未熟児の定義
未熟児とは「身体の発育が成熟していない状態で生まれた赤ちゃん」のことをいいます。
以前は2500g未満で生まれてきた赤ちゃんをすべて未熟児と呼んでいました。しかし、小柄でも体の機能が未熟ではない赤ちゃんや、2500g以上でも体の機能が未熟な赤ちゃんがいることから、「未熟児」は現代の医学では使わなくなった用語です。
体重での分類
現代では、赤ちゃんを生まれたときの体重で分類しています。2500g未満の赤ちゃんを「低出生体重児」、1500g未満の赤ちゃんを「極低出生体重児」とそれぞれ分け、さらに1000g未満の赤ちゃんを「超低出生体重児」と呼びます。
在胎週数での分類
赤ちゃんが母親のお腹にいる期間、在胎週数で分類することもあります。在胎37週~42週未満で生まれてくる赤ちゃんが「正期産児」、在胎37週未満の赤ちゃんが「早産児」、在胎42週以上の赤ちゃんが「過期産児」です。
身長での分類はある?
基本的に出生時の体重や在胎週数で分類される赤ちゃん。ただし、身長にもある程度の目安となる数値があります。
ちなみに赤ちゃんの出生時の平均身長が約48cm~50cmとされ、性別で分類した場合、男の子で49cm、女の子で48.5cmといわれています。
死亡率
2008年~2012年に出生した赤ちゃんのうち、その死亡率を体重別で見ると500g以下で約40%となっています。また501g~750gで約15%、750g以上になれば10% 以下です。
在胎週数別では22週で約34%、24週で約13.5%、26週以上の場合10% 以下となっています。
低出生体重児の特徴
かつては、未熟児といわれていた低出生体重児の赤ちゃん。この低出生体重児として生まれてくる原因や発達の影響は、どういったものなのでしょうか?
ここからは、予後や看護計画も合わせ、低出生体重児の主だった特徴を解説します。
原因
低出生体重児の赤ちゃんが生まれる原因には、さまざまなことが考えられています。
母体が妊娠高血圧や胎盤に異常がある場合、また、母体の感染がある場合、赤ちゃんに先生的な疾患がある場合や、感染症にかかっている場合は、低出生体重児として生まれてくることがあります。
また、双胎や多胎妊娠、妊娠中の生活習慣(特に喫煙)が胎児に影響を及ぼしているともいわれています。
発達の影響
低出生体重児として生まれてきた場合、その後の発達も様々です。発達の仕方や言葉の影響がでる場合もあります。低出生体重児の中でも極低出生体重児ですと、運動発達や知的発達に影響が出てくる頻度が高くなります。
予後
新生児・周産期医療の進歩から近年では、低出生体重児の死亡率は激減、特に日本では、先進国の中でもっとも低い死亡率を維持しています。しかし、出生児には障害を合併しない赤ちゃんでも、学童期に行動障害や学習障害などの影響が出てしまう場合もあります。
看護計画
機能や体重が未熟な低出生体重児は、合併症や感染症を起こしやすいリスクを抱えています。その看護の重要なポイントは「体温」「呼吸」「循環」「栄養」の管理です。わずかな環境の変化でも赤ちゃんの命を危険にさらす恐れがあるため、厳密かつ慎重な治療や看護が施されます。
早産児の特徴
次に在胎週数37週未満で生まれた赤ちゃん、早産児の特徴を見ていきましょう。早産児として生まれる原因や発達の影響、予後や看護計画をわかりやすく解説します。
原因
早産児として生まれる主な原因は、妊娠37週未満の前期破水、妊娠高血圧や産道の閉じる力が弱まり、開いてしまう子宮頚管無力症などが挙げられます。また、母親の持病や赤ちゃんの疾患などから早産になるケースも珍しくありません。
発達の影響
すべての早産児に発達の影響がでるわけではないようです。たとえば、在胎35週以降に生まれた早産児は、そのほとんどに発達上の影響がありません。在胎28週未満の早産児でも目覚ましい医療の進歩により、重度の障害などが残る確率は、減少しています。
予後
在胎週数が35~37週未満の早産児は、予後も正期産児とほとんど変わりません。しかし、在胎週数が28週未満の早産児(出生時の体重が1000g未満の超低出生体重児)は、脳性麻痺や精神発達遅滞、視力障害などのリスクが高くなってしまいます。特に視力障害が表れやすいといわれているようです。
看護計画
在胎35週以降に生まれた早産児の場合、体の機能や体重が正期産児に近いため、特別な医療処置を施す必要がないこともあります。
在胎30週未満に生まれた早産児の場合、体の機能や体重が未熟な状態のため、十分に発達するまでの間は、NICU(新生児集中治療室)などで治療・看護します。
未熟児疾患の症状と治療法
未熟児として生まれた赤ちゃんは、いろいろな疾患を抱えている可能性があります。その疾患とは、具体的にどのような病気なのでしょう? ここでは、未熟児疾患の症状と治療法を解説していきます。
未熟児網膜症
未熟児網膜症とは、網膜にある血管が異常に増殖する疾患です。場合によっては、弱視、斜視、白内障、緑内障、網膜剥離などの症状が表れ、重症だと失明してしまうこともあります。治療法は、症状の重さに従い、光凝固、硝子体手術などを行います。
未熟児くる病
母親の胎内で必要な量の栄養素を吸収できないと疾患してしまう未熟児くる病。骨の成長が妨げられ、発育の遅れや骨塩量の低下を伴う全身性の病気です。治療法には、カルシウムやリンを多く含んだ母乳添加用粉末やビタミンDを飲ませたりします。
未熟児貧血
予定よりも早く生まれてきた早産児や1500g未満で生まれてきた極低出生体重児などに起こりやすい疾患が未熟児貧血です。未熟児貧血の予防と治療法には、人工合成されたエリスロポエチンを投与します。また、重度な貧血の場合、赤血球輸血や鉄剤の投与をを行うこともあるようです。
未熟児へのサポート制度を活用しよう
日本には、子育て世帯の負担を軽減するため、赤ちゃんの医療面や家族の精神面をサポートしてくれる制度が数多くあります。ここからは、未熟児を育てるときに役立ついろいろなサポート制度を集めてみました。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が自己負担限度額を超えた場合、その超えた金額が払い戻される制度です。申請先は、健保組合や市区町村などになります。高額な医療費が必要かもと不安なときは、事前に申請しておくとよいでしょう。
乳幼児医療費助成(子ども医療費助成制度)
乳幼児医療費助成(子ども医療費助成制度)は、患者が負担する医療費を自治体がサポートしてくれる制度です。自己負担した医療費の一部もしくは、全額を自治体が助成(負担)してくれます。自治体により、サポートの内容が異なるため、必ず確認が必要です。
養育医療給付(未熟児養育医療)
病院から「入院治療が必要」と判断された場合、医療費を助成してくれる制度が養育医療給付(未熟児養育医療)です。判断の基準となる主な症状としては、出生時体重が2,000g以下、状態が不安定、黄疸があるなど、体温が34度以下などが挙げられます。このサポートも自治体によって内容が異なるため、対象確認を行ってください。
未熟児訪問指導
厚生省によれば「未熟児は、通常養育上の必要性から訪問指導を必要とするため、出生したすべての未熟児を対象として訪問指導を行うことが望ましい」としています。この観点から2500g未満の未熟児を対象に自治体の保健師や助産師などが家庭を訪問し、健康状態の確認や保健指導、不安や悩みなどの相談などを行う制度です。
未熟児を育てるためには、愛情を持って正しい情報を詳しく知ること
未熟児とは、かつての呼び名であり、現在では、低出生体重児や早産児と呼んでいます。低出生体重児や早産児で生まれた場合、さまざまな未熟児疾患による発育障害、将来的に行動障害や学習障害、視力障害などのリスクを抱えてしまうことも少なくありません。とはいえ、低出生体重児や早産児でもかけがえのない命、かわいい赤ちゃんです。病院や家族、自治体の協力のもと、しっかりと現実に向かい合い、世界にたったひとりの赤ちゃんを健やかに育てていきましょう。
記事監修
塚田 佳子
けいこ豊洲こどもクリニック院長。小児科専門医、子どもの心相談医であり、年子二児の母親でもある。
略歴│獨協医科大学医学部卒業 獨協医科大学附属病院勤務 那須赤十字病院勤務(小児神経外来) 獨協医科大学医学部 小児科学教室 非常勤助教(小児神経)
資格・所属学会│小児科専門医 子どもの心相談医 身体障害者福祉法指定医 医学博士 日本小児科学会 日本小児科医会 日本アレルギー学会 日本小児神経学会 日本てんかん学会
文・構成/HugKum編集部