生わかめの注意点
はじめに、生わかめと食中毒についてご説明します。「刺し身わかめ」や「カットわかめ」の生食には、危険はないのでしょうか。確かめます。
下茹で後に作られる、塩蔵・乾燥わかめ
海から採取した、そのままのわかめを「生わかめ」と呼びます。生わかめは褐色で潮の香りが強く、ゴワゴワですから、そのまま食べようという気持ちはおこらない代物です。これを沸騰したお湯に入れて、鮮やかな緑色に茹であげると「刺し身わかめ」となって食卓に並びます。「刺身」と呼んでいますが、そのまま口にするわけではありません。
また、茹でたわかめを塩漬けにすると「塩蔵わかめ」となり、カットして乾かせば「増えるわかめ」「カットわかめ」として店頭に並びます。つまり、塩蔵わかめ、乾燥わかめは共に、下茹ではされて加熱済みなので、食中毒の危険がある菌は死滅しています。ご安心してお召し上がりください。
塩分のあるところで増える菌
海から採取した生鮮食材が原因となる食中毒は、「腸炎ビブリオ菌」という細菌です。塩分が3%前後の場所でよく繁殖し、腹痛や激しい下痢の症状が出ます。4℃以下であればほとんど繁殖しませんが、20℃を超えると活発に増えます。弱点は、真水と熱で、加熱すれば死滅します。お味噌汁などに入れたわかめは、加熱調理なのでまったく心配ありません。
予防策は
わかめによる食中毒は夏に多く発生しており、原因は、他の魚介類の調理によって残った菌が、塩蔵わかめの塩水で繁殖することです。わかめに直接の原因はなく、戻す水が菌を繁殖してしまう場合があるのです。これは、カットわかめを戻す水も同様で、気をつけなくてはいけません。
魚介類の調理をした後は、包丁とまな板をよく洗うことが大切です。また、戻した後のわかめを、長時間放置することもよくありません。戻した後にすぐ食べる生食ならまったく問題はなく、さらに湯通しをすれば懸念も解消されます。
生わかめの保存
生のわかめは、だいたい3月頃から店頭に並び始め、5月くらいまでしか手に入りません。目に止まったら、お家で保存処理をしてみてはいかがでしょうか。
生わかめは日持ちしない
茹でる前の生わかめは、その日のうちに出荷されるくらい新鮮さが命です。日持ちがしませんからできるだけ早く下茹でをして、冷凍、塩漬け、乾燥のうち、どれかの方法を施します。
下茹でするまでの保存方法は
茹でる直前まで、できるだけ空気に触れないよう、ポリ袋などに入れて封をし、冷蔵庫で保存します。
冷凍保存するなら
こちらの記事では生わかめを下茹でし、冷凍する方法を詳しくご紹介しています。また、塩蔵わかめの塩抜きについてもご紹介していますので、御覧ください。
塩漬けの方法
下茹でした生わかめを、ご家庭で塩漬けにする方法をご紹介します。
材料
茎を切り取った生わかめ 500g
塩 250g(生わかめの重量、半分程度が目安)
塩漬けの手順
【1】沸騰したお湯に生わかめを入れて湯通しします。1〜2分で鮮やかな色に変わったら引き上げ、水に浸します。
【2】水をよく切った【1】に、まんべんなく塩をまぶします。ザルとボウルを重ねてからわかめを入れて、そのまま冷蔵庫に保存します。1日程度かけて、しっかりと水を切ってください。
【3】空気に触れないようにビニール袋に入れて、冷蔵庫で保存します。
・使い方
【1】塩漬けにしたわかめは、必要な分量をカットしながら使っていきます。カットした後の残りは、引き続き保存してください。
【2】必要な量の塩漬けわかめを流水で洗い流します。おおまかに塩を洗い流してください。
【3】真水に5分程度浸けると、3倍程度に膨らみ、食べることができます。戻しすぎは、柔らかくなるので気をつけてください。
干して保存する方法
茹でた後のわかめは、干して保存する方法もあります。自家製の乾燥わかめです。
干す手順
【1】生わかめを洗濯バサミなどで挟み、2〜3日風通しの良い場所で乾かします。
【2】茎の部分が残っている場合は、水分が残りやすいため、葉の部分に触ると割れる程度まで乾かしてください。
【3】湿気のない冷暗所で保存します。
・使い方
【1】干しわかめを、使いたい分量だけカットします。
【2】真水に浸けて、5分程度で柔らかくなります。
茎わかめの保存
わかめの茎の部分は硬く、葉の部分よりも長い茹で時間が必要なため、先に包丁で切り取っておきます。茹で方のコツと、保存の方法を確認します。
冷凍保存の方法
茎わかめも、葉部分と同じ工程で塩漬けができますが、でここでは冷凍保存の方法をご紹介していきます。
【1】生わかめから茎の部分を切り取ります。
【2】硬い茎部分を茹でる際は、沸騰したお湯に最初に入れ、20秒ほど経ってから葉を茹でると手間がかかりません。さらに3分程度茹でれば、葉も茎も食べごろです。茎部分は細切り、またはみじん切りにしてください。
【3】冷凍する場合は、フリーザーバックに入れて保存します。
保存期間
茎わかめの保存は、冷蔵で2~3日程度、冷凍は1か月程度のうちに、お召し上がりください。
解凍方法
温かい汁物ならそのままで、サラダのような冷食なら水で解凍します。
・加熱調理にはそのまま
お味噌汁のような加熱料理に茎わかめを使う場合は、解凍せずに鍋に加えます。温まれば、いただきます。
・水で解凍
冷凍した茎わかめは、水に浸けて解凍することもできます。歯ごたえを楽しむ酢の物に使ってください。
【1】ボウルに張った水の中に、冷凍した茎わかめを入れて5分くらい置いてください。
【2】水気をしっかりと切って、酢の物やサラダなどに加えます。
生わかめ 一週間日替わりレシピ
中華風の味付けにも使われるわかめは、冷やし中華、にゅうめんにするとよく合います。その他、和風の茶碗蒸しや、うどん、スープのレシピをご紹介します。定番のサラダや、酢の物、お味噌汁と組み合わせて、1週間毎日食べても無理のない、こんな「わかめ使いまわしレシピ」はいかが。
【1】マイルド冷やし中華
酸っぱさ控えめで、ごま風味。無駄に捨てることなくできるきゅうりとソーセージの星形の飾りがGood!
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
中華麺 3玉(300g)
卵 3個
魚肉ソーセージ 2本
きゅうり 1本
長ねぎ 1/2本
トマト 1個
わかめ(乾) 大さじ2
サラダ油 少々
【A】
しょうゆ 1/2カップ
酢 1/2カップ
水 1/2カップ
砂糖 大さじ2
ごまだれ(市販) 大さじ4
◆作り方
【1】小鍋に【A】の酢と砂糖を入れて中火にかけ、ひと煮立ちさせて砂糖を溶かす。残りの【A】を加えて混ぜる。
【2】卵を溶いて水大さじ2を加えて混ぜ、サラダ油を熱したフライパンに流し入れ、スクランブルエッグを作る。
【3】魚肉ソーセージときゅうりは小口切りにして型抜きし、中身を詰め替える。長ねぎは4cm長さの細切りにし、サッとゆでる。トマトはくし形に切る。わかめは水に5分ほどつけて戻す。
【4】麺は表示時間どおりにゆで、冷水にとって水けをきる。器に盛って【2】と【3】をのせ、【1】をかける。
教えてくれたのは
みないきぬこさん
女子栄養大学を卒業後、料理研究家のアシスタントを経て2007年独立。料理家、フードコーディネーターとして幅広い分野で活躍中。女の子のママ。
『めばえ』2014年8月号
【2】わかめにゅうめん
たっぷりトッピングしたわかめもネギも、めんと一緒ならスルスル食べやすい。
◆材料
(2人分)
乾燥わかめ 5g
そうめん 2束
にんにく 1/2かけ
小ネギの小口切り 適宜
ごま油、酒 各大さじ1
煮干だし 500ml
しょうゆ 小さじ2
塩 少々
◆作り方
【1】わかめは水(分量外)につけて戻す。
【2】鍋にごま油を熱し、すりおろしたにんにく、水を切った【1】を中火で炒める。香りが立ったら酒、煮干だしを加え、煮立ったら弱めの中火で3~4分煮る。しょうゆを加えて塩で味を調える。
【3】そうめんは袋の表示通りにゆでて流水で洗って水気を切る。器に盛り、【2】をかけてネギをのせる。
教えてくれたのは
コウ ケンテツさん
料理研究家。旬の素材を生かした簡単&おいしい&ヘルシーな家庭料理が人気。テレビや雑誌、講演会など幅広く活躍し、著書も多数。1男2女のパパでもあり、食育や食を通してのコミュニケーション活動にも力を入れている。
『めばえ』2018年3月号
【3】豚肉だんごうどん
お肉を丸めておつゆにぽとん。簡単肉団子は噛み応え十分でうどんと一緒に食べればお腹も満足。
◆材料
(3~4人分)
ゆでうどん 3玉
豚こま切れ肉 200g
しょうがのすりおろし 小さじ1/2
片栗粉 大さじ2
にんじん 40g
乾燥わかめ、青ネギの小口切り 各大さじ2
めんつゆ(希釈済みのもの) 500ml
◆作り方
【1】うどんは熱湯でゆがく。
【2】豚肉はしょうがのすりおろしを混ぜて、ひと口大のだんご状に丸め、片栗粉を全体にまぶす。にんじんはいちょう切りにする。
【3】鍋にめんつゆを入れて中火にかけ、【2】を加えて加熱する。乾燥わかめを加える。
【4】【1】を器に盛り付けて【3】をかけ、青ネギを散らす。
◆ポイント
こま切れ肉をだんご状に
教えてくれたのは
渥美まゆ美さん
あつみまゆみ/管理栄養士。フードコーディネーター。健康運動指導士。保育園勤務で子どもの料理提供に関わる。料理講師やセミナー講師などフリーランスで活動後、「株式会社Smile meal」を設立。食育など食と健康に関わる活動を行う。
『めばえ』2018年1月号
【4】豆腐茶わん蒸し
ムラなく仕上がり、食べごたえもあり。
◆材料
(大人2人+子ども2人分)
絹ごし豆腐 1丁(300g)
卵 3個
【A】
塩 小さじ1/2
豆乳 1カップ
乾燥わかめ 大さじ1
【B】
鶏ひき肉 50g
しょうゆ 小さじ2
砂糖 小さじ2
なると 4切れ
◆作り方
【1】わかめは水でもどして粗く刻み、【B】と混ぜ合わせる。豆腐は1/4丁分を具材用に角切りにする。
【2】卵をほぐし、【A】を加えて混ぜる。
【3】豆腐の残りをボウルに入れて、ホイッパーかフォークでなめらかになるまで混ぜ、【2】を少しずつ加えながら混ぜ、万能こし器でこす。
【4】耐熱容器に【1】となるとを入れて、【3】を注ぐ。蒸し器に入れ、ふたを少しずらし、弱火で10~12分蒸す。
教えてくれたのは
青木 恭子さん
小田真規子主宰のスタジオナッツ所属。2つの保育園に7年間栄養士として勤務。0歳児の離乳食~5歳児の給食とおやつ作りを担当。現在は、雑誌から商品パッケージ、WEBなどで活躍。
『ベビーブック』2012年8月号
【5】オクラとわかめのかき卵汁
お星様のようにかわいくオクラを浮かべれば、食べる楽しみがぐんとUP♪ 卵の黄色とオクラの緑がキレイ。
◆材料
(大人2人+子ども1人分)
オクラ 4本
だし汁 2カップ
乾燥わかめ 小さじ1
しょう油 小さじ2/3
【A】
片栗粉 小さじ2
水 大さじ1
卵 1個
◆作り方
【1】オクラは塩少々(分量外)をふって軽くこすり合わせ、うぶ毛を取る。水洗いして輪切りにする。
【2】鍋にだし汁とわかめを入れて中火にかけ、煮立ったらオクラを加える。サッと煮たらしょう油を加えて混ぜ、一旦火を止める。よく混ぜ合わせた【A】を回し入れて混ぜ、再び中火で混ぜながらとろみをつける。
【3】溶いた卵を回し入れ、ゆっくりとかき混ぜる。
教えてくれたのは
松尾みゆきさん
管理栄養士・料理研究家・フードコーディネーターとして、テレビや雑誌、書籍等、幅広く活躍の傍ら、幼児がすすんで食べるおいしさと栄養にこだわったメニューを日々考案している。二児の母。
『めばえ』2018年7月号
肉厚で食べごたえあり、ヘルシーな生わかめ
わかめといえば、カットわかめを思い浮かべる方も多いと思いますが、生わかめの扱いも比較的簡単で、使い方は難しくありません。肉厚で食感がしっかりとあるため、カットわかめよりも食べごたえあります。ダイエット中の方には特におすすめですよ。ヘルシーなおいしさに新発見があるかもしれません。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)