「子どものわがまま、どう考える?」幼稚園勤務歴20年の子育てプロ、平山許江先生が解説

Q.子どものわがまま、どこまで許す?どう考えればいい?

同じ行為でも、わがままかどうか人によって受け取り方が違うようです。わがままって、どういうこと?どう付き合うのがいいのでしょうか? 著書に『子育てはどたばたがよろしい』などがある平山許江先生にお伺いしました!

 

A.子供がだだをこねることは「わがまま」とは言わないのです

幼児は目の前の欲求を満たしたいだけで、ルールや周りに与える影響を考えない

自分の好き勝手にやりたいというのが、人間本来の姿でしょう。けれど、みんなが好き勝手にしたら社会が成り立ちませんから、決められたルールを守り、人に迷惑をかけないようにするのが、あるべき姿です。その、世間の9割の人が守っているルールを守らずに自分勝手にやったり、多くの人が迷惑するのに思いのままにやるのが「わがまま」でしょう。

2,3,4歳の年齢の子供はまだ、目の前の自分の欲求を満たしたいだけで、社会生活のルールとか、自分のしていることが周りに与える影響とか、考えません。「こうすべき」ということがわかっていないので、大人には「わがまま」に見えても、「わがまま」という言葉は当てはまらないのです。だからこそ、「すべきこと」を教えていく必要があります。

 

●子供の「しつけ」、どんなふうに教えたらいい?

「我慢」、「譲る」、「優しくする」を、時間をかけて根気よく

「我慢」を教える。

すべり台に乗ろうとした時、子ども達がズラリと並んでいたら、待たせるのは無理です。わずかな人数なら待てるので、すいている時にちょっとだけ待つ体験をさせましょう。そして「待てたね」とほめると、子どもは「待つとうまくいく」とわかります。

「譲る」を教える。

おもちゃを数多く独り占めしている子には、「10数える間、1個だけ貸して」と言い、10数えたら返すと、貸しても戻ってくると学びます。

「優しさ」を教える。

おやつの時など、「スプーン持ってきて。お兄ちゃんの分もお願いね」と言い、持ってきたら「お兄ちゃんのも持ってきてくれて、優しいね」と言うと、人のためになるってほめられることなんだ、と思うでしょう。

つまり、幼児期は、ちょっと我慢する、ちょっと譲る、ちょっと優しくするという、小さなステップを、時間をかけて根気よく経験させていくことが大事です。ついこの間まで好きにやれていたのに、「ダメッ」「順番でしょ」と急ブレーキをかけても、「なんで?」とギャップを感じるだけ。

「ほんの少し、やりたい気持ちにブレーキをかければ、うまくいくよ」と気づかせたい。それが「すべきこと」をわかっていく“入口”になります。

 

ママのリアルなお悩みに答えます。こんなとき、どうする?

イヤイヤ、抱っこ抱っこに困り果てて…

Q:3歳半の女の子。ぶかぶかのよそ行き靴を履きたがるので「こっちがいいよ」と別の靴を出しても「イヤ!」。結局、途中で歩けなくなり「抱っこ」。「だから言ったのに!」と叱っても「抱っこ!」。仕方なく抱っこして……。

A:お母さんが子どもに振り回されている姿が、目に浮かびますね。でも叱られても、子どもが平気で「抱っこ」と言えるのは、いざとなったら親が助けてくれるという知恵があるから。親を信頼している証拠です。そんな信頼関係が築けているのも、お母さんが日頃、本気で子育てしているからこそ。とてもいい親子関係です。

靴はおしゃれで、お気に入りなのでしょう。「そうだよね、履きたいよね」と、まず共感してあげて、「だけど、ぶかぶかで歩きづらいよ」とダメな理由を説明しましょう。それでも履きたがったら、履きやすい靴を隠し持って行き、子どもが「抱っこ」と言ったら「残念でしたぁ。ママはちゃんと履ける靴を持ってきたよ」と笑って履き替えさせるとか。

近所を走ったり階段を上ったりして、履きにくさを体験させるのも方法です。

 

 

ママ・パパへ平山先生から子育てアドバイス!

子供に親の都合を押しつけないで

子どもは親の思いどおりになると思っていると、言うことを聞かない時「わがままだ」と思うでしょう。でも、子どもは親の都合よくいくわけがない、と知ってください。また、我慢するのも頑張るのも子ども自身です。親が代わりにやってあげることはできません。

親の役割は、子どもが自分の力で生きていけるように、見守り、支え、時に助言し、勇気づけ、子どもを信じて任せることです。

 

子育て担当

平山許江 先生 

保育楽者
東京学芸大大学院への入学などをはさみ、幼稚園に20年勤務。大学教授を歴任し、現在、青木教育研究所所員。日々、保育の楽しさを探究中。著書に『子育てはどたばたがよろしい』(世界文化社)

イラスト/松木祐子 出典/めばえ

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