安土桃山時代の特徴は? 活躍した人物や文化について知っておこう【親子で歴史を学ぶ】

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室町時代と江戸時代の間にある短い時代を「安土桃山(あづちももやま)時代」と呼びます。年表上は、とても小さく見えますが、世の中が大きく変わったことから、日本史の授業では必ず取り上げられる時代です。

時代を作った人物や文化など、安土桃山時代の特徴を解説します。

安土桃山時代とは?

安土桃山時代は、いつ始まって、いつ終わったのでしょうか。期間や名前の由来について見ていきましょう。

織田信長・豊臣秀吉が躍進した時代

安土桃山時代は、戦国武将・織田信長(おだのぶなが)と豊臣秀吉(とよとみひでよし)が政権をにぎった期間を指します。

織田信長(左) 豊臣秀吉(右)

 

信長は、古い慣習にとらわれない自由な発想で、政治や経済のあり方を大きく変えていきました。キリスト教を保護し、宣教師と親しく交わって、海外の文化を熱心に取り入れた様子も伝わっています。

秀吉も派手好きで、黄金の茶室を造ったり、大規模な花見イベントを開催したりしました。型破りな2人が躍進した安土桃山時代は、伝統重視の他の時代に比べても、ひときわ目立ちます。

安土桃山の名前の由来

安土桃山の名前は、信長と秀吉が拠点としていた地名からきています。信長は長篠(ながしの)の戦いの翌年(1576)から、琵琶湖(びわこ)東岸の安土山に五層の天守を持つ「安土城」を築き始めました。

安土城跡。大手道を上ると、望楼型地上6階地下1階の「天主」が威容を誇っていたという(滋賀県近江八幡市)

 

安土城(イメージ)。天主の高さは約32メートルあったという。

 

秀吉は、京都市伏見(ふしみ)区の桃山丘陵に「伏見城」を建て、晩年を過ごしています。伏見城は江戸時代に廃城となり、跡地には桃の木が植えられました。

伏見城のあった一帯は、後に「桃山」と名付けられ、豊臣政権を象徴する地名となったのです。

伏見桃山城。右が模擬大天守、左が小天守。1603年(慶長8)、徳川家康は征夷大将軍の宣下を伏見城で受けている。以後、秀忠、家光までここで宣下を受けた(京都市伏見区)

いつからいつまで?

安土桃山時代は、一般的には1573(天正元)~1603年(慶長8)の30年間を指します。

信長が室町幕府15代将軍・足利義昭(あしかがよしあき)を京都から追放し、室町幕府を滅亡させてから、徳川家康(いえやす)が江戸幕府を開くまでの期間です。

ただし、信長と秀吉が政権の中心にいた期間をどのようにとらえるかによって、時代の定義も変わってきます。

信長が上洛した年から秀吉が亡くなるまで、または関ケ原の戦いまでなど、複数の見方があるのです。

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安土桃山時代の主な出来事

30年ほどの短い間に、日本は大きく変わりました。安土桃山時代に起こった主な出来事を見ていきましょう。

南蛮貿易で「西洋文化」が広まる

安土桃山時代が到来する少し前から、日本には「南蛮(なんばん)」から、さまざまな文化が流れ込んできます。南蛮とは、スペインやポルトガルなどの西洋諸国を指します。

種子島(たねがしま)に鉄砲が伝わり、フランシスコ・ザビエルによってキリスト教が広まったのは有名な話です。その後も、多くの南蛮人が日本を訪れ、南蛮貿易が盛んに行われました。

南蛮人は毛織物やガラス製品、時計など、当時の日本にはなかった珍しい品物を持ち込みます。信長は南蛮人の文化に大変興味を示し、キリスト教の布教や南蛮貿易を後押しする政策をとりました。

織田信長が「安土城」を拠点に勢力を拡大

信長はもともと、尾張(おわり、現在の愛知県)の一部を支配するだけの弱小大名でした。

しかし、駿河(するが、現在の静岡県)の大名・今川義元(よしもと)を「桶狭間(おけはざま)の戦い」で破って勢力を広げ、尾張・美濃(みの、岐阜県)・近江(おうみ、滋賀県)を制圧して、ついに京都へ進出します。

その後、足利義昭を京都から追放した信長は、「長篠の戦い」で武田勝頼(かつより)を破り、天下統一まであと一歩のところまでたどり着きます。

「長篠の戦い」(1575/天正3)での織田信長本陣跡(愛知県新城市)

 

政権をほぼ掌握した信長が安土に築いた城は、それまでの城の常識を覆す斬新な設計でした。敵の攻撃を防ぐ工夫はほとんどなく、居住性や景観を重視した「平和な時代」のシンボルのような城だったのです。

安土城を拠点に、中国・九州地方の平定にとりかかろうとしていた矢先、「本能寺(ほんのうじ)の変」が起こります。家臣・明智光秀(あけちみつひで)の裏切りによって、天下統一の野望は断たれ、安土城も焼け落ちてしまいました。

豊臣秀吉が「天下統一」を成し遂げる

本能寺の変の直後、明智光秀を倒した秀吉が、織田政権の後継者となります。秀吉は朝廷に働きかけて「関白(かんぱく)」の座に就き、1590年(天正18)に関東の北条氏を滅ぼすと、ついに天下は統一されました。

秀吉の政策では、一揆防止策として僧侶や農民から武器を取り上げた「刀狩(かたながり)」や、年貢の徴収量を把握するための「太閤検地(たいこうけんち)」が有名です。

また、中国への進出を目論んで朝鮮に出兵するも失敗、2度目の出兵の翌年(1598)に伏見城で亡くなりました。

太閤秀吉坐像。1590年(天正17)9月に、千利休や小早川隆景らも参加した「有馬大茶会(ありまだいさのえ)」を開くなど、秀吉はたびたび有馬の湯を訪れたという(兵庫県神戸市北区有馬温泉)
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安土桃山時代に栄えた文化

信長・秀吉の革新性と南蛮貿易は、当時の文化にも大きな影響を与えます。安土桃山時代に栄えた、代表的な文化を見ていきましょう。

豪華絢爛な「城郭建築」や「絵画」

安土桃山時代は、国内情勢が安定しつつあり、海外からも多くの文化が入ってきたことから、人々の暮らしもだんだん豊かになっていきます。

諸大名は、しのぎを削って珍しい文化を取り入れ、優雅に暮らすようになりました。特に力を入れていたのが「居城の建築」です。

実用的な砦(とりで)とするよりも、権力を見せつけるような豪華絢爛(けんらん)な天守を持つ城が、次々に建てられました。優美な姿で知られる世界遺産の「姫路城」は、安土桃山時代の流行に合わせて改修された城です。

築城の流行とともに発展したのが、天井やふすまの「障壁画(しょうへきが)」です。「狩野永徳(かのうえいとく)」をはじめとする絵師は、金銀をふんだんに使った華やかな障壁画を描き、城を飾りました。

姫路城(兵庫県姫路市)。現在目にすることのできる大天守は、慶長14年(1609年)に建築されたもの。

千利休が確立した「茶の湯」

「茶の湯」は鎌倉時代に武士の間で広まり、貴族や大名、富裕層がたしなむ趣味として定着していました。

もともとは、豪華な美術品を鑑賞しながらお茶を飲む、というお金のかかる趣味でしたが、千利休(せんのりきゅう)が質素さの中に美しさを見出す「わび茶」を確立し、庶民の間でも大流行します。

茶の湯の流行に合わせて、茶室や茶道具などの需要も高まりました。

千利休屋敷跡。「茶聖」と称された利休は、写真の椿の井戸に、椿の炭を底に沈めていたという(大阪府堺市)

激動の安土桃山時代を学ぼう

安土桃山時代は政治・経済・文化すべてにおいて、激動の時代でした。たった30年の間に、政権をにぎる者が目まぐるしく交代したうえに、海の向こうからは、未知の文化がどんどん入ってきたのです。

人々は緊張感の中にも、好奇心や向上心を抱きながら暮らしていたのではないでしょうか。

桃山文化の華やかさは、天下を大きく動かした2人の武将のパワーや、人々の希望を象徴しているようにも感じられます。

安土桃山時代の出来事や文化を学び、日本史への理解を深めましょう。

もっと学びたい人のためのおすすめ本

小学館版学習まんが はじめての日本の歴史7「激突する戦国大名」


全15巻の歴史学習まんがシリーズ。この巻では戦国時代が描かれます。応仁の乱以降、北条早雲、斎藤道三、武田信玄、上杉謙信、織田信長などの戦国大名が力をつけ、領地をめぐって戦いが繰り広げられます。戦国大名が現れることになった経緯、合戦に使われた武器、最後に勝ち残ったのは誰なのか等、激動の時代を多角的に読み解いていきます。

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全15巻の歴史学習まんがシリーズの8巻で扱うのは、織田信長の後継者として天下統一に突き進んでいった豊臣秀吉の時代。巧みな戦法と検地・刀狩りなどの事業でなしとげた天下統一事業を追います。また、秀吉亡き後「天下分け目の戦い」に勝ち江戸幕府を開いた徳川家康の、260年続く江戸幕府の基礎を作った政策など、安土桃山時代から江戸時代初期のお話をまんがのストーリーでしっかり把握できます。

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構成・文/HugKum編集部

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