「にやける」の本来の意味は「なよなよしている」
ひょっとすると、にやにやする、薄笑いを浮かべるという意味だと思っている人がいるかもしれませんね。でも、それは本来の意味ではないのです。
本来の意味は何かというと「なよなよしている」ということなのです。だいぶ意味が違いますね。
男が派手に着飾ったり媚びるような態度をとったりすることを指した「にやけ」
なぜ「にやける」がなよなよしているという意味になったのかというと、「にやけ(若気)」という名詞が動詞化した語だからです。「にやけ」は、鎌倉・室町時代頃に、貴人の側にはべって、男色の対象となった少年のことです。これが後に、男が色めいた姿をしていることや、男が派手に着飾ったり、なまめきこびるような態度をとったりすることをいうようになったのです。
そのような「にやける」が、どうしてにやにやするという意味だと思われてしまったのかというと、「にやける」の「にや」を「にやにやする」の「にや」と同じだと考えたからでしょう。それと、にやにや笑うという意味の「にやつく」との混同も考えられます。
新しい意味として認知されつつある「にやける」
でも、にやにや笑いだと思っている人、安心して下さい。最近の国語辞典ではこの新しい意味で使う人が増えているため、ちゃんとその意味も載せているものがありますから。
記事執筆
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。