そんな、やながわ有明海水族館の館長を2021年からつとめているのが、高校3年生の亀井裕介さんです。その豊富な知識をかわれて、中学3年の時に副館長に、高校2年の時には館長に任命されました。
全国の生き物好きの子どもたちにとって、まさにヒーローのような存在の亀井さんが、生き物にのめりこみ、自ら学びを深められた背景には、どのような出会いと環境があったのでしょうか。
目次
高校生で館長に任命された亀井さんはどんな学びをしてきた?
好きになれるものに出会い、とことん熱中させてもらえる環境だったことが、今につながっていると振り返る亀井さん。小学生の頃に読んでいた本や育った環境など、現在までの軌跡をお伺いしました。
図鑑は全て暗記。好きなものに熱中する楽しさを知った小学生時代
小学生の頃は、水族館や図鑑、そして人から聞くことで魚の知識を得ることが多かったという亀井さん。どんな幼少期を過ごし、どのようなきっかけで魚が好きになったのでしょうか。
Q 小さい頃はどのような遊びをしていましたか?
亀井さん:幼い頃から、川遊びや虫とりなど自然の中で遊んでいるような子どもでした。父にはよくバイクで自然豊かなところに連れて行ってもらいましたし、母には科学館などにも連れて行ってもらいました。
今振り返ると、色々な経験をさせてもらったことが、自然環境や生き物に興味を持った大きなきっかけの一つになっていると感じています。
Q 魚に興味を持つようになったきっかけは?
亀井さん:小学4年生の頃に沖縄の美ら海水族館を訪れ、ジンベエザメに感動したことがきっかけで、水族館巡りをするようになりました。とは言え、海の生き物に対しては、どこか遠いものに感じていて、そこまで興味を持っていたわけではありませんでした。
その後、小学6年生の時にやながわ有明海水族館に出会い、当時の館長さんから“川にも多種多様な生き物がいる”ということを教えてもらいました。
「身近な“川”という場所にも、こんなに知らない世界が広がっていたのか!」とすっかりのめりこみ、以来、淡水魚に興味を持つようになりました。
Q 小学生の頃、良く読んでいた本はありますか?
亀井さん:愛読書は「小学館の図鑑NEO 魚」でした。小学4年生の頃には、図鑑に載っている全ての魚を暗記していたので、クラスメイトによく図鑑の一部分を隠してもらって、当てられるかどうかクイズを出してもらったりして遊んでいました。後に出版された「小学館の図鑑Z 日本魚類館」は今でも愛読しています。
両親は程良い距離で見守ってくれていたのですが、時々、生き物の本などをそっと置いてくれたりもしていました。
水族館の常連客から館長に任命!
やながわ有明海水族館に出会ったことがきっかけで、淡水魚の魅力にますますのめりこんでいった亀井さん。お客さんだった亀井さんが館長になるまでのストーリーを伺いました。
Q どのような経緯でやながわ有明海水族館の館長になったのですか?
亀井さん:やながわ有明海水族館に出会ってからというもの、すっかりこの場所が好きになり、足繁く通うようになりました。そのうち水族館のスタッフさんにも顔を覚えられて、やがて水槽のお掃除などのお手伝いやNPOの活動にも参加させてもらうようになりました。
中学3年の時、当時の館長さんが辞められる折に、副館長に。そして、高校2年の時に当時の館長さんが辞められるということで、館長に就任しました。
一言で言うと…「常連客が館長になった」というところでしょうか。
Q 館長を務める中で、大変だったことや逆に嬉しかったことを教えてください。
亀井さん:高校生活に加え、片道約2時間の通勤と水族館運営は、精神的にも身体的にもきついと感じる時は、正直あります。「館長やめようか」と思う時もありました。
でも、最近は水族館をテレビなどで取り上げて頂くことも増え、来館者も増えているのを感じると、やりがいを感じますし、嬉しい気持ちでいっぱいになります。
珍しい生き物を含む約80種類程の生き物が楽しめる館内
「子ども達が生き物に興味を持つきっかけになってほしい」という願いのもと、2016年10月にリニューアルオープンしたというやながわ有明海水族館。亀井館長自ら、水族館の見どころや推しを教えてくれました。
Q やながわ有明海水族館の見どころを教えてください。
亀井さん:地元柳川の希少な淡水魚や有明海のユニークな生き物、世にも珍しい「白いスッポン」などを含む、約80種を展示しています。
小規模な水族館ですが、その分、スタッフや生き物との距離を身近に感じられるアットホームな雰囲気もウリです。エサやりやふれあいなど体験型のイベントも多いですし、最近は、生き物好きの子ども達に、1年間入館を無料にする代わりに、掃除や接客などを手伝ってもらう「子ども職員」という活動もやっています。
Q これだけは絶対見逃さないで欲しいという生き物はなんですか?
亀井さん:一番の推しは“ワラスボ”です。日本では有明海と八代海にしか生息していないハゼの仲間で、その独特な見た目から「有明海のエイリアン」とも呼ばれています。館内ではTシャツやステッカーなども販売していて、とても人気です。
生き物好きの子ども達を生き物オタクに育てたい
現在は高校生活の傍ら、片道2時間をかけて通勤し、水族館の業務をこなしているという亀井さん。水族館運営を通して、伝えたいことやその想いとは何なのでしょうか。
Q 館長としての夢や目標を教えてください。
亀井さん:地元にどんな生き物が生息しているのかを知ってもらうこと、自分自身で体験してもらうことは、必ず環境問題に興味を持つということにもつながっていくと思っています。
水族館を通して、一人でも多くの人に、生き物の魅力や自然環境の素晴らしさを伝えていきたいです。“生き物好き”の子ども達を“生き物オタク”へと育てていくことで、将来、自然や環境を第一に動く人達が増えていくと思うので、そのためにもやながわ有明海水族館を生き物好きが気軽に集い、学び、語り合える場所にしたいです。
「好きなものを見つけられることは才能の一つ」
現在は、まだ世の中にあまり出ていない生き物の情報をまとめた図鑑を作成したいと話す亀井さん。
「好きなものを見つけられることは才能の一つ」とインタビュー中、終始キラキラした目でお話してくださいました。
身近にいながら知らなかった生き物との出会いは、きっと自然環境に対する興味にもつながっていき、日々の行動もつながっていくはず。そんな想いから、水族館で生き物の魅力を伝え続ける亀井館長。やながわ有明海水族館を訪れる子ども達の中から、未来の生き物博士がうまれる日も近いかもしれません。
マニアックで魅力的な生き物たちと挑戦を続ける亀井館長に会いに、是非やながわ有明海水族館に足を運んでみてはいかがでしょうか。
亀井裕介さん著書『カメスケのかわいい水辺の生き物』絵図鑑発行(11月末)予定!
絵図鑑発行の費用を、キャンプファイヤー内の社会問題に特化したGood Morningでクラウドファンディングをスタートしています。(10月末まで)
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やながわ有明海水族館
〒832-0066 福岡県柳川市稲荷町29
定休日:火曜日
営業時間:平日:12時~16時30分 土日・祝日:11時~17時
公式サイトはこちら:https://www.spera-morisatoumi.com/
文・構成/茂木雅世