乳幼児教育保育実践研究家の井桁容子先生が、子育て中のママのお悩みに答えます。今回は「きょうだいとひとりっ子」についてお話を伺いました。
Q:息子はひとりっ子。 親として注意することはありますか?
ひとりっ子は過剰な注目が重荷になることも
ひとりっ子にとってつらいのは、家族の目が自分に集中してしまうことです。たとえば過剰なほめ言葉は、愛情や応援の気持ちからであってもプレッシャーになりかねません。「上手ね」「すごいね」と言われすぎると、子どもは「上手でなければダメなんだ」「すごくなければ認めてもらえないんだ」などと感じてしまうことがあるのです。
さらにひとりっ子の場合、いつも親に見られていることで本音を出せなくなってしまう子もいます。大人に気をつかって、自分の本当の気持ちより「親やまわりの大人が望むこと」を言ったりしたりするようになってしまうのです。
親として知っておきたいのは、「大人と子どもの望みは違う」ということ。親の希望や価値観を優先するのではなく、子ども自身が「選べる」「決められる」ようにしましょう。
そしてもうひとつ、家族以外の人と接する機会をつくることも大切です。ママ友・パパ友とは、できれば家族ぐるみのおつき合いを。子どもにとって家族以外の人と過ごす場は、親を違う視点から見たり、新しい価値観に触れたりする大事なチャンスです。
子どもにとって大切なのは「平等」より「満足」
きょうだいのいる家庭では、親を悩ませるのが「関わり方のバランス」ではないでしょうか。よくあるのが、上の子にがまんさせすぎてしまうこと。下の子に手がかかるから上の子にはしっかりしてほしい……という親の望みを無意識に押し付けてしまいがちです。反対に下の子に対しては、何かと上の子とくらべたり、必要以上に赤ちゃん扱いしてしまったりすることがあります。
親が子どもとの関わり方に迷うのは、「平等」を意識しすぎるからです。でも、ときにはアンバランスな接し方もあってよいと思います。「公平に接すること」が必要な場面もありますが、大切なのは、「子ども自身が満たされたと感じること」なのです。
下の子の世話に時間がかかるのはしかたのないこと。そんな時期は、どこかで上の子だけと向き合って過ごす時間をつくればいいのです。たとえ時間は短くても、親の愛情が自分にもむいていることがわかれば、子どもは安心して満たされた気持ちになります。
「平等」にばかりこだわると、子どもはいつでも親の愛情を「半分こ」することになります。でも、いつもケーキを半分しか食べられないのはちょっとさびしい。それよりは、毎日でなくてもいいから丸ごと食べられる日があったほうがいいのです。「いつも半分こ」ではなく、それぞれの子に100%の思いを注ぐ時間をつくったほうが子どもの喜びも大きくなります。
きょうだいは影響を与え合うもの
きょうだいは、親が意識しなくても影響を与え合います。その中にはもちろん、あまり感心できないものもあるでしょう。たとえば、上の子が覚えてきた悪い言葉を下の子がまねする、といったような場合です。こんなときはただ否定するのではなく、「それは人をいやな気持ちにさせる言葉だね」「こんな言い方のほうがうれしいな」などと、言葉の意味や使い方を子どもと一緒に考える機会にしましょう。
親にとっては「聞かせたくない」「知ってほしくない」ことであっても、完全にシャットアウトすることはできません。知ったうえで相手の気持ちを考えて使わない、言い方を工夫する、といった「自分で考えて選べる力」を育てることを目指しましょう。
記事監修
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。