そこで今回は、前後編に分けて、『女はいつも、どっかが痛い がんばらなくてもラクになれる自律神経整えレッスン』(小学館)を上梓された女性鍼灸師のやまざきあつこ先生に、お話を聞きました。
多かれ少なかれ個人差はあれど、大抵の女の人生は「不調との闘い」
筆者:『女はいつも、どっかが痛い』という本、なかなかに衝撃的なタイトルですが、確かに、女性には体調の波があって、それに振り回されている人も多いと思います。
あつこ先生:生理があるってことは、毎月のように女性ホルモンの影響を受け続けているわけで、どうしても“波”はありますね。特にアラフォー世代は女性ホルモンであるエストロゲンが徐々に減少していく時なので、自律神経のバランスが乱れやすくなる。自律神経は活動モードの交感神経、お休みモードの副交感神経のバランスで成り立っているものなので、それが乱れると、身体のあちこちに不快な症状が出やすくなるんです。
筆者:自律神経の乱れが不調に繋がるってことなんですね。そうは言っても、他の人は健康そうに見えるのに、いつも調子が悪い自分って何なの?って、余計に落ち込むこともあります・・・・・・。
あつこ先生:自律神経は、心臓を動かす、汗をかく、といった体の調整機能の役割を担っていますが、呼吸以外は自分の意思ではコントロールできないんです。だから、自分を責めないでくださいね。確かに、中には30代で訪れるプレ更年期も40代以降の更年期もほとんど無症状、という女性もいますが、大抵の女性の人生は多かれ少なかれ、「不調との戦い」の面があるんです。だから「具合の悪さは自分のせい」とは思わないで欲しいんです。
筆者:更年期は誰にでもあるってことですか?
あつこ先生:更年期は人の一生のひとつの時代を指すもの。だから、男性にもあるんですよ。いわゆる加齢現象のひとつです。女性は特に、のぼせや身体のほてり、動悸、頭痛、便秘、不眠、イライラ、憂うつ、関節痛、めまい、だるさなどを訴える方が多いですね。
筆者:これらが、更年期障害の症状なんですね。
病気じゃないならこの痛み、どうすりゃいいの?
あつこ先生:そうです。更年期に起こる自律神経系の漠然とした不調の訴えを更年期障害と呼ぶんです。自律神経のバランスが悪いために起こる症状なので、病院に行って、精密検査をしても、特に病変は認められないとされることが多いんです。
筆者:私の友人にも、不調が酷くて、ドクターショッピングを重ねているアラフォー女性がいます。
あつこ先生:「不調を感じたら、まずは病院!」これは、とってもいいことです。病気が見つかったならば、治療すればいいだけ。そうすれば、健康になるのも早いですから、是非、お医者様の元を訪ねてください。たとえ、ドクターショッピングになったとしても、重篤な病気の可能性を消せたのであれば一安心ですよね。そこから、「病気じゃないってことなら、じゃあ、どうしようか?」ってことを考えればよいのです。
筆者:ドクターに「病気ではない」ってお墨付きを頂けたら、とりあえずは安心ってことですものね。でも、不快な症状が消えるわけではないので、そういう場合は何から始めましょう?
あつこ先生:プレ更年期も含めた更年期における自律神経失調症の原因は、大きく分けて3つあります。「体質的要因」「ストレス抵抗力」「その時の環境」。この3つが複雑に絡み合って、症状が重く出たりするんですね。
人間の体は、その部分だけが痛くなるわけではなく、大抵は体全体が弱っているところに、中でもとりわけ弱っている箇所に痛みが集中するんですよ。しかも、皆さん、我慢強いので、先に悲鳴を上げるのは体です。その後、遅れて心も辛くなっていることに気付くんですね。心と体は一体なので、切り離せないんですが、もし、不調を感じたら、まずは体のほうから先にアプローチするといいですよ。
筆者:まずは、体にアプローチ・・・・・・とは?
美意識高めの女性ほど使いがちな“アレ”が、不調の原因だった!?
あつこ先生:鍼灸も含めた東洋医学の世界では、自律神経を整えるためには“血流”が大事、という考え方があるんですね。血流を促すだけでも、元気の“気”が湧いてくるので、様々な困難に立ち向かえるだけの気力が復活してきます。
筆者:血流を上げて、自律神経を整えることが結果的に、弱った心にも有効ってことなんですね。自宅でこれを簡単に整える方法が、ご著書の中にも沢山、出てきましたが、いの一番には何をすれば良いでしょうか。
あつこ先生:そうですね。では、まずは「ガードル禁止令!」を出しましょうか(笑)。ガードルや補正下着を身に付けている女性は多いと思いますが、これは体にとって本当に害悪です。体を固定化しちゃうことになるので、内臓が硬くなり、やがては内臓冷えを起こしがち。冷えは大敵! 血液が体の隅々まで届かなくなりますから、免疫力が低下し、あらゆる病気を招きかねません。それに、体を締め付けると、酸素が体に行き渡らない。そうなると呼吸が浅くなるので、息苦しさの原因になる場合もあるんです。
冷えと酸素不足が改善できるだけでも体調は上向きになりますから、今日からはガードルではなく、綿やシルクでできた腹巻や毛糸のパンツを着用してくださいね。もちろん、湯船にゆっくりと浸かる、白湯を飲む、根菜類を食べる、体を動かすということも血行改善には効果的ですよ。
筆者:「縛り付けない、動かす、温める」で血流を上げるってことが大事なんですね。ありがとうございます。
後編では、不調を改善する心へのアプローチ方法を教えて頂きます。
(文/鳥居りんこ+生活編集室)
“自律神経失調症女性の駆け込み寺”と呼ばれる鍼灸院院長と患者のやり取りから生まれた、「がんばらなくても・不調を受け入れ・気付けばラクになっている」生き方のヒント集。施術中に著者が何気なく口にする言葉――「症状は辛いけど病気ではないから」「その思考は毒が溜まる原因かも」「気働き上手さんの役割から降りてみて」「誰かの不機嫌は、あなたのせいじゃない」そして「女はいつも、どっかが痛いの。分かります、大丈夫!」――などがきっかけで、痛みを招きがちな自分の心と体の“クセ”に気付き、少しずつラクになっていく患者たち。女性鍼灸師として28年間7万人をみてきた著者だからこそ話せる「できるだけ薬に頼らずラクになる方法」とは?
記事監修
1963年生まれ。藤沢市辻堂にある鍼灸院『鍼灸師 やまざきあつこ』院長。開業以来28年間、7万人の治療実績を持つ。1997年から2000年までテニスFedカップ日本代表チームトレーナー。プロテニスプレーヤー細木祐子選手、沢松奈生子選手、吉田友佳選手、杉山愛選手などのオフィシャルトレーナーとして海外遠征に同行。ほかにプロライフセーバー佐藤文机子選手、プロボディボーダー小池葵選手、S級競輪選手などプロアスリートの治療にも関わる。自律神経失調症の施術には定評がある。