感情豊かな子どもの育て方。感情を表さなくなる原因やNG行動って?

泣いたり笑ったり怒ったり、子どもが感情を豊かに表現する様子は、とても微笑ましいものです。子どもの感情は、日常生活における人との関わりを通して育まれます。子どもを感情豊かに育てるポイントと、パパやママが気を付けたいNG行動を紹介します。

子どもはどのように感情を学ぶのか

生まれてすぐの赤ちゃんには、感情が備わっていません。しかし世話する人が話しかけたり、笑いかけたりするうちに、赤ちゃんはさまざまな感情を学び、表情で返すようになります。

おしゃべりが上手になる頃には、喜怒哀楽の使い分けもできるようになってくるでしょう。感情表現の方法を、子どもはどのようにして学んでいるのでしょうか。

生まれたばかりの赤ちゃんは笑わない

新生児は、お腹が空いて泣くことはあっても「笑う」ことはありません。微笑んでいるように見える赤ちゃんもいますが、生理的な反射によって口角が上がっているだけで、面白くて笑っているわけではないのです。

反射による笑顔が見られるのはほんの一瞬ですし、一度も見せないまま大きくなる赤ちゃんもたくさんいます。単なる生理現象なので、新生児が笑わないからと心配する必要はありません。

パパやママ、他の家族の表情を認識できるようになると、赤ちゃんも真似を始めます。笑顔を真似ると大人はうれしそうにしますから、赤ちゃんは「笑顔はうれしいこと」と理解します。

たくさん笑いかけてあげるほど、よく笑う赤ちゃんになるでしょう。

日常生活の中で表現力を学ぶ

乳幼児期の子どもは、日常生活の中で見聞きするもの全てに、心を動かされています。自分の心の動きを感情として表現したいとき、いちばん参考になるのが周りにいる人達です。

特に、毎日一緒にいる親の行動は、子どもの感情表現に大きな影響を与えます。

親や身近な人と話したり遊んだり、さまざまな関わりを持つことで、感情表現の大切さや上手に表現する技術を身に付けていくのです。

感情豊かな子どもを育てる方法

感情豊かな子どもを育てるためには、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。親としてできることを、具体的に見ていきましょう。

子どもの気持ちに応答する

感情は心の中に秘めておくだけでは、相手に伝わりません。感情豊かといわれる人は、自分の感情を上手に表現できる人といってもよいでしょう。

感情表現の方法を教えるためには、子どもの気持ちに「応答」する必要があります。例えば、公園で遊んでいる最中に、子どもが珍しい昆虫を発見したとします。

うれしそうに見せにきた子どもに、親が関心を持たなかったり「気持ち悪い」とそっぽを向いたりすると、子どもはがっかりして次からは表現するのをやめてしまうでしょう。

逆に「すごいね!」「どこで見つけたの?」などと一緒に喜んであげれば、子どもは自分の感情表現が間違っていなかったと確信できます。

こうした応答の積み重ねによって、子どもは自信を持って自分の感情を表現できるようになるのです。どんな小さなことでもよいので、常に子どもの気持ちに寄り添い、応答してあげるようにしましょう。

会話や読み聞かせで語彙力を増やす

感情を伝えたいのに、言葉を知らないためにうまく表現できないこともあります。

日常会話や絵本の読み聞かせを利用して、子どもの語彙力を増やしてあげましょう。覚えた言葉を、実際に使ってみる練習も効果的です。

例えば、急に激しい雨が降ってきたときは、単に「雨、すごいね」ではなく「土砂降りだね」「今外に出たら、びしょびしょになっちゃうね」のように具体的に話しかけます。

次に雨が降ってきたときや、絵本に雨のシーンが出てきたときに、「雨はどんな風に降っているかな?」「外にいる子はどうなっちゃうのかな?」と問いかけてあげましょう。

子どもは「土砂降りだから、びしょびしょになっちゃう!」「土砂降りじゃないけど、冬だから寒そう」など、覚えた言葉を使って自分なりに表現しようとします。

このような会話の繰り返しで語彙力が増え、感情を示す表現力も鍛えられます。

親が感情表現のお手本を見せる

子どもはどんなことでも、親をお手本にするものです。感情豊かな子どもを育てないなら、パパやママも子どもの前で自分の感情を表現し、お手本になってあげましょう。

ドラマや映画を見て泣いたり、理不尽なできごとに対して怒ったりと、親が感情を表す様子を見ていれば、子どもの表現力も豊かになります。

ただし人の悪口を言ったり、批判ばかりしたりするのは、教育上よくないため控えるようにしましょう。

子どもの気持ちに共感する

自分の気持ちに共感してくれる人がいるだけで、子どもは安心して過ごせます。他人とのコミュニケーションにも自信が付き、感情を素直に表現できるでしょう。

例えば、子どもがテレビの怖いシーンに怯えて泣いたときは、「たいしたことないじゃない」と軽くあしらわず「怖かったね。ママも怖いよ」と共感してあげましょう。

パパやママが共感してくれると思えば、子どもは思ったことをどんどん話すようになり、感情表現も上手になります。

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子どもが感情を表さなくなる原因は?

近年は感情をうまく表せない子どもや、表情が乏しく何を考えているのか分からない子どもも多いようです。なぜ感情を表せなくなってしまうのか、主な原因を見ていきましょう。

スマホやテレビなどを多用する

感情表現は、他者との関わりの中で育まれるものです。テレビやスマホの映像を見ているときは、子どもは一方的に情報を受け取るだけで、自分の気持ちには誰も応えてくれません。

反応がなければ気持ちを表現する意味を感じられず、上手な表現方法を学ぶこともありません。子どもにおとなしくしていてほしいとき、テレビやスマホはとても便利なツールですが、多用は禁物です。

親がスマホに夢中で、子どもの相手をしてあげないのも感情が乏しくなる一因です。話しかけてもうわの空で、応えてくれない状態が続けば、子どもは感情を表に出すのをあきらめてしまうでしょう。

人と関わる機会が少ない

昔は祖父母と同居していたり、近所との付き合いがあったりして、子どもの相手をしてくれる人がたくさんいました。園や学校のクラス以外の、歳が違う友だちと遊ぶ機会も多かったのです。

しかし現在は核家族化が進み、共働きの家庭も増えていることから、子どもが人と関わる機会は激減しています。

日中は保育園で過ごし、家に帰ってもパパかママのどちらかしかいないことも珍しくありません。

少し大きくなれば習い事や塾で忙しく、暇な日も決まった友だちと決まった遊びをするだけで終わってしまうでしょう。

いつも同じメンバーで過ごすのは楽な反面、多彩な感情表現を学ぶチャンスは少なくなります。

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感情豊かに育てるためのNG行動

子どもが感情を伸び伸びと表現するためには、親の適切な対応が欠かせません。感情豊かに育てるために、やってはいけない親の行動を紹介します。

子どもの感情表現を否定する

子どもはいつも、親の言うことを気にしています。何かに腹を立ててかんしゃくを起こしときに、「怒っちゃダメでしょ」と言われたり、面白いものを見せたのに「つまらない」などと言われたりすると、子どもは気にして、自由に感情を出せなくなります。

怒るのをやめさせたいのなら、一度怒っている理由を聞き出し、共感した上で解決方法を教えてあげましょう。くだらないことで子どもが面白がっていたら、「この子には面白いことなんだ」と受け止め、何がそんなに面白いのか教えてもらうとよいでしょう。

物事に対する感じ方は人それぞれですから、親子でも違う感情を持つのはあたりまえです。むやみに否定せず、子どもの感情を尊重することが重要です。

子どもに親の意見を押し付ける

子どもが感情を表現したくて、一生懸命に言葉を選んでいるときに、「こういうことでしょ?」と代弁するのもよくありません。

話を最後まで聞かず、親の意見や価値観を押し付けてしまうと、子どもは本当に言いたかったことを言えなくなります。何でも親に頼るクセがつき、自分で考えようとする意欲も低下します。

しっかりと話を聞いてから、もし意見が違う場合は「ママはこう思う」「こういう考え方もあるよ」と返してあげれば、子どもは自分の感情や意見に自信を持てるようになるでしょう。

豊かな感情を育むには親の関わりが大切

子どもの豊かな感情は生まれつき備わっているわけではなく、親を始めとする周囲との関わりによって形成されます。

地域ぐるみで子育てしていた昔とは違い、現在は人と接する機会はずいぶん減ってしまいました。それでも親の心がけ次第で、感情豊かな子どもに育てることは十分可能です。

子どもとコミュニケーションする時間をたっぷりと取り、感情表現のバリエーションを増やしてあげましょう。

文・構成/HugKum編集部

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