いずれはHonda製品による交通事故の死者をゼロに
ソフトとハードの両面から交通安全対策に取り組む
――今後の取り組みについて教えてください。
坂:Hondaは、交通安全・安全運転についてソフトの面とハードの面から取り組んでいます。
ソフトの面では、今後も歩行者・ドライバーへの交通安全教育にしっかり取り組んでいくということですね。安全運転普及本部の活動は長年継続しており、今後も活動を継続していきます。
我々は広報部なので、交通安全の時期には必ず発信をしていますが、継続して発信し、伝えていくということが大事だと思っています。
――ハードの面では?
坂:人が車とぶつかった場合にどうやったら人のダメージを減らせるか、ということで、自社でダミー人形を開発して実験したり、天候に左右されずに実験ができるように2000年に世界初の全天候型の衝突実験施設を作ったりと、とにかく安全技術には力を入れています。
事故を防ぐための予防安全技術にも力を入れており、今年3月には世界初となる自動運転レベル3の技術を搭載した車を発売しています。自動運転の技術はレベル分けされていて、レベル3からはシステムが運転の主体になるんですよ。現在、他社から発売されている車はレベル2というもので、運転の主体はドライバーです。レベル3を発売したのは世界初です。
ただ、すぐにすべての車が自動運転になる時代が来るわけではないので、今後発売する車に自動運転の知見を基にした、より高度な安全運転支援技術を入れていきます。車の360度全方位に対応できる安全運転支援技術の開発を進めて、2030年には先進国で販売する4輪車の全モデルに適用していこうとしています。
さらに、もっと高い目標でいうと、2050年にはHondaの製品が関連する交通事故の死者をゼロにしようという目標を掲げています。
――死者ゼロ! 頼もしい目標ですね。
坂:Hondaって、高い目標を掲げて「無理じゃないか」と思われつつもそこに挑むことで乗り越えるような社風がありまして(笑)。
バイクメーカーでまだ車を作っていない時代に4輪のF1で優勝するという目標を掲げて、それを達成したり、誰もがクリアできないと言ったアメリカの大気汚染防止のための法案もクリアしてきました。そういう高い目標を掲げてチャレンジする会社です。
2050年に交通事故死者ゼロという高い目標は、背景に今までの安全技術の開発の取り組みや、地道な交通安全普及活動があるからこそ出てくるのだと思います。
また、どうやったら交通安全に貢献することができるんだろう、という意識が社員みんなの中に常にあるから、ふとしたきっかけでそれを形にしようという人たちが現れて、それが「まもってトート」や「ロポット」にもつながっているのかな、と思います。
取材・文/小林麻美 カメラ/黒石あみ 構成/HugKum編集部
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