96歳、口うるさいばぁば・鈴木登紀子から最後のお小言「食べるときのお作法は、親がお手本ですよ」

46歳のときに『きょうの料理』(NHK Eテレ)でデビューして50年。“ばぁば”の愛称で親しまれる、日本料理研究家の鈴木登紀子さんは、おいしくて丁寧な家庭料理の指導はもちろん、実は日本人が大切にしてきたマナーについても常日頃教えています。とりわけ、ばぁばが憂えているのは、若い世代や子どもたちのお行儀作法。

“ようすがいい”人になるために身につけるべきは、食事のマナー

「ばぁばの母・お千代さんは生前、“ようすがいい”というほめ言葉を好んで使っていました。おもに女性をさして使うことが多かったのですが、ひと言で言えば“立ち居ふるまいが美しい”、今風なら“格好いい”といった感じでしょうか。とくに、食べるという行為は、親をお手本とし、親に教えられて身につけるもの。食事の際のふるまいや食べ方には、その人の素性、品性が表れるといっていいでしょう。現在、子育て真っ最中の方もいらっしゃるかもしれません。口うるさいばぁさんからのお小言として、“ようすがいい”人になるために、身につけるべきマナーを覚えておいていただきとうございます」。

そこで、料理さしすせそから作法までがぎっしり詰まった最新刊『誰も教えなくなった、料理きほんのき』(小学館)から、ばぁばがどうしても伝えておきたかった、「いまさら聞けない食事のマナー」を紹介します。

小さい頃から“お運び”の手伝いをさせましょう

ご挨拶は人間関係の基本、おもてなしは礼節の基本。これを子供たちにきちんとしつけおくことがとても大事….とばぁば。そのためにも、お盆を運べるようになったら、子供たちにお給仕の手伝いをさせましょう。ご挨拶が“習慣”として身につきます。

お客様がいらしたときは絶好の修行時間。お盆の使い方を学びましょう。写真は鯛のあらとかまぼこで作る「白魚もどきのお椀」

「ばぁばも小さいころから、お客さまがお食事中、お代わりなさりたいか様子を見て、すっとお盆を差し出せるようにしておきなさいと言われていました。お盆は、お客様のほうから見える側がお盆の正面になりますよ」(ばぁば)。

お盆は、お客様から見た向きが正面。

「いただきます」のあと、まずお箸を手に取っていませんか?

正式にはいただきますのあとに手に取るのは、箸よりも器が先なんですよ。「そして、もどすときはお箸が先です。お食事中は、箸置きが汚れないように箸先を4~5cm出して、箸置きに置きますよ」(ばぁば)。

【箸と器の持ち方】

1器を左手に持ったら、箸を右手で上から取る。

 

2.器を持ちながら、箸の中央を左手の人差し指、中指で一旦受ける。

 

3.左手に一旦持たせた箸を、右手で食べやすい形に持ち直して、いただく。

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「“手皿”が上品? いえいえ、不作法ですよ」。“取り分け”も粗相のもとなのでNGです

外食のときなど、ついやりがちなのが“手皿”。「“上品な食べ方”と誤解されているようですが、もしも本当にたれなどが垂れたら、指の間からテーブルに落ちませんか?そして、汚れた手はどこで拭くのでしょう? 小皿、あるいは茶碗や汁椀の蓋をお使いください」(ばぁば)。

また、中国料理などで料理を取り分ける際、人様のお世話はしないこと。「一見、気が利くように見えますが、実はマナー違反。粗相があっては大変です。さっと自分の分を取り、“お先に”とひと声かけて、取り箸と器をお隣の方へ取り回しましょう」(ばぁば)。Withコロナの時代ですから、なおさら個々で取り分けたほうが安心ですね。

自分の分をとったら、次の方に回すのが正解・「お先に」という言葉も忘れずに。

相手を思いやる気持ちが大切ですよ

「母は、『自分がよそ様に伺ったときに、ああ、よく気持ちよくもてなしてくださった・・・と思うように相手にふるまいなさい』とよく申しておりました。相手を思う心ですね。お料理を食べる人への敬意、作る人への感謝が、作法には込められています。どうぞ、”ようすのいい”姿をめざしてくださいませ。そうそう、お料理は仕上げの盛りつけひとつでも、印象が変わりますよ。最後にゴマや青いものを散らすだけでもおいしそうに見えてきます。そんな心遣いも忘れずに」(ばぁば)

盛りつけの心配りも忘れずに。写真は鯛のあらで作った「ごちそう鯛めし」。写真/近藤篤 イラスト/石津亜矢子 文・神史子

 

著・鈴木登紀子小学館金額¥1,815

一家に一冊。ばぁばのお台所バイブル保存版!大正生まれのばぁばが教える、丁寧な家庭料理とたしなみ。家庭料理メニュー115種。今さら聞けない下ごしらえ。ばぁばの合わせ調味料早見表&料理用語。食にまつわるルールとたしなみ。

著者プロフィール

日本料理研究家
すずき ときこ

料理研究家。1923年11月に青森県八戸市に生まれる。46才で料理研究家としてデビュー。東京・武蔵野市の自宅で料理教室を主宰するかたわら、テレビ、雑誌等で広く活躍。『きょうの料理』(NHK・Eテレ)への出演は50年を数える。新刊『誰も教えなくなった、料理きほんのき』『ばぁば92年目の隠し味』(ともに小学館)はじめ著書多数。

 

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文・構成/小学館 出版局 生活編集室

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