北回帰線とは、何?
「北回帰線(きたかいきせん)」という名称は、聞いたことがあっても、学校の授業で習ったきりで、正確な意味を忘れている人も多いのではないでしょうか。北回帰線の位置や、実際に北回帰線を体感できるスポットを紹介します。
緯度23度26分に引かれた線
北回帰線とは、北緯23度26分のところに、赤道(せきどう)と平行に引かれた線です。
地球は太陽に対して、常に一定の角度で軸を傾けた状態で公転しています。そのため、地上からは、同じ時間でも季節によって太陽の高さが違って見えます。夏の正午には、見上げるほど高い位置にある太陽も、冬にはとても低くなり、首を上に向けなくても見えるほどです。
太陽が、真南の方角で一番高くのぼったときにできる、地上との間の角度を「南中(なんちゅう)高度」といいます。南中高度が90度になる地点は、北緯23度26分から南緯23度26分までの範囲を、毎日少しずつ移動しています。
南中高度が90度になる地点を線で結んだものが、地球から見た太陽の通り道「黄道(こうどう)」です。北回帰線は黄道の中で、最も北の地点でもあるのです。
「夏至」が関係
太陽が北回帰線に到達することを、日本では「夏至(げし)」といいます。夏至の日は、北半球での昼の時間が、1年でいちばん長くなることを知っている人も多いでしょう。
北回帰線が通る場所では、夏至の瞬間に、太陽が頭の真上に来ることになります。そのため、太陽の下に立っても影が全く見えない不思議な現象が体験できます。
なお日本の場合、夏至の南中高度は東京で77.4度、沖縄の那覇(なは)で87.4度です。日本は北回帰線よりも北側にあるため、頭の真上に太陽が来ることはなく、最南端の沖縄にいても影ができてしまいます。
記念碑が台湾に立っている
日本から最も近くで北回帰線を体感できる場所は、台湾です。台湾島は、北回帰線によって、ほぼ南北に二分されているといってもよく、島の北側と南側では気候がかなり違います。つまり熱帯と亜熱帯の境界点に当たっているのです。
台湾には北回帰線の「標誌(ひょうし。標識、目印のこと)」が立っている場所が3カ所あり、影のない写真を撮影できるところとして人気の観光スポットにもなっています。機会があれば、子どもと一緒に訪れてみてもよいでしょう。
南半球は南回帰線
黄道上で「南中高度が90度になる最も南」の地点が、「南回帰線」です。北半球の冬至に当たる日に、南半球では昼の時間が最も長くなります。南回帰線の具体的な位置を見ていきましょう。
南回帰線とは
南回帰線は、南緯23度26分のところに引かれています。北回帰線とは、赤道を挟んで、南北の同じ緯度にあります。地球儀や世界地図でも、三つの線が等間隔で引かれていることが分かるでしょう。
太陽が赤道よりも南回帰線寄りにある期間は、日本を含む北半球では冬となり、昼間の時間が短く、寒い日が続きます。
南回帰線はパラグアイを通る
南米大陸の国パラグアイの「ベレン市」には「南回帰線記念碑」があり、冬至の正午に訪れると、影がない写真を撮影できるところとして人気です。またアフリカ大陸のナミビアにも、南回帰線を示す標識があります。
南北の回帰線を覚えるために、子どもと一緒に地球儀を見ながら、回帰線が通る国を探してみるのもおすすめです。線を指でたどっていくと、聞いたことのある国や都市の名前がいくつか見つかるでしょう。
南北回帰線を、英語でいうと?
地球儀や世界地図に登場する用語を、英語で覚えておくと、将来、役に立つかもしれません。南北それぞれの回帰線の英語表記を紹介します。
北回帰線は「the Tropic of Cancer」
北回帰線は、英語で「the Tropic of Cancer」といいます。「Tropic」は回帰線、「Cancer」は星占いにも登場する「かに座」のことです。地球から見ると、夏至の時期の太陽が、かに座付近にあるため、このように呼ばれています。
なお「回帰」は、「一回りして元の場所に戻る」という意味です。北回帰線を通過した太陽は赤道方面に向かい、南回帰線に達して、また戻ってきます。1年をかけて太陽が戻ってくるように見えることが、「回帰線」という言葉の由来です。
南回帰線は「the Tropic of Capricorn」
南回帰線は、英語で「the Tropic of Capricorn」といいます。「Capricorn」は「やぎ座」のことで、やはり太陽が冬至の時期に、やぎ座の付近にあることから名付けられました。
北や南を使わずに、星座の名前で呼ぶと、少しおしゃれな雰囲気に感じられます。太陽が他の星と同じ天体の一つであることも、より実感できるでしょう。
太陽の通り道を確認してみよう
日本のある北半球からみると、北回帰線とは、「夏至」の正午に太陽が真上に来る地点のことです。赤道を挟んで反対側にある南回帰線は、「冬至」に太陽が真上に来る地点になります。
黄道の動きを見てみると、夏至を境に南下していき、赤道に到達すると昼と夜の時間が同じ「秋分」となります。さらに南下して南回帰線まで行き「冬至」を迎えると、今度は北上し赤道に到達すると「春分」、さらに北上して、再び夏至がやってくるのです。
このように、実際に地球儀を回しながら黄道を確認してみると、地球と太陽との位置関係や季節が移り変わる仕組みが、よりいっそう理解できるでしょう。また、それぞれの回帰線がどこを通っているか地図で確認して、知っている国や都市を探してみるのも面白いかもしれません。
構成・文/HugKum編集部