近年、バイオマス燃料が新たなエネルギーとして注目されています。まだ耳慣れないという人のために、バイオマス燃料の基礎知識をまとめました。広く普及して日常の話題にのぼるようになる前に、バイオマス燃料に関する知識を先取りしておきましょう。
バイオマス燃料とは?
バイオマス燃料は、石油・石炭などの化石資源に代わるエネルギーとして開発が進められている分野です。まずは、バイオマス燃料がどういうものなのか確認しておきましょう。
バイオマスとの違い
バイオマス(biomass)とは「化石資源を除く、再生可能な生物由来の資源」のことです。厳密には、地球上にある動植物の全てがバイオマスとなりますが、倫理的理由から一般的に動物や虫をバイオマスとは呼びません。
バイオマスには、動植物から発生した有機資源も含まれます。例えば、残った建築資材や古紙、精米時に出た稲わらやもみ殻、家畜のふん尿などもバイオマスです。
これらのバイオマスを原料とする燃料を「バイオマス燃料」といいます。
バイオマス燃料が注目されるワケ
バイオマス燃料に期待されるのは、「温室効果ガスの削減」と「新たなエネルギーの確保」です。
石油資源は温室効果ガスを発生させる上、あと50年ほどで枯渇するだろうといわれています。一方で、原子力は東日本大震災時の福島第一原発事故の例もあるように、確実に安全なエネルギーとはいえないのが現状です。
そこで、バイオマス燃料が石油資源や原子力に代わるエネルギーとして注目を集めました。地球上の二酸化炭素量を増やさない「再生可能エネルギー」として、今後もバイオマス燃料の活用が進められていくでしょう。
どんな種類の燃料があるの?
バイオマスから作られるバイオマス燃料の種類はさまざまです。その中で、実用化に向けて特に開発が進められている三つの燃料について解説します。
バイオエタノール
「バイオエタノール」はガソリンの代わりとなる燃料で、ガソリンで走る一般車両などに広く利用できます。原料となるバイオマスは、主に以下のようなものです。
- 糖質原料
- でんぷん質原料
- セルロース系原料
糖質原料とは、サトウキビや糖蜜などのことです。トウモロコシ・麦・じゃがいもなどからはでんぷん質原料が、もみ殻や廃材からはセルロース系原料がとれます。
これらのバイオマスをアルコール発酵させたものが、バイオエタノールとなるのです。
バイオディーゼル
「バイオディーゼル」は軽油の代わりになる燃料で、バスやトラックといったディーゼルエンジンの車両に利用されています。原料となるバイオマスは、主に以下のようなものです。
- 植物油
- 魚油
- 獣脂
- 廃食用油
菜種油やオリーブオイルなど普段の生活で使うものも、食品工場などで使用された後の油も、バイオマス燃料として利用されているのです。
燃料として利用されるときは、バイオディーゼル100%のときもあれば、軽油と混ぜて使われることもあります。
バイオガス
「バイオガス」は、バイオマスが発酵したときに発生するガスのことで、ガス発電や調理ガスなどに利用されています。原料となるバイオマスは、主に次のようなものです。
- 排泄物
- 肥料
- 汚泥
- ゴミ
家畜飼育場で出る動物のふん尿や、家庭で出たゴミといった有機廃棄物は、酸素のない状態で微生物に発酵させるとガスが発生します。
作られたバイオガスは発電に利用されたり、温水プールの熱源となったりと、さまざまな用途で利用されているのです。
バイオマス燃料利用における今後の課題
新たな燃料として期待されているバイオマス燃料ですが、いくつかのデメリットもあります。広く普及させるために解決すべき、バイオマス燃料の課題について見ていきましょう。
製造コストの削減
バイオマス燃料の普及速度にブレーキをかけているのは「製造コスト」です。石油資源の燃料より加工プロセスの多いバイオマス燃料は、どうしてもコストが高くなってしまいます。
また、ガソリンとして利用する場合、バイオマス燃料に対応した給油機や車両が必要になります。燃料自体の製造コスト削減だけではなく、こうした周辺設備への投資も大きな課題です。
食料との競合
もう一つの課題は「食料との競合」です。世界には、バイオマス燃料の原料を「生きるための栄養源」として必要としている人がたくさんいます。
食料をエネルギー資源とすることを問題視する原因は、食料不足の誘発だけではありません。バイオマス開発が進めば市場に出回る食料が減り、価格が高騰することも考えられるのです。
こうした問題を解決するため、セルロース系原料の製造コストを下げることが強く求められていくでしょう。
バイオ燃料で目指すカーボンニュートラル
バイオマス燃料は、これまで捨ててきたものを有効利用してエネルギーを生み出します。温暖化対策としても効果的で、無駄のない燃料といえるでしょう。
ただ、エネルギーとして広く利用するには、コストや設備投資といった難しい問題もあります。いずれ製造コストを抑える技術が開発され、より効率的な循環型社会が実現できることを願うばかりです。
文・構成/HugKum編集部