共働き世帯の子供は「寂しい」?ワーママの子育てに後ろめたさは無用です!

今から20年ほど前までは、共働きしている家庭の割合は、共働きしていない家庭(専業主婦世帯)の割合と同じくらいでした。しかし15年ほど前から共働き世帯が増え、今では専業主婦世帯数を圧倒しつつあります。ただ、共働きとなると、子育て世帯であれば育児への悪影響が心配ですよね。「うちの子は寂しい思いをしているのではないか」「何か性格に悪い影響が出るのではないか」などと、根拠もなく不安を感じている人もいるかもしれません。

そこで今回は各種の論文など信ぴょう性のある情報を基に、共働きが与える子どもへの影響についてまとめてみました。

 

ご飯も1人…。共働き世帯の子供はやはり寂しいの?

共働きで子供を保育所や学童保育に長時間預けるなどしている保護者としては、「うちの子は寂しがっているのではないか」と、不安に感じていると思います。この「共働き=子供が寂しい」という親の不安、どこまで当たっているのでしょうか。

財団法人家計経済研究所『現代核家族調査報告書』という2008年の少し古い調査があります。同調査は率直に「母親が家事以外の仕事をすることに対する子どもの考え」を調べており、その結果が『母親の就業による子供への影響』という論文に引用されています。

「自分の母親が仕事をしているために寂しい思いをしている」と答えた子供の割合は、どの程度だと思いますか? 半分くらいがYesと答えたでしょうか。

結果は、わずかに10.6%。10年近く前の調査ですが、この10年で子どもの気持ちが変わったとは考えにくいです。結局、母親が働いても「寂しい」と感じる子どもは、1割程度なのですね。「家事を手伝わなければならないので困る・嫌だ」と答えた子どもも、15.8%にすぎません。親が考えているほど、子供は親の共働きに何も感じていないのですね。

 

共働き世帯の子供って性格に何か影響が出る?

では、共働きによって子どもの性格にも影響が出るのでしょうか? 共働きしている保護者の懸念としては、目の届かない時間が増えるため、何かネガティブな影響が子どもの成長に及んでしまうのではという点だと思います。

専業主婦と共働きの家では子供にどのような影響が出るのか?

この点に関しては過去にさまざまな研究・調査が行われています。例えば『家族社会学研究』第13巻2号に掲載された論文『母親の就業は子どもに影響を及ぼすのか』(末盛慶、2002年)には、先行研究として2002年までの国内外の研究を幾つか紹介されています。いずれも母親の仕事の有無と子供の身体的、精神的な成長には関係が確認できないとされています。子供が成長後しばらくしても、ネガティブな影響は確認できなかったと言います。むしろ共働き世帯で育った子供の方が、視線や視野が広くなるといった傾向が確認された研究もあるそう。上述した論文では、母親が働き続けながら育児をすると、子供の独立心が育つという傾向も確認されたのだとか。

なるほど、共働きは子供の成長に影響は与えない、むしろ与えるとしたらプラスの影響を与えると幾つかの研究でも確認されているのですね。「共働きを続けて子供の成長に悪影響が出たら……」と悩んでいる保護者からすれば、ちょっと一安心の情報です。

 

共働き世帯の子供の学力はどうなの?

学力についてはどうなのでしょうか。宿題などを見てあげる時間が少ない共働き世帯の保護者であれば、気になりますよね。例えば公文教育研究会が行った『家庭学習調査』を見ると、「家庭学習がうまくいっているか、あるいは家庭学習で悩んでいるか」との問いに対して、共働き世帯も専業主婦世帯も、回答結果に変わりがないと分かっています。つまり、共働き世帯であっても専業主婦世帯であっても、家庭学習の状況に大きな差はなかったのですね。

国立大学法人お茶の水女子大学『平成25年度 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究』を見れば、

  • 学校外教育支出や世帯収入の高さ
  • 保護者の最終学歴の高さ
  • 保護者自身の規則正しい生活や政治経済など社会問題への関心の有無
  • 子供の規則正しい生活習慣
  • しつけや人間形成に関する保護者の働きかけ
  • 子供と保護者の本や新聞を読む時間
  • 子供と一緒に親が美術館、博物館、図書館などの文化施設に行くかどうか
  • 子供がテレビゲームなどで遊ぶ時間を制限しているか
  • 子供に高い学歴を期待するかどうか
  • 子供の自立心やコミュニケーション能力の発達を重視するかどうか
  • 学校の教育目標を親が知ったり、学校からの情報提供に親が敏感になったりしているか
  • 授業参観や学校行事へ親が参加するか

といった問題の方が、学力に大きな影響を与えるとも分かっているみたいです。親の就業の有無は、関係ないのですね。

 

子供2人、3人でも共働きならどのくらい貯金がたまる?

今までは、共働き世帯が子供に与えるかもしれないマイナスの影響について、考えてきました。実際は何もなかったのですが、ここからは逆に共働き世帯が子供に与える(かもしれない)、プラスの影響を考えたいと思います。

共働きですから、端的に考えて世帯収入の増が予想されます。世帯収入の高さ、学校外教育支出の高さは、上述した『平成25年度 全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究』を見てもわかるように、子供の学力に影響を与えます。その意味で、むしろ学力にはプラスの影響が働く可能性もあるはずです。

総務省『平成29年家計調査』を見ると、夫だけが働いている世帯の平均教育費は収入の中で5.9%、共働き世帯は8.0%と、共働き世帯の方がより多く教育にお金を割いていると分かります。専業主婦世帯は平均世帯月収が502,839円で、共働き世帯は608,491円ですから、共働き世帯の方がより多く教育にお金を掛けられている状況になっています。

また、単純に考えて共働きの方が収入も増えるケースが多いため、預貯金も一般的に大きくなると考えられます。両世帯の可処分所得(自由になる黒字のお金)は、専業主婦世帯が月間で100,954円、共働き世帯が161,178円になっています。自由になるお金が多い分だけ、学資保険など教育関連の預貯金に回せる金額も変わってきます。共働き世帯は可処分所得が多い分だけ、教育費の高い私立の学校に(希望する・しないに関係なく)入学させられる金銭的な余裕も持てると言えそうですね。

 

共働きの家は子供の扶養や健康保険はどうなるのか

最後は余談ですが、共働きの家では、子供の扶養や健康保険は妻と夫のどちらに入れた方がお得なのでしょうか? 基本的には、

<被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、年間収入(当該被扶養者届が提出された日の属する年の前年分の年間収入とする。以下同じ。)の多い方の被扶養者とすることを原則とする>(社会保険各省連絡協議会『夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について』より引用)

とあるように、年収の多い親の扶養に入る形になり、健康保険も年収の多い親の保険に加入する形になります。そう考えると、現状では父親側の保険に加入するケースが少なくないはず。しかし、

<夫婦双方の年間収入が同程度である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とすること>(同上)

とあるように、夫婦の年収が同じくらいの場合は、妻が子供の扶養者として認められる可能性もあります。例えば夫が自営業者の場合、夫が扶養者になれば、子供は国民健康保険に加入する形になります。子供が国民健康保険に加入すれば、人数分だけ保険料の支払いも大きくなります。

一方で妻が会社勤務などで、会社の健康保険組合や、協会けんぽ(自社の健康保険組合を持たない中小企業の従業員対象)に加入している場合、子供が扶養に入っても、毎月の保険料の支払い額は変わりません。その意味で年収が同じくらい、夫が自営業者と言った場合は、妻の扶養に入れて妻の加入する保険に子どもも加入させた方がお得だと、一般的に考えられます。このあたりも細かく調べて、共働きの恩恵を存分に受けたいですね。

 

以上、共働き世帯と専業主婦世帯の違いが子供に与える影響をまとめました。共働き世帯であろうと専業主婦世帯であろうと、母親の就業は子供の成長に何も悪影響を与えないだろうと幾つもの調査が明らかにしています。むしろ世帯収入の増によって、子供の教育に費やせるお金が増える可能性もあります。母親の就業する姿は、子供の独立心や視野の広さを育む結果につながる場合もある様子。その意味で「私の仕事が子どもを寂しくさせているかも」といった理由だけで仕事を辞めようと考えている人が居れば、離職を考え直してみてもよいのかもしれません。

 

文/坂本正敬、写真/繁延あづさ

 

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