連載「子どもの未来を想う人に会いに行く」Vol.3 本田技研工業株式会社 坂実沙子さん
子どもの交通事故が一番多いのは何歳か、ご存知ですか? 実は新1年生になる7歳が最も多く、「魔の7歳」という言葉もあるほど。特に、学校生活に慣れてきた5月、そして夕どきに暗くなり始める10月に事故率が増加します。
そんな悲しい事故を少しでもなくしたいと、自動車メーカーの本田技研工業株式会社(以下Honda)が作ったのが「肩にかけるおまわりさん まもってトート」。子どもの交通安全に役立つだけでなく、周囲のドライバーにも注意を促す、暗闇でおまわりさんのように光るトートバッグです。
「まもってトート」を企画したHonda広報部・坂実沙子さんにお話を伺いました。
本田技研工業株式会社 ブランド・コミュニケーション本部 広報部 企業広報課 主任
坂実沙子(さかみさこ)/2004年 本田技研工業株式会社入社。部品調達部、経営企画部を経て、2011年から広報部。日頃は先進技術や新事業などを中心に、Hondaの企業活動全般の発信を担当。2019年秋の交通安全運動に合わせて、「まもってトート」を使った交通安全発信を実施した。小学2年生と保育園年長の二児の母。
「魔の7歳」子どもの交通事故を減らすためにできること
「まもってトート」の目的はドライバーから見つけてもらうこと
――「肩にかけるおまわりさん まもってトート」を作ろうと思ったきっかけは?
坂実沙子さん(以下敬称略):社内で、子どもの交通事故死傷者数のグラフを見る機会がありました。年齢別の死傷者数のグラフを見ると、“7歳”がすごく多いんです。
――そうなんですね! 知らなかったです。
坂:このとき、息子がもうすぐ年長になるタイミングで、毎日必ず交差点で「止まりなさい」などと教えてはいましたが、まさかこんなにも7歳の死傷者が多いとは知らなくて。
これはもしかして、あまり世間にも知られてないことなんじゃないかな、と思い、これを伝えることによって、もっと家で交通安全教育をしていただきたいし、ドライバーのみなさんも子どもを見たら安全運転しようって思っていただきたい。このことについて情報発信していこう、と思ったのがきっかけです。
――そうしてプロジェクトを立ち上げたんですね。
坂:もともと広報部で新しい発信をしようというプロジェクトがあり、そこにみんながいろんなテーマを持ち込んでチームが編成されて発信していく、ということをやっていました。そこで私が「7歳の安全を伝えていきたい」というテーマを持ち込み、そこにいたメンバーが集まってくれてチームでやっていくことになりました。メンバーはみんな子どもを持つ親です。
――最初からトートバックを?
坂:まず、この情報を発信しようと思ったときに、ただ発信しても伝わらないな、と。どうしたらみなさんの心にとどまる情報発信ができるんだろうと考えたときに、何かフックになるものが欲しいと思いました。チームで検討していく中で出てきたのが、トートバッグという案です。
子どもの歩行中の事故は何月が多いかというと、5月と10月なんですね。特に10月に一番多くなります。その理由は、日暮れが早くなるからなんです。そうすると、ドライバーから見つけてもらいやすくなる何かがいいね、ということになって、反射材を身に着けるのがいいだろうと。
また、運転しているとときどき見かける、おまわりさんに見える看板ってありますよね。あれを見るとドライバーはアクセルをゆるめませんか? そういう実体験があって、それなら反射材を使って、おまわりさんみたいに見えるのはどうかということになりました。
――“身に着けるおまわりさん”ですね。こだわりは?
坂:子どもはどちらを表にしてバッグを持つかわからないので、どちらを表にしても反射材がしっかりついているようにしました。そして、小学校1年生の子が肩にかけて、ランドセルと一緒に持って負担がない重さであること。中には体操着などを入れたりすると思いますが、そういった必要なものが入るサイズ。あとは、ネームタグは内側に、といったところです。
――デザインの部分では?
坂:見た目がかわいい、かっこいい、持ちたいな、と思ってもらわないといけないので、そういうデザインになるように心がけました。実際、子どもたちからは「かっこいい」「かわいい」といった声をいただいています。大人からも「私が持ちたい」と言っていただいたり(笑)。
公式サイトでは作り方を公開!自分でも簡単に作れる
――軽いのにしっかりした生地です。
坂:バッグを持ったときに“へにょん”となってしまうと、おまわりさんに見えないんですよ。なので、耐久性があって重すぎず、形がしっかり出るようにと、帆布でもある程度厚みがあるものを選んでいます。
――公式サイトでは、作り方を公開されていますね。
坂:2019年9月の交通安全運動のときにこのトートバッグを作ったのですが、当初は数量限定の無料配布品だったんです。手に入らない方がたくさんいるということがわかっていたので、作り方を公開しました。
それに、これを売りたいのではなく、反射材を使って少しでも安全になる子どもが増えればいいなという想いで始まったことなので、ぜひおうちでも作ってほしいなと。
――簡単に作れるんですか?
坂:作り方によるんですが、テープタイプの反射材が手芸屋さんなどに売っているんですね。そういった貼るタイプであれば、お子さんでもあっという間に作れますよ。
日頃使っているバッグに反射材を貼るだけでも効果はあると思います。