「親の期待に応えなくていい」という、一風変わったタイトルの本をご存知でしょうか? 筆者(この記事の)は、4歳の娘を持つ父親で「子どもに期待なんてしていない」とずっと思っていました。
しかしながら、中学生・高校生とその親向けに書かれているYouthBooks(ユースブックス)シリーズの『親の期待に応えなくていい』という本を読んでハッとしたのです。娘にどうしても野菜を食べてほしいとき、食べたら喜び、食べなかったらため息つきながらがっかりした顔をしていたことを思い出したから……。これこそ「親の期待」ですよね。これを無言の命令というそうです。
筆者はこのやり方でいいのか分からず、モヤモヤしながら子育てをしている部分がありました。今回この本を通して、パパ目線で子育ての悩みを解決してくれた!と思ったことを紹介します。
YouthBooks(ユースブックス)シリーズとは
YouthBooks(ユースブックス)シリーズは、中学生・高校生とその親向けに書かれていますが、小さいお子さんを持つ親御さんが読んでも、ご自身の子育てのヒントを与えてくれる本だと思います。
著者は日本を代表する、錚々たる作家達
多感な10代向けに向けて、幸せに生きるための指針をわかりやすく綴ったシリーズで、2021年4月に4冊同時に発売されました。
帯イラストは「YOASOBI」のMV制作等の、藍にいなさん
「夜に駆ける」が大ヒットした、YOASOBIのMV制作等で話題の漫画家・アニメーション作家の藍にいなさんによる書下ろしの帯イラストも必見!
優しいタッチと独創的な色使が印象的なイラストです。
動画もチェック!
「言葉は難しい。」というフレーズで始まる、藍にいなさんの素敵なアニメーションも併せてご覧ください。
『親の期待に応えなくていい』の著者は
筆者は『親の期待に応えなくていい』を読んで、「知らないうちに、子どもに期待をかけて苦しめていた……!」と、読んだ後に、今までの子育てを振り返ることになりました。
著者は、鴻上鴻上尚史さん。作家・演出家として活躍されているだけではなく、筆者はTVやオンラインメディアでの活躍も印象的です。
鴻上さんといえば、NHK BS1の「COOL JAPAN」で番組のMCとしての語り口が印象的です。鴻上さんだからこそ、幸せ・親子・子育てのような多様性に溢れる、難しいテーマに対し、広い視野を持って独自の切り口で語っていると思っています。
また、オンラインメディア「AERA dot.」では、連載「鴻上尚史のほがらか人生相談」があり、毎回面白いのです! こちら読者からの反響が大きかったことから、書籍化され発売後すぐに重版となったそう。
鴻上尚史さん
作家・演出家。「朝日のような夕日をつれて」(1987)で紀伊國屋演劇賞、「スナフキンの手紙」(1995)で岸田國士戯曲賞、「グローブ・ジャングル」(2010)で読売文学賞戯曲・シナリオ賞などを受賞。また、『COOL JAPAN』(NHKBS1)などのテレビ出演、旺盛な執筆活動でも知られる。主な著書に、『「空気」と「世間」』(講談社現代新書)、『「空気」を読んでも従わない』(岩波ジュニア新書)、『鴻上尚史のほがらか人生相談』(朝日新聞出版)、『同調圧力』(講談社現代新書)、『何とかならない時代の幸福論』(朝日新聞出版)など。
影響を受けた言葉とは
ここからは、この本を読んで、特に筆者の心に刺さった箇所を3つに絞って紹介します。
「落とし所」を見つける関係
「コミュニケーション能力が高い人材が欲しい」、「あいつはコミュ障」だとか、コミュニケーションの話題って何かと多いですよね?
ただ、コミュニケーション能力とは具体的に何って聞かれると答えるのが難しくないでしょうか。これまで、私は「周りともめごとを起こさず、円滑に物事を進める人」がコミュニケーション能力の高い人だと考えていました。
しかし、鴻上さんは、コミュニケーション能力の高い人は「もめた時に何とかできる能力がある人」と述べています。
何事も真剣になればなるほど、もめますよね。そのときに、落とし所を見つけ、何とかする人は、コミュニケーション能力が高く、できる人だと納得しました。
親子は、接している時間が長く、切っても切れない関係です。だからこそ、親も子もお互いのことを真剣に考えて、それでもめごとが起きるのではないでしょうか。親子も、もめたときこそ本当のコミュニケーションをし、落とし所を見つけられれば素敵ですよね。
同調圧力=無言の命令
筆者気づかぬうちに、これやっていました。
言語化する必要がないので、無言の命令ってラクなのですよね……。
このページを読んだとき、娘が無理して苦手な小松菜を食べむせたのを思い出し、ひどいことしちゃったなぁ、と反省しました。
言葉が通じにくい乳幼児の親御さん、口答えする小学生にうんざりする親御さんに、とても良いアドバイスが詰まっており、この辺りのページはぜひ読んでもらいたいと思いました。
「エンパシー」=相手の気持ちに共感する能力
「エンパシー」という言葉、ご存知でしょうか?
初めて聞く方もいるのではないでしょうか。
「エンパシー」は、相手の立場に立ってものを考え、共感する能力のこと。考えてみたら、これこそコミュニケーションの基本ですよね。そんなの知っているよ、と思われるかもしれませんが、自分のお子さんの立場にたって物事を想像できていましたか? 知らず知らずのうちに、お子さんを支配しようとしていませんか?
かくいう筆者は子どもの思いを理解しようとせず、つい自分のやり方を押し付けがちでした。振り返れば子どもが嫌がっている時もありました。
親が子どもに、いつもエンパシー(相手の気持ちに共感する能力)を発揮すれば、素敵な親子関係が築けますよね。親子関係にも「エンパシー」がとても大切なことを教えてくれました。
中学生・高校生向きだから読みやすい
今回は、『親の期待に応えなくていい』のごく一部をご紹介しました。ほかにも、筆者の心に刺さった言葉は「親の人生が充実すると、子どもが幸せになる」や「世間と社会の違い」などの部分。
このYouthBooks(ユースブックス)シリーズは、中学生・高校生向きだからこそ、とても読みやすく、多くのことを考えさせてくれます。
具現化できなかった子育てのモヤモヤを晴らしてくれる一助になりましたので、乳幼児や小学生のお子さんをもつ親御さんの参考にもなるのではないでしょうか。
温かな人生相談回答でも話題の著者が、日本独特の「同質性」「世間」のありようを説明、ユーモアを散りばめながら鋭い切り口で、子供たちに「自分らしく生きていい」というメッセージを綴ります。親子で必読、目から鱗の一冊です!
文/峯あきら