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Q:インフルエンザ予防に大切なことは?
今年もインフルエンザのシーズンが始まりました。インフルエンザは何が怖いの? いつ頃からどんな予防をすればいいですか?
●インフルエンザの予防接種は、なぜ必要?
インフルエンザの流行が始まる時期は、予測が困難です。例えば一昨シーズンは12月上旬からA型が流行し始め、1月上旬がピーク。全体にB型は少なかったものの、4月まで見られました。
しかし昨シーズンは、A型の流行がひと月遅い、1月上旬から始まり、B型もほぼ同時期に流行開始。2月上旬をピークにA型は収束に向かいましたが、B型の流行が4月まで一定して続いたためか、感染者数もやや多くなったようです。
さて、今シーズンは? それは始まってみなければわかりません。ただ、毎年「12月~4月中頃までは注意が必要」と考えるといいと思います。
インフルエンザの代表的な症状
多くは38℃以上の急な発熱で発症します。咳や鼻水、のどの痛みなどの風邪症状の他、倦怠感、筋肉痛、関節痛、頭痛など、不快な全身症状が強く出るのが特徴です。重症化すると気管支炎や肺炎、まれに髄膜炎やインフルエンザ脳症を合併します。一番怖い合併症が、急激に発症するインフルエンザ脳症です。毎年数百人ほどかかり、重い後遺症が残ったり死亡する子もいます。肺炎や髄膜炎なども、場合によっては生命に関わります。
予防接種は、こうした合併症が起こる確率を低くする効果があると考えられています。乳幼児は、接種しても10人に5~7人はかかるといわれますが、重症にならないために受けることを勧めます。
●インフルエンザの予防接種はいつ受ける?
予防接種は、接種後、2週間過ぎた頃から効果が出始め、4、5か月ぐらい効果が持続します。また、乳幼児は1回の接種では免疫をつくる力が弱いので、2回接種が勧められています。時期は、10月中に1回目、4週間あけて、11月中に2回目を接種するのがいいでしょう。
今年の予防接種は、A型B型とも2種類ずつ、計4種類の型が入っています。基本的には昨年と同じ型ですが、A型1種類は微妙に変わっています。
現在、日本では、副反応が少なく効果の高い点鼻ワクチンを開発中です。鼻やのどの粘膜に抗体(免疫)をつくるので、感染そのものを予防でき、発症しにくいという効果があります。数年後には実用化されそうです。それまでは今の予防接種で、重症化を防ぐことが大切です。
●ふだん行いたい予防法
感染経路は、大きく分けて二つあります。①咳やくしゃみに混ざったウイルスが、鼻や口から進入する飛沫感染。②手についたウイルスが、鼻や口の中に入る接触感染。予防は、この二つの感染経路をシャットアウトすることです。
また、のどの乾燥は粘膜の免疫機能を低下させ、ウイルスの増殖につながるので、のどの加湿も大切な予防法です。
★手洗い
石けんでウイルスを洗い流すことは、接触感染の予防に最も効果的。アルコールの手指消毒も有効です。
★うがい
ある程度、口やのどについたウイルスを洗い流したり、のどの加湿効果が。めばえっ子は“お口ぶくぶく”でも。
★不織布製マスク
ある程度、飛沫感染を防ぐ他、無意識に手で鼻や口を触って接触感染するのを予防。のどの加湿にも。
★こまめな水分摂取と部屋の加湿
のどを加湿して感染しにくくします。水分摂取は、口やのどのウイルスを洗い流す効果も。部屋の湿度は50~60%に。
先生からママ・パパへひと言アドバイス
インフルエンザは発熱に気づいてすぐに受診しても、検査が正確にできません。半日以上様子を見てからの受診が望ましいでしょう。夕方や夜間の発熱は、翌朝の受診で間に合います。ただし咳が激しくて呼吸が苦しい、けいれんや意識がおかしいなどの場合は、急いで病院へ。インフルエンザは自然治癒する病気ですが、発症から48時間以内にタミフルを飲むと、発熱期間を1~2日ほど短縮できます。
健康担当
粂川好男 先生 くめかわ よしお
杉並堀ノ内クリニック院長
立教大卒業後、出版社に勤務した後、信州大医学部入学。国立国際医療センター、愛和病院で小児科全般の臨床経験を積む。安心と笑顔を持ち帰れるクリニックを目指す。小児科専門医。
イラスト/松木祐子