どんなときに子どもは困った行動をするの?【アドラー式子育て術「パセージ」】に学ぶ対処法

子育て中の保護者のみなさん、「ダメでしょ!」「何回言ったらわかるの!」と声を荒げる日々をお過ごしではありませんか? それは「子どもの困った行動(=アドラー心理学では「不適切な行動」と呼びます)をどうしたらやめさせられるのか」というふうに考えているからではないでしょうか。

そこで今回は、アドラー式子育て術「パセージ」による、子供が困った(不適切な)行動をしたときの対処法を、日本アドラー心理学会カウンセラーの清野雅子さん、岡山恵実さんに教えて頂きました。「パセージ」では、悪い行動をやめさせるのではなく「よい行動をどうしたら増やせるだろうか」と考えて、適切な行動を増やすことを目標にして「勇気づけ」を行っていきます。また、勇気づけの構えや感情のコントロールの仕方などもご紹介します。

どんなときに子どもの困った行動は起こるの?│アドラー式子育て術「パセージ」の対処法

困る母親
子どもの困った行動はなぜ?

子どもの困った行動=「不適切な行動」の目的とは?

幼児の段階に多いことですが、子どもがその行動を不適切だと知らないでやっている場合があります。たとえば、公園で楽しく走り回っていて花壇に入ってしまうというようなことです。この場合「花壇は遊ぶところではないのよ」、とそれは「不適切な行動である」ことを教えてあげましょう。そうすれば、子どもは理解してくれます。

ある程度分別がつく年齢になった子が、テストでカンニングをしたらどうでしょう。「コツコツ勉強するのは面倒だ」「どうせ無理、いい点はとれないんだ」と、安易な行動に走っていると考えられます。これは、適切な行動は知っているけれど、失敗してしまうことを恐れて臆病になり、不適切な行動をしているのです。このような場合は、適切な行動を増やすためのたくさんの勇気づけが必要となります。

子どもが不適切にふるまう2つの目的

対人関係上の目的を達成するために、子どもが不適切にふるまうことがあります。よくある、2つの目的について考えてみましょう。

1. 注目関心

たとえば、楽しかった話をしようと思ってお母さんに話しかけたとします。しかしお母さんは、何かに夢中でこっちを向いてくれなかった。がんばって自分のことを自分でやったのに、まったく関心をもってくれなかった…。こんなふうに子どもから見て「無視されている」ことが続くと、子どもは「自分はいつも仲間はずれだ」と信じるようになってしまいます。無視されて寂しい思いをしていたとき、約束を守らないなど不適切な行動をした途端に、お母さんから「ダメでしょっ!」と叱られたら…。子どもは「そうか、悪いことをすればお母さんは自分に関心をもってくれる」と感じるのです。無視されるより、怒られてでも自分のほうを向いてもらえるほうがマシなのです。そこで子どもは、自分が注目関心を集めているときは「仲間はずれじゃない」と信じてしまいます。そして不適切な行動を続けるのです。

このように、子どもの行動の目的が、「注目関心を引く」という場合、親はイライラしますよね。そして子どもを迷惑な存在、あるいは手間のかかる子だと思ってしまうことでしょう。親子の問題の9割方がこの段階なのです。

2. 権力争い

親が子どもに、不適切な行動をやめさせようと無理やり強圧的に出ると、親子のコミュニケーションは、注目関心を引くよりもっと悪い段階に進みます。それは、相手に負けないための、“権力争い”になることです。権力争いになると、活発な子どもであれば「負けないぞ!」とケンカを売ってくることでしょう。親も挑発されているように感じて本気でケンカを買ってしまい、悪循環に陥るのです。おとなしい子どもだと、静かに反抗を続けます。

いずれにしても、親も子も腹を立てています。権力争いがある限り、子どもを援助することはできません。まず親がしなければならないことは、子どもとの権力争いをやめること。つまり、勝ち負けゲームのリングから降りることが大切です。

✔不適切な行動は、自分の居場所を見つけるための努力

この2つの目的は、心理的(無意識的)なことですから、子どもに聞いても、「わからない」とか、「わざとではない」と答えるでしょう。

「アドラー心理学」では、人間の行動の一番の目的は“所属”だと考えます。不適切な行動は、どれもこれも、“所属”のための努力=自分の居場所を見つけるための努力なのです。いつも子どもが「自分は家族の中で、なくてはならない存在だ」と感じてくれるよう、親は一緒に生きていくかけがえのない仲間としてつき合っていけるようにしていきましょう。

子どもが困った行動をしたときの「勇気づけ」の構え│アドラー式子育て術「パセージ」の対処法

笑顔の親子
「勇気づけ」の構えとは?

「勇気づけ」の前に感情の点検を

ここで、「勇気づけ」の例を見てみましょう。

たとえば、子どもが約束の時間に帰ってこず、お母さんはイライラして帰りを待っているとします。そこに、1時間遅れで子どもが帰ってきました。いつもだったら「何してたの!」と怒っていたところですが、「勇気づけ」をしなくては、とイライラする気持ちを抑え込んで「遅れたから走って帰ってきたのね」「今度からどうしようか?」と子どもに話しかけたとします。

実は、これだと「勇気づけ」にはなりません。なぜなら、お母さんの感情がマイナスなので、これは負の注目です。子どもは「あぁ、怒ってるな。皮肉を言われているんだ」と思うでしょう。せっかく「勇気づけ」ようとしたのですが、マイナスの感情のまま、言葉かけだけを変えても子どもを「勇気づけ」ることができないのです。「勇気づけ」を始めるまえに、あなたの感情の点検が必要です。

プラスの感情とマイナスの感情

「アドラー心理学」では、感情は目的があって作り出され、使われているのだと考えています。感情には、プラスの感情(喜ぶ・楽しむ・愛するなど)とマイナスの感情(怒る・不安になる・悲しむ・後悔するなど)があります。どちらもあなたが作り出し使っている点では同じです。

プラスの感情は、人と人とを結びつける力があります。マイナスの感情は、人と人を切り離す力があります。たとえば、怒りの感情は相手を恐れさせ、こちらの言うことをきかせるためには有効です。しかしながら、相手との関係が悪くなってしまいます。

まず自分自身の感情に気づけるようになりましょう

感情は身体が教えてくれます。人によってさまざまですが、マイナス感情があると、身体のどこかに緊張感がありますし、プラスの感情があると、身体がゆるんだ感じがあるでしょう。身体に敏感になって暮らしてみると、感情に気づけるようになります。

マイナス感情に気づいたら…

マイナス感情がなくなる工夫が必要です。さしあたっては、その場を離れる、深呼吸する、お茶を飲むなど、気分を落ち着かせてみてはどうでしょうか。要するに、自分なりの方法でクールダウンするのです。

プラスの面を探しましょう

子どもの不適切な行動の中のよかったところを探してみましょう。よく観察して考えると必ずあります。

また、ふだんの子どもの行動から「子どもはいつでも適切な行動をしている」と思って意識的に探しましょう。「あたり前」は、すべて適切な行動です。そう思って振り返ると、子どもが朝起きてくることも、ごはんを食べてくれることも、生まれてきてくれて、今日まで一緒に暮らしていることも、毎日が膨大な適切な行動であふれていることに気づくことでしょう。そして、あなた自身のよかったところも探してください。

こういうプラスの面を絶えず丁寧に探す新しい暮らし方を始めると、勇気づけの構えが整ってきます。また、子どもに学んでもらいたいことを、マイナスの感情を使わずに子どもと話し合えるようになりますよ。

参考書籍『ほめない、しからない、勇気づける 3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」』

書影
ほめない、しからない、勇気づける 3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」

 

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『ほめない、しからない、勇気づける 3歳からのアドラー式子育て術「パセージ」』について

『嫌われる勇気』の大ヒットで空前の大ブームとなったアドラー心理学は、元来「教育と子育て」に根ざしたものです。本書は、30年以上支持されてきた、アドラーの考え方に基づいた子育て学習プログラム「パセージ」を紹介する初めての書籍。「パセージ」を学ぶお母さんのいる家庭をモデルにして、日々の子育てのお悩みエピソードをマンガで提示し、アドラーの思想に則った解決策を学びます。自立し、社会と調和して生きていく大人に育てるための、21世紀型「問題解決能力」を育む子育てメソッドです。

著者・清野雅子、岡山恵実プロフィール

清野雅子(せいの・まさこ)

日本アドラー心理学会カウンセラー。野田俊作氏による育児勉強会を経て、草創期から『パセージ』を学ぶ。家族コンサルタントとして「パセージ」のリーダーを務める。2女の母。

岡山恵実(おかやま・えみ)

日本アドラー心理学会カウンセラー。家族コンサルタントとして「パセージ」のリーダーを務める。自助的学習グループ「アドラー銀杏の会」主宰。1女の母。

アドラー銀杏の会

 

文・構成/HugKum編集部

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