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コロナ禍を機に、より良い子育て環境を求めて故郷・静岡へ移住
静岡に移住を決意したのは、コロナ禍になったのが理由です。東京は感染者が多く、2020年3月に緊急事態宣言が発令。息子が通っていた保育園は自粛でしばらく休園になって、なんとなく毎日が心配で、安心安全な場所で子育てをしたいと切に思ったのです。
そこでまず頭に浮かんだのが、ふるさと静岡市への移住でした。市内には実家の母も健在で、親戚や友人もいますし、仕事をしながら子育てをするのに、なにかと心強いのではないかと考えました。
夫に相談すると賛同してくれて、移住に関するいろいろな情報を集めてくれました。その情報の中で役立ったのが「静岡の移住支援センター」です。
都市住民への静岡市への移住支援や情報提供を行っていると夫に教えてもらい、相談窓口に問い合わせをしました。すると、住む場所を探す際には不動産屋さんを紹介してくれて、リモートで物件を見ながらある程度絞り込むことができました。また、保育園の相談や子育て環境についても詳しく教えてもらうことができて、希望する入園先もスムーズに決めることができたのです。
待機児童ゼロ!の静岡市。子育て支援が充実しているのも決め手に
静岡市は4年連続で待機児童ゼロ! 子育て支援策や市内のおでかけスポットなど、育児をしている人にとって有益な情報がたっぷり詰まった『しずおかし子育てHAND BOOK』(全64ページ)も毎年発行されていて、子育て家庭への支援に力を入れていることがわかり、とても安心しました。
住まいは最終的には現地へ足を運んで決めましたが、移住の準備はトントンと進み、昨年10月に移住しました。現在は、見晴らしのいいマンションに住んでいます。品川では1LDKに住んでいたのですが、現在は3LDK。開放感バツグンで、とても気に入っています。
移住当初、子どもは2歳児以下の保育を担う待機児童園に預けていましたが、現在は小学校就学時まで預けられる認可保育園に入園して、毎日元気に通っています。
夫は東京の会社に勤めていまして、現在はリモートワーク中です。月に数回は会社へ出社していますが、静岡は、東京へは新幹線で約1時間ほどの距離。運行本数も多いので、いざというときにもすぐに東京へ行けます。そういった点でも、静岡は移住するのにベストな場所だと思いました。
生き生きとした自然を、子どもに体験させることができるのが喜び
移住してよかったと思うのは、子どもに自然とふれあう体験をたくさんさせてあげられることですね。車で移動するのが基本になったことで、一気に行動範囲が広がって、週末は家族で海や山、川へしばしば出かけています。どれも車で10分ぐらいの場所なのですが、どこへ行っても貸し切り状態でゆったり楽しめる。自然の中で遊ぶだけでなく、田植え体験やしいたけ狩りなど、東京で暮らしていたらなかなかできない体験も親子で積極的にしています。
また、家の近くには魚の卸センターがあって、そこへ子どもと買い物に行っては、お店に並んでいる活エビや活ガニに触らせたりもしています。怖がって泣いたりすることもあるんですが、こんなふうに五感を刺激する体験をふだんの生活の中でさせてあげられるのも、田舎暮らしならではですね。
私自身も地元の直売所やスーパーで野菜を購入しているうちに、旬の野菜がわかるようになったんですよね(笑)。見るのが初めての野菜は、店員さんがその食べ方を教えてくれる。店員さんとそうした会話をしながら買い物をするのも、東京ではほとんどなかったので楽しいです。何よりそういったものを料理して食べると、味はもちろんおいしいですが、心も豊かになった気がしています。
書道家「松蘭」としてオンラインでグローバルな書道教室を展開。
書道家「松蘭」としての活動は、今のところ主にオンラインで書道教室を展開しています。
私は日本の書道を海外へ伝えたいという想いから、一時期、文化交流ビザを取得して、ロサンゼルスで書道パフォーマンスや教室を1年間開いていたことがあります。その経験を生かして、コロナ禍をきっかけに、「オンライン書道×国際交流サロン」を立ち上げました。
将来は、海外へ日本文化を伝えるノウハウも教えたい
添削をしながら書く練習を1時間したあと、国内外の方たちと日本についてのさまざまなことを「英語」で話して国際交流をする、というのがレッスンの概要なのですが、オンラインでの開催で、海外だけでなく引っ越しをして遠く離れてしまった人でも、レッスンに参加していただけます。なかなか好評で、私自身も生徒の皆さんと長くお付き合いができることを楽しんでいます。
抹茶を墨の代わりに使って文字を書く「抹茶書®︎キット」を観光協会と開発中
また、静岡市の観光協会さんと「抹茶書®︎キット」の開発を進めています。「抹茶書®︎」は、2017年に私が考案した書です。静岡の名産・抹茶を墨の代わりに使って文字を書くことで、抹茶の香りを感じながら書道を楽しめます。五感を刺激する書道として、これまでにない新しい日本の魅力を海外に伝えられたらいいなと考えています。コロナ禍が終息した暁には、静岡市の観光コンテンツの一つとして、静岡に来て下さった海外の方たちに向けて、抹茶書®︎を披露するパフォーマンスイベントも開催したいと思っています。
今後は、こうしたオンラインレッスンのノウハウを教えるスクールも立ち上げたいと考えています。華道や茶道など、私のように日本文化を教えている方たちから、どうやって教室を行っているのか教えてほしいという問い合わせを沢山いただいています。アメリカでの経験も含めて、私も最初はとても苦労しましたので、そういった方たちに日本文化の海外への広め方をお伝えしたいのです。
これから移住を検討されている方へ「移住支援をしっかり受けられるように情報収集は万全に!」
移住した現在の生活にはほぼ満足しています。ただ、コロナ禍のため保育園の行事もほとんどなく、ママ友ともあまり話ができていないのが残念です。静岡はふるさとなので以前からの友人がいるのですが、夫にそうした人たちをなかなか紹介できないのもつらいですね。
コロナ禍が収まったら、夫も含めてぜひ地元の方たちと交流して、ネットワークを広げていきたいと思っています。それまでは家族の生活を充実させるつもりです。東京にいたころに比べると、一家団欒の時間は圧倒的に増えました。
これから移住をする方にアドバイスをするとしたら、移住しようと思う地域の自治体の支援策について情報をしっかり収集することですね。
自治体ごとに支援が受けられる条件は違いますし、その受領条件は支援策ごとに細かく設定されています。移住場所がある程度決まったら、その地の支援策をしっかり調べ、不明点や疑問は相談窓口の方に聞いて、熟知しておくことをオススメします!
「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」が窓口相談者・セミナー参加者を対象に行った2020年調査によれば、窓口相談者が選んだ移住希望地の1位になったのが静岡県でした。また、静岡県の「くらし・環境部 政策管理局 企画政策課」の調査によれば、令和2年度(2020年)の県内移住者は1398人で、過去最高になったことが判明。中でも最も移住者が多かったのが静岡市で、139人とのこと。小さな子どもを持つ家庭にとって静岡市が魅力的なのは、4年連続待機児童ゼロを維持していること。また、各区1か所ずつ病児保育室があって、どの園も食育に力を入れています。さらに移住に関しては、「お試し住宅」や「お試しテレワーク体験」などさまざまな事業が展開されています。
地方暮らしを希望するみなさんのための移住相談センター「認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター」
東京・大阪を除く45道府県の自治体と連携して無料で個別の移住相談に対応しています(要予約)。
取材・構成/山津京子