Q : 夫は子どもをかわいがりますが、子どもの世話はあまり手伝いません。そのせいか、子どもも夫と遊びたがらないのですが……。
A : 子どものために何ができるか、話し合いを
最近では、育児に積極的にかかわる父親が増えてきました。ただし、実際の「かかわり方」が具体的に示されていないため、意欲が空回りしたり、夫婦間でかみ合わなかったりすることもあるようです。子どもの世話や家事だけでなく、妻を精神的に支えるなど父親に求められる役割はさまざまです。それぞれの家庭に合った方法を夫婦で探っていくことが大切です。
「ママがいい」は「パパがいや」ではない
3歳ぐらいまでの子どもがもっとも必要としているのは、「安心」と「安定」。これを与えてくれるのが、母性です。この時期の子どもが母親を強く求めるのは、自分の分身のような存在に守られ、安心したいからなのです。こうした時期を過ぎると、子どもには「挑戦したいこと」が増えてきます。初めてのことをしてみたい。新しいことを知りたい……。こんなときこそ、父親の出番。父性は、子どもが「頑張るとき」「意欲を出すとき」に 効果を発揮するといわれているからです。
父親におすすめなのは、子どもが興味を示したことに一緒に取り組むことです。とくに体を使うアクティブな遊びは、 父親の得意分野です。多くの場合、子どもは午前中に気力が充実しているもの。まずは子どもの体調がよい日の午前中を選んで、一緒に遊ぶことから始めてみましょう。
とはいえ、子どもとのかかわりはスムーズに運ぶとは限りません。よく聞くのが、「子どもが母親から離れない」というもの。母親にしてみれば「私ばかりが世話をしてきたから、子どもがパパになついていないのよ!」と言いたくなるかもしれませんが(笑)、子どもの「ママがいい」は、父親をいやがっているせいではありません。
母親の「パパにしてもらいなさい」などの言葉は、子どもに「ママは自分と過ごすのをいやがっているのではないか」と感じさせます。そのせいで子どもは不安になり、かえって母親にしがみつくことになってしまうのです。
「ママがいい」を解消したいなら、夫婦で子どもを奪いあってみせましょう。子どもを父親に押しつけるのではなく、「ママもあなたと遊びたいけれど、パパにゆずった」という形にするのです。愛情が確認できれば子どもは安心し、母親から離れることができます。
自分たちなりに無理なく暮らす工夫を
こうした「見せ方の工夫」は、夫にも有効です。家事や育児の手助けがほしいなら、愚痴や大変さのアピールは逆効果。それより、子どもの成長ぶりや一緒に過ごす楽しさなどのポジティブな情報を伝え、「子育てって幸せ」というオーラを思いきり出す(笑)! そうすると、父親は「自分も同じ体験をしてみたい」と思うもの。自発的に子どもにかかわるようになるでしょう。
親には、子どもの生き方をプロデュースしていく責任があります。夫婦で意見が異なることもあるでしょうが、そんなときは「子どもにとって何がよいのか」を冷静に話し合い、「協働」していくことが大切です。家庭の中での平等は「すべてを半分」にすることではなく、それぞれの特性を生かし、無理のない形で仕事をシェアすること。子育ての正解はひとつではありません。夫婦で協力し合い、「わが家流」の方法をつくり上げていってください。
記事監修
乳幼児教育保育実践研究家、非営利団体コドモノミカタ代表理事。東京家政大学短期大学部保育科を卒業。東京家政大学ナースリールーム主任、東京家政大学・同短期大学部非常勤講師を42 年務める。著書に「保育でつむぐ 子どもと親のいい関係」(小学館)など。
イラスト/小泉直子 構成/野口久美子 めばえ2019年3月号
親と子をつなぐ、2・3・4歳の学習絵本『めばえ』。アンパンマン、きかんしゃトーマスなど人気キャラクターと一緒に、お店やさんごっこや乗り物あそび、シールあそび、ドリル、さがしっこ、めいろ、パズル、工作、お絵かきなど、様々なあそびを体験できる一冊。大好きなパパ・ママとのあそびを通して、心の成長と絆が深まります。