姫路城はどんな城? 見どころや撮影ポイント、気になる伝説も【親子で歴史を学ぶ】

城郭の中でも際立って優美な姫路城は、日本が誇る世界文化遺産の一つです。観光をより楽しめるよう、特徴や見どころ、昔から伝わる逸話を紹介します。姫路城が美しく見える撮影スポットや、併せて訪れたい名所もチェックしておきましょう。

姫路城とは

歴史的価値が高いのはもちろんのこと、「姫路城(ひめじじょう)」は人を引きつける魅力を持つ近代城郭です。まずは姫路城の概要について紹介します。

世界文化遺産となった不戦の城

姫路城は、兵庫県姫路市に位置する城郭で、現在見られる天守閣は1609(慶長14)年に完成したものです。美しい白漆喰(しろしっくい)の城壁から、「白鷺城(はくろじょう、しらさぎじょう)」の愛称で親しまれています。

姫路城(兵庫県姫路市)。満開の桜の向こう、白漆喰の城壁が眩しい。

 

かつて豊臣秀吉が明智光秀討伐の際に姫路城を拠点としたことから、秀吉の出世城としても有名な城です。

姫路城は、軍事的にも芸術的にも、最高峰の傑作といわれています。保存状態が極めてよく、現存する最大の城郭建築です。そのことが評価され、1993(平成5)年、日本で初めて世界遺産に登録されました。

戦国時代の戦火を逃れた姫路城は、「不戦の城」とも呼ばれます。第2次世界大戦では、辺りが焼け野原となったときも、姫路城に落とされた焼夷弾(しょういだん)だけは奇跡的に爆発しなかったのです。

参考:姫路城公式サイト:トップページ

姫路城観光の前にチェック!

姫路城は外観だけではなく、天守や櫓(やぐら)の中まで見学できます。心ゆくまで姫路城を鑑賞できるよう、開城時間や見学時の注意事項を知っておきましょう。

時間や料金、注意点は?

姫路城の開城時間は、9時から16時までとなっています。16時30分ごろから窓が閉められ、17時には閉門してしまうため、ゆっくり見学したい場合は時間に注意が必要です。混み合う時期には8時半に開門されることもあります。

入城料金は下記の通りです。

・大人(18歳以上): 1000円
・小人(小学生・中学生・高校生): 300円
・30人以上団体(大人): 800円
・30人以上団体(小人): 240円

18歳になっていても高校生であれば300円、未就学児は無料です。入場券の前売りや予約制度はありません。

姫路城内は坂や段差が多く狭い通路もあるため、動きやすい服装や靴の方が安心でしょう。基本的に飲食禁止ですが、ペットボトルやふた付きの水筒は持って入れます。

なお、記載している内容は2022(令和4)年3月現在のものです。実際に足を運ぶときは、公式サイトで最新情報を確認しましょう。

姫路城ご利用案内 | 姫路城公式サイト

ARアプリで、よりリアルな体験を

姫路城を見学する際には、AR(拡張現実)の世界を体験できる「姫路城大発見アプリ」の利用がおすすめです。

スマホにアプリをダウンロードしたら、ARスタートボタンにタッチしましょう。アプリを起動したまま、スマホを敷地内にあるARマーカーにかざすだけでOKです。

例えば、現実には誰もいなかった場所に武士の姿が現れ、当時の迫力ある戦(いくさ)が画面に再現されます。映像も音声もリアルで、まるで自分もそこにいるかのような臨場感を味わえるでしょう。

なお、姫路城周辺では「姫路 Free Wi-Fi」が使用できます。

・アプリ名:姫路城大発見アプリ
・価格:無料
・App Store:ダウンロードページ
・Google Play:ダウンロードページ

姫路城の見どころは?

姫路城を見に行くなら、その魅力を余すところなく鑑賞したいものです。効率よく見学して回れるよう、行く前に見どころを押さえておきましょう。

渡櫓で結ばれた史上最大の天守群

白亜の外観と並んで姫路城を特徴づけているのが、「連立式天守閣」です。天守閣とは本丸に高くそびえる楼閣(ろうかく)のことで、指揮や接見のほかに貯蔵庫としても使われていました。

姫路城の天守閣は、外観は五重に見えますが、内部は地下1階から6階までの七層建てです。天守閣は外観三重の西小天守・乾小天守・東小天守の3基と、輪を描くように渡櫓(わたりやぐら)でつながれています。

さらに、外壁から突き出た屋根部分「破風(はふ)」も見どころの一つです。層ごとに、さまざまな意匠を凝らした破風が用いられており、姫路城の天守閣を一段と華やかに見せています。

天守閣は籠城戦(ろうじょうせん)を想定して建てられたため、天守内部には立てこもって反撃するための仕掛けが至るところに見られます。どんな仕掛けがあるのか、探してみるのも面白いかもしれません。

姫路城が映える絶景ポイント「備前丸」

姫路城は、見る角度によって表情を変えるため、お気に入りの撮影ポイントを見つけるのも姫路城散策の楽しみ方でしょう。特に、天守閣が映えると評判のスポットが、大天守正面にある「備前丸(びぜんまる)」という広場です。真下から見上げると、堂々とした迫力ある天守閣の姿が拝めます。

大手門をくぐってすぐの「三の丸広場」もおすすめです。ほどよく距離を取って城を撮影できるため、周囲の景色と一緒に姫路城全体をカメラに収められます。

三の丸広場は「誰でも行ける、姫路城が最も美しく見えるビューポイント」という視点から、姫路市民により「世界遺産姫路城十景」の一つに選ばれました。

夜間のライトアップ

姫路城は夜になると、城内や周辺に設置された投光器によってライトアップされます。ライトアップの時間は日没から0時までです。夜空を背景に浮かび上がる姫路城は、白壁が際立って美しく、日中とは違った幻想的な姿を堪能できるでしょう。

ライトアップされた姫路城も、一見の価値あり。

 

春・夏は白色系、秋・冬は暖色系と季節によって色味が変わるのが魅力です。世界的な啓発デーに合わせて、年に数回ブルーやピンク、パープルなどに彩られる日もあるので、時間が許すのであれば、夜の姫路城へ足を運んでみてはいかがでしょうか?

なお、2023年にLEDへのバージョンアップが予定されており、工事の期間中はライトアップが中止されます。

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言い伝えの残る必見スポット

姫路城の中には、不思議な伝説が残るスポットがあることを知っていますか?  少し怖い二つの言い伝えを知ると、スリリングな姫路城散策を楽しめるかもしれません。

姫路城の皿屋敷伝説「お菊井戸」

古典怪談の一つ、「皿屋敷(さらやしき)」の話を聞いたことがある人も多いでしょう。江戸が舞台の「番長(ばんちょう)皿屋敷」(岡本綺堂作)が有名ですが、この話は全国各地に形を変えて言い伝えられています。

姫路に残る「播州(ばんしゅう)皿屋敷」は室町時代の話で、お菊という女性が、10枚組皿のうち1枚を割った罪を着せられ、ひどい仕打ちの末に井戸に投げ込まれてしまうというものです。

それからというもの、深夜になるとお菊の亡霊が現れ、悲しげな声で皿を数えるのが聞こえるようになったといいます。姫路城内に今も残されている「お菊井戸」は、実は城外に通じる秘密の道であったため、怪談話で人を遠ざけていたという説もあるのです。

「お菊井」(姫路城城内)。天守から見た怪談「播州皿屋敷」に登場する井戸。

宮本武蔵が妖怪を退治「刑部神社」

姫路城天守閣の最上階には「刑部(おさかべ)神社」があります。この神社に残されているのは、かの有名な宮本武蔵(みやもとむさし)による妖怪退治伝説です。

その昔、姫路城には、夜になると妖怪が出るという噂が流れていました。足軽(あしがる)として仕えていた武蔵は妖怪退治の命を受け、夜の天守閣を登っていきます。

武蔵は炎や地震・地響きといった怪奇現象に襲われますが、最上階までたどり着き、夜が明けるまで番をしたそうです。妖怪は武蔵に恐れをなして逃げ去り、それに感謝した刑部明神(おさかべみょうじん)が武蔵に宝剣を授けたといわれています。

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姫路城周辺のおすすめ観光スポット

遠方から姫路を訪れる場合、姫路城以外にも周辺のスポットを見て回りたいという人も多いでしょう。姫路城周辺にあるおすすめの観光スポットも、三つ紹介します。

趣深い日本庭園「姫路城西御屋敷跡庭園 好古園」

「姫路城西御屋敷跡庭園 好古園(こうこえん)」は、姫路城の西御屋敷や武家屋敷などがあった場所に造られた日本庭園です。1万坪の敷地に広がる静かな佇まいは、見る人の心を落ち着かせるでしょう。

好古園の美しい日本庭園。池泉回遊式庭園で、紅葉が訪れた人の目を楽しませてくれる。

 

姫路城のすぐ隣にあるため、庭園の向こうに天守閣と西の丸一帯の豊かな緑を一望できます。好古園内には、趣向を凝らした大小9つの庭園があり、なかでも姫路城を借景にした「築山池泉(つきやまちせん)の庭」は絶景です。

江戸情緒を感じる風景や四季折々に咲く花が目を楽しませ、どの季節の眺めも美しく甲乙はつけられません。園内は「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」など、有名なドラマや映画のロケ地にもなっています。

園内にはレストラン「活水軒」や茶室「双樹庵」もあるので、のんびりと足を休めることも可能です。

参考:姫路城西御屋敷跡庭園 好古園

修行体験もできる「書寫山圓教寺」

西の比叡山という別称でも知られる「書寫山圓教寺(しょしゃざんえんぎょうじ)」は、長い歴史を持つ天台宗の寺院です。江戸時代から続く巡礼地・西国三十三所の27番目の札所でもあり、遠方からも多くの参拝者が訪れます。

書寫山圓教寺(姫路市)。西国三十三所のうち最大規模を誇る寺院で、中世には、京都から遠方の地にありながら、天皇や法皇も訪れていたという。

 

山頂までロープウェーやバスも走っているため、子どもやお年寄りでも心配ありません。

書寫山内の大講堂・食堂(じきどう)・常行堂からなる「三之堂」がある一角は、映画「ラストサムライ」のロケ地になったことで注目を集めました。写経体験や座禅体験なども行われているので、子どもに、都会の騒がしさを離れて、自分自身と向き合う時間を持たせてみるのもよいでしょう。

参考:天台宗別格本山 西国二十七番札所 – 書寫山圓教寺

城下で動物と触れ合う「姫路市立動物園」

「姫路市立動物園」は、姫路城・三の丸広場の東側にあります。1951(昭和26)年に開園してから、「お城の中の動物園」として長く親しまれてきました。

園内にはライオン・カバ・キリンといった迫力の大型動物や、ペンギン・レッサーパンダをはじめとした癒(い)やしの小動物など、約100種類の動物が飼育されています。

正面入り口から入ってすぐの「城見橋」からは姫路城の姿を見ることもでき、小規模ながら見どころの多い動物園です。

ただし姫路城下の動物園を楽しめる日々は、残念ながら長く続きません。手狭になっている獣舎もあるものの、文化財保護の観点から改修工事が難しいという事情があり、移転に向けた準備が進められています。

参考:姫路市立動物園:トップページ

当時の姿を残す国宝姫路城を見に行こう

姫路城は、江戸時代の建築がほぼ当時のまま現存する、人気の平山城(ひらやまじろ)です。近代城郭の魅力と歴史的価値を備えており、世界遺産にも登録されています。見応え抜群の天守閣や伝説の残るスポットなど、訪れる人を飽きさせません。

ARアプリやライトアップなど、城郭鑑賞を盛り上げる工夫もあるため、姫路城観光は子どもに日本独特の文化や歴史を伝えるよい機会になるでしょう。周辺には庭園や動物園もあるため、子どもと一緒でも楽しく観光できるはずです。

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構成・文/HugKum編集部

参考書籍:
株式会社デアゴスティーニ・ジャパン 日本の城 改訂版 第2号
株式会社メイツユニバーサルコンテンツ ビジュアル版 世界遺産 必ず知っておきたい150選 改訂版
メイツ出版 より深く楽しむために 日本の城 鑑賞のポイント65

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