『めしべ』とは? おしべとの違いや役割、受粉の仕組みについて解説【親子でプチ科学】

「めしべって何?」と子どもに聞かれたら、正しく答えられますか?  この記事では「めしべ」とは何か、「おしべ」との役割の違い、花の受粉について解説します。さらに、おしべとめしべがない花や植物も取り上げます。

めしべって何?子どもに聞かれたら答えられる?

めしべ
「めしべ」とは何なのでしょうか?

 

「花にはめしべとおしべがある」ことは知っていても、子どもに「めしべって何?」と聞かれたら、正しく説明することはできますか?  まずは、花にとって重要な存在である「めしべ」について、その役割やおしべとの違いを見ていきましょう。

めしべとは

めしべは、種子植物の花の中にある生殖器官です。子どもにわかりやすく説明するとしたら、「花粉がついて、タネになるところ」と説明するとわかりやすいでしょう。

種子植物とは、種子、つまりタネを作って増える植物のことで、植物のほとんど(約8割)が種子植物です。ちなみに残りの約2割はタネを作らない植物で、シダ植物とコケ植物があります。つまり、身近な場所で見られる植物はほぼ種子植物と考えてよいでしょう。たとえばチューリップやたんぽぽはもちろん、桜やスギなどの木も種子植物です。

種子植物の花は、次の4つの部分からできています。

  • がく:つぼみのときに、花の内側を包んで守ります。花が咲いた後は、花びらを支えます。
  • 花びら(花弁):花の種類によってカラフルな色がついています。
  • めしべ:花粉がつくと将来種子(タネ)になります。
  • おしべ:花粉を作ります。

つまり、種子を作る植物には必ずめしべとおしべがあり、めしべは花粉がつくと、種子を作る器官のことを言います。

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めしべとおしべの役割と違い

花は先に紹介した4つの部分からできています。タネをつくるために重要になるのが「めしべ」と「おしべ」です。

めしべとおしべの総称

「めしべ」と「おしべ」はセットで考えられることが多く、この2つを総称して「花蕊(かずい)」あるいは「花心・花芯(かしん)」と呼びます。一方、残りの「がく」と「花びら」の総称は「花被(かひ)」と呼びます。

花蕊(あるいは花心・花芯)」は花の内側部分、 花被は花の外側部分にあたります。

めしべの構造と役割

めしべは、さらに次の3つの部分からできています。

  • 柱頭(ちゅうとう):めしべの先端部分。花粉がつきやすいようにザラザラしています。
  • 子房(しぼう):めしべの根本の膨らんだ部分。将来種子になる部分。
  • 花柱(かちゅう):「柱頭」と「子房」をつなぐ柱状の部分。

風や虫によって運ばれた花粉が、めしべの先端にある「柱頭」につくと、子房が膨らみます。この膨らんだ中にタネができるのです。

めしべに花粉がつかなければ、タネはできません。虫をひきつけて、花粉がめしべにつきやすくするために、花はカラフルな色がついています。

おしべの構造と役割

おしべは、次の2つの部分でできています。

  • やく:おしべの先端部分。袋状になっていて、中に花粉が入っている。
  • 花糸(かし):やくを支える棒状の部分。

やくの内部で花粉が作られ、袋の中に花粉がたまっていきます。そして十分に成熟して最適な時期が訪れると、やくが破れて中に入っていた花粉が外に飛び出します。

めしべとおしべの違い

めしべは花粉を受け取る部分であるのに対して、おしべは花粉を作る部分です。

めしべは将来種子になる部分を持っていて、種子を作ることができることから、人間でいえば、女性のような役割があります。一方、おしべは人間では男性のような役割があります。

めしべとおしべは、どちらも次の世代に命をつなぐために欠かせない大切な役割を持っています。

受粉とは

受粉は、植物が次の世代を残すために、とても大切なプロセスです。「受粉」とは何か、受粉では「めしべ」と「おしべ」がどうなるのかを説明します。

受粉:めしべに花粉がつくこと

めしべの先端に花粉がつくと、種子ができると説明しました。めしべに花粉がつくことを「受粉」と言います。

そして受粉は「自家受粉(じかじゅふん)」と「他家受粉(たかじゅふん)」に分けることができます。

自家受粉

自家受粉とは、同じ花のめしべとおしべで受粉することを言います。自家受粉する植物の代表例は、アサガオです。

アサガオはつぼみのときは、おしべはめしべより短いのですが、成長とととにおしべがめしべより長くなり、最後はおしべがめしべに触れて花粉をつけ、受粉します。

アサガオの花が咲いている時間はとても短いですが、その間に自家受粉して種子を作り、次の世代に命をつないでいきます。アサガオ以外には、トマト、イネ、ムギなども自家受粉を行います。

自家受粉は、虫や風に頼らずに受粉できるため、受粉が成功する確率が高いというメリットがあります。その一方でデメリットとしては、1つの花同士で受粉するため、遺伝子の組み合わせのパターンがあまり増えないことがあげられます。つまり次の世代も同じような性質の花になり、万一、環境の変化などが起きた場合、変化に適応できない可能性もあります。

他家受粉

自家受粉に対して、花粉が他の花のめしべに受粉することを「他家受粉」と言います。他家受粉では、花粉をおしべから別の花のめしべに運んでもらう必要があります。

その手段となるのが、虫や風です。色とりどりの花びらや蜜の甘い匂いで虫に花の存在を知らせます。花の蜜や花粉は虫を食べ物になる一方で、虫の体についた花粉は虫と一緒に他の花に移動し、そこでめしべに受粉します。

また風にのって花粉が飛んでいき、別の花のめしべに受粉することもあります。

他家受粉は自家受粉に比べると、受粉の成功率が低く、虫や風などの力を借りなければ受粉できないというデメリットがあります。

しかし、異なる環境で育った花のめしべに受粉することで、遺伝子の組み合わせが増えていき、花の性質が多様になっていくというメリットがあります。つまり、花全体としては、さまざまな環境にも対応できるようになり、生存競争を勝ち残る可能性が高くなるわけです。

自家受粉と他家受粉の植物を比べると、他家受粉のほうが多く、植物の生き残り戦略の一端を知ることができます。

おしべとめしべがない花や植物

花は、「がく」「花びら」「めしべ」「おしべ」の4つの部分でできていると紹介しましたが、植物のなかには、この4つがすべて揃っていないものもあります。4つのうち、どれかが1つでも欠けている花を「不完全花(ふかんぜんか)」と言います。

一方、4つがすべて揃っている花を「完全花(かんぜんか)」と呼びます。

単性花

不完全花の中で、めしべとおしべのどちらか一方しかない花を「単性花」と呼びます。

そして、めしべがあって、おしべがない花を「雌花(めばな)」。めしべがなくて、おしべがある花を「雄花(おばな)」と呼びます。

単性花の代表的なものは、ウリ科の植物(ヘチマ、キュウリ、ゴーヤ、カボチャなど)、トウモロコシなどがあります。

キュウリの花

両性花

単性花とは逆に、めしべとおしべがそろっている花を「両性花」と呼びます。つまり完全花は両性花になります。

身近な花を観察してみよう

身近なところに咲いている花、ときには子どもと一緒に、近づいて、じっくり観察してみてはいかがでしょうか。

学校の授業では、めしべとおしべについては小学校5年生の理科の時間で学習します。事前に無理のない形でめしべやおしべのことを理解しておくと、授業をより興味を持って、楽しく受けられるかもしれません。

文・構成/HugKum編集部

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