香典袋の水引に『黄白』を使う地域は?祝い事や弔事に使う「のし袋」に込められた意味

結婚式などのお祝い事やお葬式などの弔事に使用するのし袋。冠婚葬祭にお金を贈る日本特有の慣習に用いられるものです。「のし袋の「のし」って何?」「水引はある地域では色が違う?」など知っておいて損はない大人のための基礎知識をお伝えします。

「のし袋」の「のし」って何?どんな意味があるの?

のし袋の「のし」って何なのか、みなさんはご存知ですか?

祝儀袋の右肩にちょこんと何かが包まれたような飾りがありますね、あれが「熨斗(のし)」です。「熨斗」とは、「のし」とは「熨斗鮑(あわび)」の略です。「方形の色紙を細長く六角形にひだをつけて折りたたみ、中に熨斗鮑(あわび)の細片を包んだもの。祝儀などの進物に添える」(「大辞泉」)とあるように、昔はあの中に鮑が包まれていたんです。今では黄色い紙を鮑に見立てたり、絵や文字で代用されたりしています。

熨斗

 

縄文時代の貝塚から出土しているように、鮑は古くから親しまれていました。伊勢神宮では2000年以上も前から熨斗鮑が献納されており、戦国時代の出陣の際に執り行われる「式三献の儀」では勝栗と昆布とともに熨斗鮑は三方に載せられ、武将たちは酒を飲みこれらをつまんでは勝利を願いました。

あわびは貴重な食材で不老長寿の象徴として慶事に用いられました

 

さて、熨斗とは「伸し」と同じ語源で、「熨」は熱を加えてのばす、「斗」は柄杓を表します。電気アイロンが普及する前に使われた道具「火熨斗(ひのし)」は柄杓の形状をした金属製の器に炭火を入れ、衣類の皺を伸ばすために使われていました。熨斗にはこの慶びが長く続くように、そして大切なひとの寿命が長く続くように、という意味が込められています。

 

 弔事用ののし袋に「熨斗」がないワケ

さて、弔事用ののし袋には「熨斗」はありません。弔事(仏教)では、生ぐさものを断つ、引き伸ばしたくないという意味から熨斗は付けないのです。

一昔前までお葬式といえば、焼香用の香を自ら準備して出向くものでした。いつしか喪主側が香を準備し、参列者はその代金として金銭を包むようになりました。この香典袋が祝儀袋と合わせて「のし袋」と呼ばれるようになったのです。

 

弔事用ののし袋の水引が「黄色と白」なのはどこ?

京都で用いられる弔事用の「のし袋」の水引は「黄白」

のし袋といえば、中央にある飾り紐の水引にも注目。色の種類は慶事なら紅白、金銀、赤金、弔事なら白黒、双銀などがありますね。しかしある都道府県では、弔事用の白黒が基本ではない地域があるんです。

それは京都の黄白の組み合わせ。

 祝儀や不祝儀にも使う白は古くから清浄で神聖の色とされてきました。また慶事に使う赤は太陽や火の色、そして人間の血つまり命の色。陰の白と陽の赤が結びつくことによって陰陽和合となり、互いが影響しあってより良い結果を生み出すということで、祝儀用の水引は赤白(紅白)が使われます。

 

 水引の色に「格」が表されている

高貴さ、純粋さ、豊饒、富、不死などを表す金、そして白く輝く金属を意味し純粋や無垢を象徴する銀。金銀の組み合わせは赤白よりも格上で、婚礼や長寿の祝い袋に適しています。

 

そして弔事に使われる黒。黒は喪に服するのに適した色ですが、じつは「喪服といえば黒」に落ち着いたのは明治時代。それまでの長い間、日本では喪服は白と黒の間で揺れていました。『日本書紀』には白い喪服が書かれており、平安時代には貴族の間で黒い喪服を着るようになり、室町から明治初期までは遺族の大半は白装束を着ていました。鎖国が解かれ西洋文化が流入、キリスト教が再び入ってきてから、ようやく喪服が黒に落ち着きました。陰陽道では白も黒も陰の色、死を悼み悲しむ弔事の水引の基本色となりました。

 「黄白」の水引には、公家の文化の名残が

さて京都で弔事の水引に使われる黄色。これは中国の自然現象や人事現象のいっさいを解釈し説明しようとする思想、木・火・土・金・水の「五行説」が反映されています。それぞれには色や方角があり、木は青で東、火は赤で南、土は黄で中央、金は白で西、水は黒で北となります。

中央に位置する黄色は中国では皇帝のみが身につけられる崇高な色。これに影響を受けた京都の公家たちが、格調が高く、死者に対する畏敬の念を表す色として黄色を用いるようになりました。今でも京都ではその風習が根付いており、黄白の水引が弔事袋に使われています。

 知っておくと差が付きます!水引の結び方や本数の意味

水引の結び方にも種類があります。こま結びを二度繰り返し簡単に解けない「真結び(結び切り)」。重ねて執り行うことを避けたいもの、結婚や葬儀に使います。また中央に一つ、左右に二つ輪を並べた「あわび(あわじ)結び」は結婚やお見舞い、謝礼や餞別、葬儀などの弔事に使います。お祝い事に使う「蝶結び」は何度も結び直しができるので、誕生や昇進など何度あってもよいお祝い事に使いますが、婚礼には向きません。

水引は「筋」で数える。「十」が最高の数。忌み嫌われる「九」

そして水引の本数にも注目。水引は細長いものを数える「筋」で数えます。奇数が陽の数であるため、水引の筋は奇数で、なかでも「五筋」が主流です。婚礼で使われる「十筋」。陽数の「五」が2つ重なった「十」を最高の数としています。陽の極みとされる奇数「九」は「苦」につながるため、あまり用いられません。

 日本古来のしきたりの象徴のひとつが祝儀袋。みんなで集まるのが難しいご時世だからこそ、日本独特の「のし袋」に込められた意味ををいま一度見直してみてはいかがですか。

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 構成/tsurumaki

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