「エアープランツ」は、個性的な見た目と土を使わない手軽さから、インテリアに人気の観葉植物です。あまり手間がかからないので、子育てや仕事で忙しい人でも手軽に栽培できます。エアープランツのおすすめ品種や、効果的な飾り方を紹介します。
おしゃれな観葉植物エアープランツ
エアープランツを初めて見る人は、その不思議な外見に驚くのではないでしょうか。土に植えていないのに葉がみずみずしく育ち、咲く花にも独特の魅力があります。
エアープランツが土に頼らずに育つ理由や、葉や花の特徴について見ていきましょう。
エアープランツの特徴
エアープランツは、「パイナップル科チランジア属」の植物の総称です。チランジア属は中南米の熱帯地域を中心に、世界中の砂漠や山林に幅広く自生しています。
チランジアの大半はサボテン・樹木・岩などに根を絡ませ、葉から水分を吸収して育ちます。根が空中に出ている様子や空気から水を取り込む生態から、エアープランツと呼ばれるようになりました。
エアープランツの葉の表面には「トリコーム」と呼ばれる細い毛があります。土中に伸びる根の代わりに、トリコームが空気中の水分をキャッチすることで、成長に必要な水分を得ているのです。
葉の色は銀色がかった緑だったり濃い緑だったりと、品種によってさまざまです。
エキゾチックな花も魅力
エアープランツは株が成熟してくると、中心部分から茎が伸びて花を咲かせます。花の色や形は品種によって異なりますが、どれもエキゾチックで独創的な雰囲気です。
開花の時期は主に春~秋で、咲いてから2~4週間ほど楽しめます。
花の咲きやすさは株の成熟度合いや育てる環境、品種によって異なり、年に数回咲くこともあれば、数年に1度しか咲かないこともあります。
花を目当てに育てるなら花が咲きやすい品種を選び、できるだけ日当たりのよい場所で管理しましょう。
種類は2タイプ
エアープランツは、大きく「エアータイプ」と「タンクタイプ」の2種類に分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
「エアータイプ」
エアータイプは、空気中の水分を葉から吸収して育つ品種を指します。エアータイプは葉の色によって、2種類に分類されます。
葉の色が違う理由は、トリコームの形状や量です。トリコームは光を反射して白く見えるため、トリコームが多いほど葉の色は「銀色」に近くなり、少なければ鮮やかな「緑色」になります。
「銀葉種」と「緑葉種」
トリコームが発達している「銀葉種」は、少ない水分でも効率よく取り込めるため、乾燥に強いのが特徴です。
トリコームには空気中の水分を吸収するほかに、紫外線から株を守る役割もあります。このため強い日差しの下でも株や葉が傷みにくく、丈夫に育ちます。
一方の「緑葉種」は雨の多い地域で自生していた品種で、トリコームがあまり発達していません。強い日差しや乾燥に弱いため、水をたくさん与えるとよく育ちます。
葉の色も育て方も一般的な観葉植物によく似ているので、エアープランツの初心者でも挑戦しやすいでしょう。
「タンクタイプ」
タンクタイプは、水分を葉の付け根の部分に貯めて育ちます。根よりも葉の方が大きく、そのままでは不安定なため、鉢植えで育てるのが一般的です。
タンクタイプは葉の色が一定ではなく、カラフルな葉や模様入りの葉を持つ品種もあります。日当たりのよい場所で育てると、葉の美しい色合いを楽しめます。
エアープランツの育て方
他の観葉植物と違って、エアープランツの栽培にはほとんど土を使いません。衛生的で室内での管理が楽な反面、育て方には独特のルールがあります。
エアープランツの基本的な育て方を見ていきましょう。
選び方と育てる環境
エアープランツを買うときは、できるだけ入荷から日が浅い株を選びましょう。店の中は日当たりが悪くなりがちで、湿度の管理も行き届いていないことがあります。店内に長く置かれている株ほど、弱っている可能性が高くなります。
よく分からないときは、葉と根元の色、重さに注目します。葉がみずみずしく、葉先や根元が変色していないものや、手で持ったときに重さを感じるものが元気な株です。
家に持ち帰ったら、まずは霧吹きなどでたっぷりと水を与えます。
エアープランツは高温多湿な環境が苦手なので、直射日光の当たらない、明るく風通しのよい場所に置いてあげましょう。室温が30度を超えないように注意すると同時に、ネットや小石、木の上などに置いて通気性をよくしておくのも重要なポイントです。
水やりの方法と頻度
エアープランツの水やり方法には「ミスティング」「ディッピング」「ソーキング」の3種類があります。
中でも、霧吹きで葉に水を吹きかけるミスティングは、エアープランツの水やりの基本です。
「ミスティング」では葉が完全に濡れるまで、たっぷりと水をかけてあげます。週に2度を目安に、湿度が高い時期は回数を減らすなどして調整しましょう。
たくさんのエアープランツを育てていて、一度に水やりしたいときは「ディッピング」が有効です。バケツなどに水を張り1~2分浸けておくだけなので、ミスティングよりも手早く水やりできます。
「ソーキング」は、ディッピングを長時間行う水やり方法です。2~5時間を目安に、月に1~2回実施するとよいでしょう。
また、エアープランツは濡れたまま放置すると傷みやすくなります。どの方法でも、水やりが終わったら風通しのよい場所に置き、しっかりと乾燥させましょう。特に、葉のすき間や根元に水が残りやすい形状の株は注意が必要です。逆さまに吊るすなどして、完全に水気を取るようにしましょう。
施肥はほどほどに
肥料には株の成長を早めたり、葉の色をよくしたりする効果が期待できますが、与え過ぎると逆効果になります。
肥料焼けを防ぐためにも、成長期の春~秋に限り、少量を与えるようにしましょう。
ミスティングの際に、規定の2倍以上に薄めた液体肥料を水の代わりに吹きかけます。葉の表面に付いた肥料は、次回の水やりで洗い流しましょう。
鉢植えのエアープランツは、葉にかからないように根元に注ぐようにして与えます。
エアープランツの飾り方
エアープランツは土を使わずに育てられるため、飾る場所を選びません。キッチンや洗面所にそのまま置いたり天井から吊るしたりと、さまざまな飾り方ができます。
エアープランツをおしゃれに飾るアイデアを見ていきましょう。
吊るすだけでもおしゃれに決まる
軽くてどの方向からでも葉の色が見えるエアープランツは、天井やカーテンレールから吊るすだけでもおしゃれに決まります。植木鉢のように床や棚に置かなくても済むので、子どもにひっくり返される心配もありません。
カラーサンドを敷いたガラス容器に入れるとトロピカルな雰囲気に、ワイヤーバスケットや麻ヒモを使って吊るすとナチュラルな雰囲気になります。
部屋のイメージや好みに合わせて自由に飾ってみましょう。
流木やウッドチップと合わせる
エアープランツは流木やウッドチップ、素焼きのプレートなどに着床させると、持ち運びや水やりが楽になります。
そのまま壁に立てかけたり、棚に置いたりしてもさまになり、飾り方のバリエーションが増えるのもメリットです。
着床作業はいつでもできますが、成長期の4~9月に行う方が根が張りやすく効果的です。根元が着床材の表面に近付くように、細い針金で軽く固定しておきましょう。
2~3カ月後に、しっかりと根が張っていれば完成です。
鉢植えもおすすめ
エアープランツは、鉢植えでも育てられます。タンクタイプはもちろんのこと、エアータイプでも株が大きくバランスが取りにくい場合は、鉢植えにすると安定します。
素焼きの鉢なら、根元を底に付けておくだけで直接根を張り着床します。プラスチックや陶器などの表面が滑らかな鉢には、軽石やウッドチップを入れて植え付けるとよいでしょう。
インテリアにもなるおすすめ品種
エアープランツには原種だけで600、園芸種も入れると2000以上の品種があるといわれています。多くの品種の中から、インテリアに最適なおすすめの品種を三つ紹介します。
初心者にも育てやすい定番種「イオナンタ」
イオナンタはエアープランツの代表ともいわれている、定番の銀葉種です。イオナンタとは「すみれ色」の意味で、名前の通り紫色のきれいな花を咲かせます。
花が咲くときに葉の中心部が赤やピンク色に染まる様子が美しく、変種も多く流通していることから、幅広い層に人気があります。
育て方が簡単で花芽も付きやすいため、初心者にもおすすめです。
開花時に赤く色づく「ブラキカウロス」
ブラキカウロスは、鮮やかな緑色の葉が特徴の緑葉種です。
花は紫色で、開花時には全体が真っ赤に色づきます。水をたくさん欲しがる品種なので、育てる際は水やりを多めにしましょう。
葉が薄くて柔らかく、切れやすいため取り扱いにも注意が必要です。根が伸びやすい性質なので、鉢植えで育ててもよいでしょう。
似たような見た目の品種が多く、花が咲いて初めて違う種類と気づくこともあります。
エアープランツの王様「キセログラフィカ」
キセログラフィカは直径60cm、高さ30cmほどに成長する、ボリュームのある品種です。
銀色がかった葉がカーブする様子が美しく、どのようなインテリアにも合うことから「エアープランツの王様」とも呼ばれています。
成長すると株の中心から茎が伸び、先端に薄い紫色の花を咲かせます。株の大きさに見合う立派な花が咲くので、育てる楽しみを存分に堪能できるでしょう。
キセログラフィカは葉が肉厚で株も大きいため、他のエアープランツに比べて重さがあります。壁などにディスプレイする際は、落ちないようにしっかりと取り付けましょう。
エアープランツでグリーンのある生活を
土を使わなくても育つエアープランツは、植え替えの手間がなく、水やりなどの世話も比較的楽な植物です。植木鉢を置く場所がない、世話をする時間がないなどの理由で観葉植物を諦めていた人でも、手軽に育てられます。
エアープランツをインテリアに取り入れて、グリーンのある生活を楽しみましょう。
文・構成/HugKum編集部