昨年大流行したRSウイルスに風邪、インフル、ノロ、ロタ・・・冬の【子どもの感染症】対策とホームケアを小児科医が解説

インフルエンザなど様々な感染症が流行しやすい季節がやってきます。この冬を元気に乗り切るために、まずは予防、そしていざというときはホームケア。その大切なポイントを、頼れる小児科医の先生にうかがいました。

感染症の流行予測は難しい

冬にインフルエンザやウイルス性胃腸炎などが流行するのは、寒いために窓を閉めた環境(密閉)になることや、寒くても増殖できるウイルスだからと考えられています。

ところが、2021年の夏、従来は秋から冬に流行するRSウイルス感染症が近年例を見ないほど大流行しました。一方で夏に流行するヘルパンギーナや手足口病はほとんど見られませんでした。その理由について、新型コロナウイルス感染症への対策で皆がマスクをし、手洗いを励行しているからという説が出ていますが、2歳以下の乳幼児へのマスク着用は積極的には実施されていませんので、本当の理由はわからないのです。

この冬は、特に徹底した予防が大切!

新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年は、一年を通して乳幼児の間でほとんどの感染症は流行しませんでした。例年冬に猛威を振るうインフルエンザも、この二年、ほとんど流行していません。この傾向が今年の冬も続くのか、それとも大流行するのか、予測できない状況にあります。

3歳未満のお子さんは生まれて一度もインフルエンザの流行を体験していないので、もし大流行が起きると感染や重症化のリスクが高まります。だからこそ、徹底した予防が大切なのです。

冬の感染症予防のポイント

冬には様々な感染症が流行しますが、その感染対策は共通しています。次の4つのポイントを押さえましょう。

①こまめに換気しましょう

新型コロナウイルス、インフルエンザ、ノロウイルスなどは、飛沫感染や空気感染をします。2~3時間に一度は窓を開けて室内の空気の入れ替えをしましょう。インフルエンザウイルスは湿度に弱いことから、湿度を40%以上に保つように心がけましょう。

②ワクチンで予防しましょう

新型コロナウイルス感染症の流行では、ワクチンと治療薬の開発を待ち望みました。インフルエンザにはワクチンがあります。流行期前(10~12月頃)にワクチンを接種しましょう。生後6か月から接種できます。12歳以下は3~4週間隔で2回接種します。

③外から帰ったらまず手洗いを!

感染症予防の基本のひとつが手洗いです。石けんと流水で指の間、爪の裏、手首などもしっかり洗いましょう。

④十分な栄養と睡眠をとりましょう

クリスマス、正月……と行事の多い時季ですが、規則正しい生活リズムを保ち、良質な睡眠とバランスの取れた栄養で体力を落とさないようにすることも大切です。

もし感染症にかかったら? 症状別ホームケア

どんなにがんばって対策をしたとしても、感染を完全に予防することはできません。かかってしまったときは慌てず落ち着いて、どんな症状が出ているかよく見ることが大切です。その上で、症状ごとに次のホームケアを行いましょう。

発熱した!

熱があるときに冷やすところ

解熱剤、受診の目安は

38.5度以上で、ぐずりがひどい、好きな飲み物も飲めない、眠れないなどのときには解熱剤を使ってみてもよいでしょう。その際、解熱剤使用前後で約1度体温が下がれば十分です。夜間の発熱は、全身状態が良好なら朝まで待ってかかりつけ医を受診するようにしましょう

暑がっているなら薄着にして保冷剤で体を冷やす

無理に汗をかかせると脱水症を起こす危険があります。暑がっているならぬるま湯で絞ったタオルで体を拭いた後にパジャマ1枚程度の薄着にしてあげましょう。おでこに冷却シートを貼るよりも、太い血管が通っている箇所をタオルなどで包んだ保冷剤で冷やすと効果的です。

咳が出る!

タンが絡んだ咳なら鼻水を吸って水分補給を

まずは咳の種類を見極めましょう。ゴホゴホ、ゲホゲホとタンが絡んだような咳の場合は、鼻水が喉まで回ったことで咳が出ていると考えられます。鼻吸い器があればこまめに鼻水を吸ってあげると楽になるでしょう。

また、水分を摂ったり部屋を加湿したりすることで鼻が通って咳が治まることもあります。うがいができるなら、うがいも効果的です。

乾燥した咳ならぜんそくに注意

コンコン、ケンケンと乾燥した咳が出ている場合は、ヒューヒュー、ゼーゼーと息を吐いていないか注意しましょう。この場合は、気管支炎やぜんそくになっている可能性があります。

悪化すると家庭では対処しきれないので、早めに受診して薬を処方してもらいましょう。夕方以降に悪化しやすい傾向があるので、かかりつけ医の診療時間が終わるまでに子どもの体調をチェックするよう心がけて。

1歳以上ならはちみつも効果的

※1歳未満の赤ちゃんにははちみつはNG!乳児ボツリヌス症にかかることがあります。

実は、はちみつには咳止めの効果があります。なんと、保険診療ではちみつが処方されることも!  はちみつをお湯やホットミルクに溶かして飲むと、はちみつの咳止め効果に加えて水分で鼻水やタンが溶け出す効果も期待できます。絹ごし豆腐とも相性がよく、豆腐にりんごジュースを少し入れてはちみつを垂らし、ブレンダーでかきまぜるとヨーグルト風になり食べやすいでしょう。

おう吐・下痢をしている!

おう吐した後1 ~ 2 時間は水分を摂らない

おう吐すると脱水が心配になりすぐに水分を摂らせようとしがちですが、吐いた直後におなかにものが入るとさらに吐き気がして、おう吐をくり返すことになります。何度も吐くと逆流した胃酸によって食道が炎症を起こしてしまい、回復が遅れることになります。

吐いた後は口をゆすぐ程度にして、1~2時間は何も飲まずそっとしておきましょう。深夜なら、そのまま朝まで寝かせても構いません。一度おなかを空っぽにして休めることが大切です。1~2時間後に吐き気が治まっているか確認しながら、ティースプーンで1さじ、2さじと少しずつ飲ませるといいでしょう。

吐物処理は広範囲に、消毒は熱湯か塩素系消毒剤で

床に散らばった吐物は、ペーパータオルなどで拭き取って捨てます。次に、塩素系漂白剤に浸した雑巾などで、「このくらい飛んだかな」と思う範囲よりもさらに1メートル広い範囲の床を拭きましょう。

吐物で洋服などが汚れた場合は、まずバケツに張った水で吐物を洗い落とします。バケツの水は飛沫が飛ばないよう注意しながらトイレに流します。吐物が全部流せたら、洋服に熱湯をかけて消毒し、そのあと洗濯すればOKです。

処理の際はマスクを着用すること。拭いて捨てられる雑巾や使い古しのタオルがあると便利です。しっかり手を洗えば、ビニール手袋はつけなくても構いません。

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受診の目安は?

基本的におうちの人が心配だと思ったら受診しましょう。「軽い症状かもしれないのに受診していいのかな」と遠慮する必要はありません。特に、いつもと様子が違う、この症状は初めて見るなどの場合は早めに受診して、かかりつけ医からアドバイスを聞いておくと安心です。そのためにも、日ごろからかかりつけ医をもっておくことが大切なのです。

こんな症状があったら夜中でもすぐ受診を!

■けいれんが起きている
■呼吸がままならないほどひどい咳が続く
■絶えず何度も吐き続けている

熱性けいれんとは

熱が急激に上がるときに、全身もしくは体の一部の筋肉がけいれんすること。「ひきつけ」ともいわれます。生後6か月から5歳くらいの子に起こり、多くは1回のみです。慌てて、揺すったり、口に物を入れたりしないで、1分以上続くときは救急車を要請しましょう。

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備えておきたいホームケア用品

いざというときのために、備えがあれば安心です。これだけは常備しておきたいアイテムは次のとおりです。

経口補水液
発熱時や下痢などの際の脱水予防に有効な経口補水液。液体タイプとゼリータイプがあるので、どちらのタイプが飲みやすいか試しておくといいでしょう。

解熱剤
解熱剤は必須ではありませんが、常備してあると夜中や休日に慌てなくてすみます。アセトアミノフェンを主成分とするものを、用法・用量を守って使用しましょう。

ペーパータオル
吐物を処理したり手を拭いたりと、厚手でしっかりしたペーパータオルが便利です。キッチンペーパーでも代用可。

レトルト幼児食
急な受診や子どもの対応などで時間がないときは、レトルト幼児食を活用しましょう。ときどき食べて慣れておくと、災害時の非常食としても役に立ちます。

薬の飲ませ方

シロップ薬は目盛りを間違えないよう注意しましょう。粉薬はそのままでは飲みにくいので、離乳食スプーン1さじ程度の少量の水でペースト状に溶かして飲ませましょう。粉薬を飲むのを嫌がる場合は、コンデンスミルクやチョコペーストに混ぜて、ビスケットに塗って食べさせてみましょう。薬の味やザラッとした食感が気にならなくなります。

押さえておこう!冬にかかりやすい感染症

インフルエンザ

インフルエンザウイルスによる感染症。急な高熱、鼻水や咳、頭痛、関節痛、おう吐や下痢などを引き起こす。

風邪

ウイルスや病原性微生物が原因となる軽度の気道感染症。38・5度未満の発熱、鼻水、鼻づまり、咳、下痢などが主な症状。

ウイルス性胃腸炎

ノロ、ロタ、アデノなどのウイルスによって起こる胃腸炎。発熱とおう吐、腹痛、下痢などの症状がある。感染力が高い。

溶連菌(溶血性連鎖球菌)感染症

発熱してのどが腫れて痛み、全身に赤い発疹が出たり、舌がいちごのように赤くなりブツブツができたりするのが特徴。

RSウイルス感染症

発熱や鼻水などが数日続く呼吸器の感染症。軽症で済むことが多いが、6か月未満の子がかかると重症化することがある。

 

教えてくれたのは

川上一恵先生

かずえキッズクリニック院長。小児科専門医(日本専門医機構)、子どもの心相談医(日本小児科医会)、地域総合小児医療認定医(日本小児科医会)。筑波大学大学院博士課程修了後、茨城県立こども病院などでの研修を経て、2005年、東京都渋谷区にかずえキッズクリニックを設立。地域の頼れる小児科医として、育児全般の相談も受け付けている。

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再構成/HugKum編集部

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