赤ちゃんに本をプレゼントする「ブックスタート」事業で、お住まいの自治体から絵本をもらったことのある方もいらっしゃるのでは。「ブックスタート」の選考委員を務めるJPIC読書アドバイザーの児玉ひろ美さんに、ブックスタートについて、また、今年から一新された「絵本リスト」から絵本をご紹介いただくと共に、赤ちゃん絵本を選ぶ上での目安を教えていただきました。
目次
「ブックスタート」は、絵本をひらく「体験」と「絵本」をセットで親子にプレゼントする活動
0歳児健診などの機会に、絵本をひらく「体験」と「絵本」をセットで親子にプレゼントする活動で、目的は赤ちゃんに絵本を読むこと(read books)ではなく、赤ちゃんが絵本を周囲の人と共すること(share books)にあります。
この活動は1992年にイギリスで始まり、日本では2000年の「こども読書年」に、広く紹介されました。活動主体は市区町村の事業として、多くが自治体の予算で賄われていますが、活動そのものは、図書館・保健センター・子育て支援担当課・地域ボランティアのなどが、赤ちゃんの幸せを願う気持ちを軸に運営されています。
ブックスタートは、自治体の事業として取り組まれており、2020年12月31日現在で、1066市区町村で実施されています。事務局となる部署や実施機会、対象月齢などは自治体ごとに異なります。
2021年から新リストになった「ブックスタート赤ちゃん絵本」
お子さんにプレゼントされる絵本をどのような視点や配慮をもって選択するかは自治体によって異なりますが、その選択肢にはNPOブックスタート作成の「ブックスタート赤ちゃん絵本」リストが活用されています。この秋、2021年度から3年間自治体に提供される新リスト30点が発表されました。
最初の10冊はこちらから↓
今回は、次の10冊を紹介します。
『ぎゅう ぎゅう ぎゅう』
おーなり由子/さく はたこうしろう/え 講談社
赤ちゃんの小さな手を、お母さんの手で包み込んで「ぎゅう」。おなかも包み込んで「ぎゅう」。おふとんもいっしょに「ぎゅう」。幸せな「ぎゅう」が続いて、読むごとに、 赤ちゃんとの愛着が深まります。
『くだもの』
平山和子/作 福音館書店
乳児さん向けおはなし会の定番のような絵本です。赤ちゃんの日常の中にある果物を、みずみずしく写実的に描きながらも、温かみがあり、赤ちゃんが手を伸ばします。「さあ、どうぞ」の言葉も優しく、親子でやりとりを楽しめます。
『ごぶごぶ ごぼごぼ』
駒形克己/作 福音館書店
赤ちゃんの好きなマル、明るい色、音を繰り返す楽しさ、そして、穴のしかけで構成された作品です。視覚、聴覚、触覚を刺激して、感覚的に赤ちゃんを楽しませてくれます。作者は世界的にも評価の高いデザイナーの駒形克己氏。
『さわらせて』
みやまつともみ/作 アリス館
「さわらせて」「いいよ」の穏やかなやりとりが、親子の触れ合いを促します。ちぎり絵で描かれた絵は、温かく柔らかな動物のイメージを膨らませてくれます。赤ちゃんの手をとり、言葉の示す位置に優しく触れさせてみましょう。
『じゃあじゃあ びりびり』
まついのりこ/作 偕成社
日本の赤ちゃん絵本の中で『いないいないばあ』に続く、赤ちゃん絵本のスタンダード。赤ちゃんの身近にある物と音が見開きに描かれていますが、ストーリー性はないので、好きなページから開いて楽しめます。
『だっだぁー』
ナムーラミチヨ/作 主婦の友社
まるで赤ちゃんと会話をしているような作品です。濁音、半濁音のくりかえしと、表情豊かな粘土細工が、赤ちゃんの視線をくぎ付けにすることでしょう。言葉に意味はないのですから、自由に、明るく、赤ちゃんと楽しみましょう。
『どうぶつのおかあさん』
小森 厚/作 藪内正幸/絵 福音館書店
動物を細部まで丁寧に描いた、他に代えがたい魅力的な作品です。最初は絵を見ながら話しかけてあげるとよいでしょう。赤ちゃんの成長に伴い、自然にさまざまな反応や言葉が生まれてきます。長い期間、親子で楽しめる絵本です。
『ととけっこう よがあけた』
こばやしえみこ/作 ましませつこ/絵 こぐま社
同名のわらべ歌を基調に、柔らかな雰囲気と色調で作られた絵本です。節をつけずにそのまま読んでも、わらべうたの世界観を赤ちゃんと楽しめます。巻末に楽譜もありますので、わらべうたを気軽に楽しんでみては如何でしょう?
『バナナです』
川端 誠/作 文化出版局
木になったバナナなど、さまざまな状態のバナナが描かれています。理解するのは、赤ちゃんがもう少し大きくなってからですが、「バナナです」という単純な言葉の繰り返しと、はっきりとした色の絵が興味をひきます。
『はなびどーん』
カズコG・ストーン/作 童心社
赤ちゃん絵本では珍しい花火の絵本です。花火を知らずとも、「どーん」という擬音語と美しい絵の組み合わせによる、聴覚と視覚への刺激が赤ちゃんの関心を惹きつけることでしょう。実際の花火を恐がる赤ちゃんも、これなら大丈夫。
赤ちゃんにとって絵本は、おもちゃと同じ。同じページばかりを見たがったら、満足するまで見せてあげてください
赤ちゃん絵本は、指先の発達が十分ではない子どもにも扱いやすいよう、厚めのボール紙が使われ、角は丸くカットされています。なかには、なめたり、かじったりしても安全な食材による紙と染料を用いているものもあります。0歳の赤ちゃんにとって、絵本は「本」というよりも「おもちゃ」のような存在なのです。
めくることが楽しい。パタパタするのがおもしろい。この「楽しい気持ち」が絵本への入り口です。同じページを見たがるのも、珍しいことではありません。「お気に入り」のページを見つけたとしたら、それはとてもステキなこと。
「○○ちゃんは、これが好きなのね」と声をかけ、満足するまで見せてあげてください。
教えてくれたのは
JPIC読書アドバイザー 台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。鎌倉女子大学短期大学部非常勤講師など、幅広く活躍。近著に『0~5歳 子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。