近年、生態系が破壊され、人間を含む生き物の活動に深刻な影響が出ているというニュースが増えています。このままでは子どもたちが将来困るのではないかと、不安に思う人も多いでしょう。生態系の仕組みや、破壊を防ぐ対策を紹介します。
生態系とは?
そもそも生態系とは、何を表す言葉なのでしょうか。生態系の意味と、具体的な中身を見ていきましょう。
生き物と生きる自然体系を指す
生態系は、生き物と生き物を取り囲んでいる自然環境との関係を、一つのまとまりとしてとらえたものです。全ての生き物は、生息している場所の環境やほかの生き物の影響を受けながら暮らしています。
例えば人間も、食料となるほかの生き物やきれいな水、空気といった自然環境がなければ生きていけません。生き物が生息している場所には、必ずこのような生態系が存在するのです。
海や川、森などにはそれぞれ生態系があり、地球も一つの生態系といえます。
生態系を構成する要素
生態系は「生産者」「消費者」「分解者」と呼ばれる生き物と、空気や日光、土などの生き物以外の要素で構成されます。
「生産者」は植物のことです。植物は空気中の二酸化炭素と日光で光合成を行い、ほかの生き物のエサとなる有機物を作ります。
植物が作った有機物を消費するのが「動物(消費者)」です。植物や動物の死骸や排泄物は、「微生物(分解者)」によって分解され、土の栄養分となって植物の成長を助けます。
水質や気温、湿度などの自然環境も、生態系を構成する要素の一部です。蒸し暑い地域と涼しく乾燥した地域では、全く違う生態系ができ上がります。
それぞれの要素が作り出す環境に適応した生き物が集まり、お互いに影響し合いながら生態系を構成しているのです。
生態系と食物連鎖
生態系の生き物は、全て「食物連鎖」に組み込まれています。食物連鎖の仕組みを見ていきましょう。
食べる、食べられる関係
「食べるもの」と「食べられるもの」とのつながりを「食物連鎖」といいます。
食物連鎖のスタートは、生産者である植物です。植物を食べた動物をほかの動物が食べ、さらに他の動物に食べられていくという関係が数回続きます。
食物連鎖が続く数は、一般的には2~3回、多くても5回ほどです。連鎖の最後にいる動物は誰にも食べられませんが、死ぬと分解されて土に還り、植物の栄養分となります。
生態ピラミッドという考え方も
食物連鎖では、食べられるものの方が、食べるものよりも数が多いことが分かっています。最も多いのが植物で、段階を追うごとに数が少なくなっていくのです。
植物を底辺にしてそれぞれの個体数を図で表すと、頂点に向かって先が細くなる「ピラミッド型」になります。
このため食物連鎖を「生態ピラミッド」と呼ぶこともあります。
生態系の破壊について
生態系について普段はあまり意識していない人も、生態系破壊による影響は気になるのではないでしょうか。生態系が破壊される理由や、予防策を見ていきましょう。
生態系が破壊されている理由
生態系が破壊される原因のほとんどが、人間の活動にあります。主な原因として「外来種の増殖」「生息地の環境破壊」「動植物の乱獲」などが挙げられます。
外来種とは、本来の生息地とは違う地域に持ち込まれた生き物のことです。
外来種が元々その場所にいた生き物を食べたり、ほかの場所に追いやったりすると生態系が変わり、さまざまな影響が出てきます。
日本に持ち込まれ増殖した外来種では、セイタカアワダチソウ、ブラックバス、アライグマなどが有名です。
工場や農場の建設のために、森林を伐採したり干潟を埋め立てたりするのも生態系破壊の要因です。
また、人間は自分の利益のために、珍しい生き物を捕ることがあります。毛皮や象牙など、食料以外の目的で乱獲され絶滅しそうになっている生き物もいるのです。
生態系の破壊による影響
生態系が破壊されると、どうなってしまうのでしょうか。まず考えられるのが、その場所で生息する生き物の減少・絶滅です。
例えば、食物連鎖の中間にいる生き物を外来種が食べてしまうと、連鎖の頂点にいる生き物は生きていけないでしょう。
生態系の破壊によって、地球上に存在する生き物の種類は年々減少しています。人間が好んで食べる生き物の中にも絶滅を危惧されている種があるのです。
生態系の破壊は、地球温暖化にもつながります。地球温暖化の原因の一つが、人間の経済活動によって排出される大量の二酸化炭素です。
森林の伐採や海の埋め立てなどで植物を減らしてしまったことで、二酸化炭素が吸収されなくなり、温暖化に拍車がかかっているのです。
生態系破壊防止のためにできること
生態系を構成する要素の一つが失われると、ほかの構成員にも影響を及ぼし、人間にとっても困った事態が起こります。既に地球上のいたるところで、地球温暖化による異常気象や健康被害、種の減少による食料不足などの問題が起こっています。
今後は生態系を破壊する行動は避け、貴重な資源を守っていかなければなりません。生態系を破壊しないために、個人でできることはたくさんあります。
外来種を持ち込まない、自動車や冷暖房に頼らない、環境保護に取り組む団体を支援するなどの行動は、それほど難しくないでしょう。
環境に優しい洗剤を選んだり、ゴミを減らす行動を心掛けたりすることも、生態系を守ることにつながります。
人間も生態系の一部だと知ろう
人間を含めて、全ての生き物は単独では生きられません。全てが生態系の一部として、それぞれの役割を果たしながら共存しているのです。生態系の仕組みを理解して、環境保全に努めましょう。
構成・文/HugKum編集部