しい胎動

出産時期が近づくと赤ちゃんは子宮の出口に向かって下降を始め、頭をママの骨盤に入れて出産の時を待ちます。

頭が固定されているので体を大きく動かす頻度は減ってきますが、胎動がまったくなくなるわけではなく、出産直前まで手や足を動かすことが普通です。胎動が激しいことは赤ちゃんが元気にしている証拠ですから心配する必要はありません。

ただ、臨月になると赤ちゃんの体も大きくなってくるため、胎動が激しいとママはつらいと感じることも多くなります。

胎動が激しくて、夜あまり眠れない、膀胱を圧迫されたり内臓を押されて苦しいと感じる方もおられます。激しい胎動を抑える方法はありませんが、痛みがある部分をさすってみたり、体勢を変えてみる、また臨月の赤ちゃんは耳も聞こえているため、「どうしたの?」と話しかけてみてください。赤ちゃんの胎動があまりない時は、ママが楽な姿勢をとって、ゆっくり体を休めてください。

胎動の動きは赤ちゃんによって多かったり少なかったりさまざまですが、数時間まったく胎動が感じられない場合は、お腹の中の赤ちゃんに何かしらの問題が起こっている可能性もあります。産院を受診して、赤ちゃんの状態を確認してください。

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正期産の運動は、早く産みたいママのためになるの?

「早く赤ちゃんに会いたい」など、早く出産したいと考えるママもおられます。その場合、正期産に運動を行うことで、出産時期に影響を与えることはできるのでしょうか。

運動で陣痛が早く来ることはない

正期産の時期に入り、いつお産が始まっても大丈夫という状況になると、一番気になることはいつ陣痛が始まるのかでしょう。

出産時期が近づくと、早く赤ちゃんが生まれるよう、階段の上り下りをすると良い、スクワットをすると良いなどの話を聞くこともあります。なかには早く産みたくて毎日部屋を雑巾がけしていたという妊婦さんもおられました。

正期産にこうした運動をすることは陣痛の誘発につながるかというと、はっきりとした因果関係は解明されていません。しかし、この時期に適度な運動をすることは身体的にも精神的にも良い影響があると言われています。

運動のメリット

出産は、長い人だと数十時間かかることもあります。

そのためお産が始まる前に体力をつけておくことにはとても意味があります。赤ちゃんが生まれてからも、昼夜を問わず授乳するなど、赤ちゃんのケアで慌ただしくなり、体力が必要になります。

また、適度な運動をすることで体重の増加を抑えたり、リラックスでき、気分転換にもなります。陣痛を促すために運動するというよりも、ママ自身のリフレッシュのため、体力づくりのために正期産の適度な運動は勧められているようです。

気軽に始められる運動をいくつかご紹介します。

1.ウォーキング
お腹が大きいとなかなか動くのが億劫だったり、つらいという方も多いでしょう。運動というと大変な印象がありますが、ウォーキングは立派な有酸素運動です。気軽に始められて、良い気分転換にもなります。30分~1時間を目安に、お散歩がてら無理のない範囲で行ってください。

2.スクワット
普通のスクワットと違い、妊婦さん向けにゆっくり行うスクワットです。骨盤底筋が伸び縮みしやすくなる効果が期待できます。足を肩幅に開き、ゆっくりと息を吸いながら膝を軽く曲げて腰を落とします。次に息を吐きながら膝を伸ばしていきます。転倒しないように、背中と頭を壁に付けたり、机や壁などにつかまって行うようにしてください。

3.階段昇降
階段昇降は、股関節や骨盤まわりなど、下肢の筋力をつける効果があります。自宅に階段がある方は自宅にいながらできますし、近所に買い物に行く際にちょっと階段のある道を選んでみるなど、身近な場所で行えます。転倒に気をつけ、足元に注意しながら、ゆっくりと行ってください。

運動の注意点

正期産に入っていても、医師に運動の禁止や安静などの指示を出されている方、体調が悪い方など、運動をしない方が良い方もいるので注意してください。

運動は、経過が順調で体調も良く、医師から特別な指示が出ていない状態で行うようにします。医師に運動をしても大丈夫かどうか、健診の時などに確認するとより安心です。

また、運動を始めた時に何ともなくても、途中で体調が悪くなったり、お腹が張ったり、異常や異変があった場合はすぐに運動を中止して楽な姿勢で休んでください。状況によっては産院を受診してください。

正期産の過ごし方の注意点

正期産の過ごし方は、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。正期産の過ごし方の注意点をご紹介します。

注意点1:入院の準備は早めに

いつお産が始まってもおかしくないので、いざという時のために早めに入院準備をしておきましょう。持っていく荷物は玄関近くに置いておくと持ち出す時にスムーズです。

タクシーを利用する予定の方は、事前に産院などを登録しておける陣痛タクシーや出産送迎タクシーなど、地域によってさまざまなサービスがあるので、調べて登録しておくと良いでしょう。

そのほかにベビー用品の準備、赤ちゃんが生まれた後の公的手続きの確認、出産をお知らせする人のリストの確認、家の整理・整頓、食材などの宅配サービスの登録、退院時に車を利用する場合はチャイルドシートを準備しておくなども行っておきましょう。産後に自分が赤ちゃんと一緒に家に戻った時のことをイメージして、どんな物やサービスが必要なのかシミュレーションしてみるとよいでしょう。

注意点2:自宅や産院から遠く離れた場所に行かない

急な陣痛や破水に備え、自宅や産院から遠く離れた場所には、なるべく行かないようにします。買い物やウォーキングなどで外に出る際には、できれば誰かに付き添ってもらえると安心です。
携帯電話や母子手帳、診察券、保険証、ある程度の現金(急にタクシーに乗るなど)を常に携帯し、緊急時の連絡先がすぐにわかるようにしておくと、いざという時にも慌てることはありません。また、妊娠中は眠気があったり注意力も散漫になりがちなため、車の運転は避けるようにしてください。

注意点3:こんな症状があったら産院に連絡を

以下の症状があった場合は産院へ連絡をし、指示を仰ぎましょう。

お腹の張りが10分間隔に

前駆陣痛が10分間隔になったら、本格的な陣痛へと移行している可能性があります。一度、産院に連絡してみてください。特に経産婦の方はお産の進みが早いこともあるので、余裕を持って15分おきの陣痛になったら連絡してください。
10分間隔というのは一般的な目安で、ほとんどの産院では「何分間隔になったら連絡を」との指示があると思います。産院が指示している時間がもっと早めの場合は、その指示に従って連絡してください。

破水した

破水とは卵膜が破れて羊水が外に流れ出ることを言います。通常は陣痛が進んでから破水するのですが、陣痛が始まる前に破水することもあります。子宮内に細菌が入り、赤ちゃんに感染する可能性があるため、入院して抗生物質を投与します。
破水に気づいたら早急に産院を受診してください。おしっことの違いがわからないと思われる方もおられるかもしれませんが、おしっこと違い、意識しても止められず、動くたびに出てしまうという場合は破水の可能性があります。

胎動が全く感じられない

出産が近づくと胎動の感じ方は違ってきますが、お腹の赤ちゃんがまったく動かないことはありません。大体20~30分くらいの周期で寝たり起きたりを繰り返しています。1時間前後胎動を感じない場合は、おなかを動かしてみたり歩いてみてください。それでも胎動を感じない場合は、産院を受診してください。

出血

少量の出血であれば、「おしるし」と言われるお産の始まりのサインである可能性があります。おしるしがあってからすぐに陣痛が始まる場合もあれば、何日かしてから始まる場合もあります。おしるしの場合は、様子を見て陣痛が始まってからの連絡で大丈夫です。出血量が多い、塊が混じる、激痛を伴うなどの場合にはすぐに産院を受診してください。

異変を感じた時、いつもと違う、何か変だと不安を感じた時には、迷わず産院に連絡し、相談してください。

リラックスして陣痛を待ちましょう!

出産が近づいてきたことや「いつ産まれるの?」などと周りの人から言われることで、ママの気持ちは落ち着かないものです。出産が予定日より遅れることもよくあること。日程などはあまり気にせず、リラックスした気持ちで陣痛を待ちましょう。

記事監修

Kawai
助産師・看護師・保育士
河井恵美

看護師・助産師の免許取得後、大学病院、市民病院、個人病院等に勤務。様々な診療科を経験し、看護師教育や思春期教育にも関わる。青年海外協力隊として海外に赴任後、国際保健を学ぶために兵庫県立大学看護学研究科修士課程に進学・修了。現在はシンガポールの産婦人科に勤務、日本人の妊産婦をサポートをしている。また、助産師25年以上の経験を活かし、オンラインサービス「エミリオット助産院」を開設、様々な相談を受け付けている。

エミリオット助産院

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文・構成/HugKum編集部

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