誰かと会話を交わす際は、心地よいコミュニケーションを心がけたいものです。本題に入る前に「クッション言葉」を添えれば、相手に思いやりを示すことができ、印象がより柔らかくなります。シーン別のクッション言葉と使う際の注意点について紹介します。
クッション言葉とは
ビジネスシーンや日常生活で何か頼みたいことや聞きたいことがあるとき、どう伝えれば相手を不快な思いにさせないか悩んだことはないでしょうか。
心地よいコミュニケーションでは「クッション言葉」が大切です。まずは、クッション言葉がどんなものなのかを見てみましょう。
本題の前に添える言葉
「クッション言葉」とは、本題に入る前に一言添えて、思いやりや気遣いを示すものです。
例えば、ものを取ってもらいたいときに「〇〇を取ってください」だけだと、あまりにもぶっきらぼうな印象を与えます。
そこで「お手数おかけいたしますが、〇〇を取っていただけますでしょうか?」とクッション言葉を添えれば、丁寧な印象になり、相手への気遣いも伝わるはずです。
クッション言葉を使えば頼みたいことや聞きたいことがあっても、相手を不快にさせるリスクを減らせます。
心地よいコミュニケーションを図れるよう、相手にすんなり受け入れてもらえる表現を選びましょう。そしてクッション言葉をマスターすれば、さまざまなシーンで役に立ちます。
クッション言葉を使うメリット
クッション言葉を使うことに慣れていない人は「話すだけで気疲れしてしまう…」とデメリットに目が向いてしまうかもしれません。
しかし、クッション言葉にはさまざまなメリットがあり、使いこなせるようになれば、コミュニケーションがもっと円滑になるはずです。
「自分は頼み事が下手だ」「失礼のない対応を心がけたい」と思っている人にこそ知ってほしい、クッション言葉の効果を紹介します。
印象が柔らかくなる
クッション言葉の最大の魅力は、印象が柔らかくなる点です。
例えば、店員が「こちらの商品は売り切れました」とだけ伝えてきたら、冷たい印象を受けるのではないでしょうか。
しかし「大変恐縮でございますが、こちらの商品は売り切れてしまいました」とクッション言葉を添えれば、お詫びする気持ちや申し訳なさ、丁寧な印象などを与えます。
相手に悪気がなくても、言葉が足りないとぶっきらぼうなイメージを与えてしまうものです。
長い付き合いのある親しい人との日常会話なら、気兼ねなく話してもよいかもしれませんが、仕事での言葉選びとしては物足りなさを感じます。
特に上司や先輩、お客様との会話なら、きちんと配慮したいところです。本題の前にクッション言葉を添える余裕は持っておくとよいでしょう。
ビジネスが円滑に進む
接客業でなくとも、仕事をするときは多くの人と関わりを持つでしょう。そして、時には自分の主張を通したいこともあるはずです。
しかし、単に自分の意向を示すだけでは、相手の気持ちをくみ取っているとは言えません。
そんなときにクッション言葉を添えると、相手は素直に受け入れてくれるかもしれません。人間には感情があるので、気遣いを感じると「仕方ないか」と思うこともあるのです。
意見が対立したときや気まずい雰囲気なときこそ、クッション言葉を意識して取り入れ、相手の気持ちを緩和させましょう。
シーン別のクッション言葉
それでは、シーン別のクッション言葉を紹介していきます。言葉はさまざまな経験の中で自然と身につくものですが、これまで出会ったことがないクッション言葉もあるかもしれません。
バリエーションを持って、場面に最適なクッション言葉を使えるようになりましょう。
頼み事をするとき
頼み事をするときは「恐れ入りますが」「差し支えなければ」「お手数をおかけいたしますが」「お忙しいところ恐縮ですが」「失礼ですが」などの言葉を選ぶと、相手に不快感を与えにくくなります。
例えば、「お名前を教えてください」と言うよりも「恐れ入りますが、お名前を教えていただけないでしょうか」と伝える方が丁寧な印象を与えます。
中には頼み事が苦手な人もいるでしょう。しかし、相手が心地よく承諾できる伝え方をすれば、依頼をすることに抵抗を持つ必要はありません。
質問したいとき
質問したいときは「お尋ねしてもよろしいでしょうか」「お教えいただきたいのですが」といったクッション言葉を使います。
忙しい人に話を切り出すのは勇気が必要です。とはいえ、自分では判断できないことや分からないことであれば質問せざるを得ません。
タイミングを見計らい、低姿勢な態度でこれらのクッション言葉を添えると、相手の負担を和らげられるはずです。
断りたいとき
断りたいときに使いたいクッション言葉は「申し訳ございませんが」「恐れ入りますが」「あいにくではございますが」「せっかくですが」「誠に申し上げにくいのですが」などです。
相手からの依頼を断るときは、ストレートな物言いだと角が立つこともあります。その相手に自分が依頼することもあるかもしれないので、良好な関係を築いておきたいところです。
クッション言葉を添えつつ、申し訳なさそうな声のトーンや表情などを加えるとなおよいでしょう。言葉を間違えると不快感を与えたり、失礼になったりしてしまうので、意識して柔らかい表現を選びましょう。
反論したいとき
なるべき衝突は避けたいところですが、時には意見が対立することもあります。
そんなときは「おっしゃることは分かりますが」「確かにその通りでございますが」「ご意見なるほどとは思いますが」といったクッション言葉を使います。
相手の意見を肯定する言葉を添えてから、自分の意見を伝えることにより、耳を傾けてもらいやすくなります。反論するときは、言い合いではなく対話を心がけましょう。
報告や説明をするとき
報告や説明をするときは「おかげさまで」「誠に勝手ながら」「ご心配いただきましたが」「大変申し上げにくいのですが」「誠に恐れ入りますが」といったクッション言葉がおすすめです。
例えば、休暇を取りたい場合に「お休みさせていただきたいです」だけでなく「誠に勝手ながらお休みをいただきたいです」と一言添えれば丁寧さを感じるでしょう。
シンプルな報告や説明だけでは、相手に冷たい印象を与えかねません。より詳細に気持ちを伝えるために、クッション言葉は役立つのです。
クッション言葉を使うときの注意点
最後に、クッション言葉を使うときの注意点を紹介します。不自然な使い方は印象を悪くしてしまうため、使用頻度や使うシーンには特に気を付けましょう。
多用し過ぎるのはNG
クッション言葉を多用するのはNGです。
例えば、接客中に「恐れ入りますが」や「申し訳ございませんが」を乱用すると、マニュアル的で気持ちが込められていないと思われてしまいます。
使う言葉の意味をきちんと理解して、セリフのように使わないことも意識してみてください。
自分では丁寧な表現にしているつもりでも、クッション言葉を使い過ぎたことによって、雑な対応だと思われてしまうこともあります。
不必要な謝罪はしない
謝罪を意味するクッション言葉を、必要以上に使わないことも大切です。
例えば、「お手数をおかけいたしますが」と言うべきところで、「申し訳ございませんが」というクッション言葉を使うのは避けたほうが良いでしょう。
当たり前に確認を行うべきタイミングで「申し訳ございませんが、ご確認よろしくお願いいたします」と謝るような言い方をする必要はありません。
「お手数をおかけいたしますが、ご確認よろしくお願いいたします」で十分配慮されています。
正しいクッション言葉で良好な関係を築こう
シンプルでストレートな表現は、時に相手を傷つけたり、冷たい印象を与えたりしてしまいます。
一度根付いたネガティブ印象は変えるのが難しいので、コミュニケーションでは「クッション言葉」を添えることを意識してみましょう。
本来なら相手を思いやる気持ちがあれば、自然と発せられるものです。正しく適切な使い方で、良好な人間関係を築きましょう。
文・構成/HugKum編集部