「未曾有」の正しい読み方わかる? 意味、使い方の注意点、英語表現も紹介

「未曾有」とは「これまでに一度もないほど、珍しいこと」をあらわす言葉です。「未曾有」は近年よく聞く言葉ですが、正しい読み方を知っていますか? そこで今回は、「未曾有」の正しい読み方や意味、例文、英語表現も紹介します。

「未曾有」とは?

近年、ニュースなどで「未曾有の事態に直面している」「未曾有の危機だ」などという表現をよく見かけるようになりました。「未曾有」という言葉は、誤読されやすい言葉でもあるので、正しい読み方を知っておくことが大切です。

まずは、「未曾有」の読み方や意味、由来を見ていきましょう。

読み方と意味

「未曾有」の読み方は「みぞう」。「みぞうう」と読むこともできますが、「みぞう」と読む方が一般的です。

「未曾有」は誤読されやすい言葉でもあります。「みぞうゆう」「みぞゆう」と間違って読まないように注意してください。「未曾有」の意味を辞書で引くと下記の通り。

1 今までに一度もなかったこと。また、非常に珍しいこと。希有(けう)。みぞうう。
2 十二分経の一。仏・菩薩(ぼさつ)による奇跡を記した経典。(<小学館 デジタル大辞泉>より)

現在日常的に使われているのは、1の意味です。そもそも「未曾有」とは、「未(いま)だ曽(かつ)て有らず」の意。つまり、「これまでに一度もないほど、珍しいこと」をあらわします。

なお、「未曾有」の「曾」は常用外漢字のため、常用漢字の「曽」を使って「未曽有」と表記しても問題ありません。

由来・語源

「未曽有」の語源は、「非常に珍しいこと」を意味するサンスクリット語「adbhuta(アドゥブタ)」とされています。仏教が日本に伝わったとき、三蔵法師が「adbhuta」を「未(いま)だ曽(かつ)て有らず」という意で、「未曽有」という漢字を当てたのだそう。これが、「未曽有」の由来です。

もともと仏教において「未曽有」は、「今までにないほどの素晴らしい教えや功徳」という意味で使われていました。悟りをあらわす「涅槃」の同義語としても扱われ、「奇跡」という意味合いもあったのだそう。

このように、仏教ではポジティブな意味合いで使われていました。しかし現在では、「未曾有の大災害」「未曾有の危機」など、ネガティブな文脈で使われることが多いです。

使い方を例文でチェック!

「未曾有」は、「未曾有の事態」「未曾有の危機」「未曾有の災害」などと、別の言葉と組み合わせて使われることが多いです。

また、本来は良い意味の言葉ですが、現在ではネガティブな文脈で使われるというのもポイント。それぞれ例文を見ていきましょう。

・卒業式や修学旅行も延期になるなんて、まさに未曾有の事態だ。
・ここ数年、日本のみならず世界中が未曾有の危機に直面している。
・未曾有の災害がいつくるかもわからないので、しっかりとした備えが大事だ。
・○○県で起きた洪水は、未曾有の被害をもたらした。
・かつてないほどの未曾有の惨事に見舞われ、関係者は対応に追われている。

類語や言い換え表現とは?

「未曾有」の類義語には、「前代未聞」「空前絶後」「比類ない」「かつてない」などがあります。それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。また、例文も一緒に紹介しますので、使用するときの参考にしてみてくださいね。

1:前代未聞

「前代未聞」とは、「ぜんだいみもん」と読みます。「前代」とは前の時代、「未聞」とは、まだ聞いたことがないことという意味です。つまり「前代未聞」で、「これまでに一度も聞いたことのないような珍しいこと」をあらわします。単に「非常に珍しいこと」をさす言葉ですが、現在ではネガティブな文脈で使われることが多い言葉です。

・前代未聞の不祥事に、国民が腹を立てている。
・うちの小学校から難関校に5人も合格するとは、前代未聞だ。

2:空前絶後

「空前絶後」は、お笑い芸人のネタで聞いたことあるという方もいるのではないでしょうか? 「空前絶後」の読み方は「くうぜんぜつご」。意味は、「これまでに例がなく、これからもありえないこと」「非常に珍しいこと」です。「空前」とは、「それより前に例がないさま」、「絶後」とは「これからも二度と起きないようなこと」。この2つを組み合わせた四字熟語です。

・鬼と戦う姿を描いたアニメは、空前絶後のヒットとなった。
・新しくリリースしたサービスは、空前絶後の反響があった。

3:比類ない

「比類ない」とは「ひるいない」と読みます。意味は、「比較できるものがない」。他に比べるものがないほど、素晴らしい、優れているという意味合いで使われます。「未曽有」は、現在ではネガティブな文脈で使われることが多いですが、もともとは「これまでにないほど素晴らしい」といった意味合いがあると説明しました。そのため、「比類ない」は「未曽有」の本来の意味に近い類語といえるでしょう。

・同じクラスのAくんは、比類ない秀才だ。
・エメラルドグリーンの海は、比類ない美しさだった。

4:かつてない

「かつてない」は、「これまでに一度もない」という意味です。「かつて」は「曾て」と表記することもできます。「未曽有」の語源である「未(いま)だ曽(かつ)て有らず」ととてもよく似た表現ですね。

・温暖化の影響で、今年に夏はかつてないほどの暑さだ。
・息子はかつてないほどの集中力で勉強に取り組んでいる。

英語表現とは?

「未曾有」を英語には、どのような言葉があるのでしょうか? ここでは、「unprecedented」「unheard-of」「unparalleled」の3つをピックアップ。言葉の意味や例文を紹介します。

1:unprecedented

「unprecedented」は、「前例のない」「前代未聞の」などの意味を持つ英語です。「前例がある」という意味の「precedented」に「un」をつけて、「precedented」の意味を否定しています。

例文:This is unprecedented crisis.(これは前代未聞の危機だ)

2:unheard-of

「unheard-of」は、「聞いたことがないほどの」「前例のない」「未曾有の」という意味。こちらも、「聞いた」を意味する「heard」に、否定を意味する「un」をつけて、「聞いたことがない」という意味になっています。

例文:It is an unheard-of scandal.(未曾有の不祥事だ)

3:unparalleled

「paralleled」は「平行して」「相似する」という意味の英語。これに否定語の「un」をつけることで、「並ぶものがない」「未曾有の」という意味になります。フォーマルな表現なので、日常会話で使うよりはビジネスシーンなどのかしこまった場面で使うといいでしょう。

例文:It was a tragic accident unparalleled in history.(それはこれまでにないほどの悲惨な事故だった)

最後に

「これまでに一度もないほど、珍しいこと」を意味する「未曾有」。現在では、ネガティブな文脈で使われることの多い言葉ですが、もともとは「奇跡」といったニュアンスを含む言葉が語源とは意外でしたね。「奇跡と思えるほど、珍しい出来事」があったとき、ぜひ「未曾有」を使って表現してみてはいかがでしょうか?

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構成・文/結野雅美(京都メディアライン)

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