火砕流とは? 実例や身を守る方法、その他 火山噴火による現象のまとめ

ニュースなどで「火砕流」という言葉を聞いたことがあっても、実際にどのような現象なのか説明できない人もいるのではないでしょうか。そこで、火砕流の実例や身を守る方法について紹介します。知識を深め、万が一のときのために備えましょう。
<上画像は雲仙普賢岳・火砕流の跡>

火砕流とは?

火砕流(かさいりゅう)が、具体的にどのような現象なのか紹介します。発生原因によって異なる種類についても見ていきましょう。

火山噴火時に高温のガスや岩石が流れる現象

日本各地には、現在も活発な火山である「活火山」が多数あります。火山が噴火すると、さまざまな火山現象が起こり、大きな災害につながることも少なくありません。

火砕流は、噴火によって放出された破片状の固体物質や高温の火山ガスなどが混ざり合ったものが、地表に沿って流れる現象のことです。時速100km以上と高速で流れ、温度が数百度と高温に達することもあり、大きな被害を招くことも珍しくありません。

火砕サージ」と呼ばれる現象もあり、火砕流の一種とされていますが、厳密には異なります。火砕サージは、火山灰と火山ガスが混ざり合ったもので、より希薄な流れになります。高速なことや尾根などを乗り越える流動性の高さが特徴です。

発生原因により数種類に分かれる

ひとくちに火砕流といっても、実際には発生原因によって数種類に分かれており、それぞれ呼び方が異なります。

地下から上昇してきたマグマが表面で固まり、「溶岩ドーム」ができます。溶岩ドームが不安定になり一部が崩れたときに粉々になったものが、山の地表を流れ落ちるのが「メラピ型」です。

溶岩ドームが爆発し、山の地表を一方向に流れ落ちるのが「プレー型」です。火口から吹き上がった火砕物が落ちたり、火口から火砕流が山の全方向に流れ落ちたりするものを「スフリエール型」と呼びます。

いずれも小規模な火砕流の呼び方で、より大規模なものは「中間型火砕流」と呼ばれています。

火砕流から身を守る方法

命に関わることもある火砕流から身を守るには、どうしたらよいのでしょうか?  万が一に備えて、しっかり確認しておきましょう。

火山防犯マップを確認し噴火警報に注意する

日ごろからできる備えとして、「火山防災マップ(ハザードマップ)」を確認しておくことが大切です。火山防災マップには、噴火が起きた際に危険とされる区域や避難場所などが記載されているので、避難経路とあわせて把握しておきましょう。

噴火予報や警報に注意し、適切な行動を取ることも重要です。住民が取るべき防災対応として、「活火山であることに留意」から「避難」まで5段階の警戒レベルに区分されています。

噴火警報はテレビやラジオだけでなく、気象庁のホームページでも見られます。スマホのアプリやメールでも受け取れるので、事前に登録しておくのがおすすめです。

なお、少しでも異変を感じたときは、避難の指示を待たずに火口からできるだけ離れるようにしましょう。

登山に行く際は噴火に備える

噴火は頻繁に起こることではありませんが、登山に行くときは噴火に備えることが大切です。出掛ける前に「入山規制」や「噴火警報」が出ていないか確認し、指示に従いましょう。

事前に地図で、避難小屋の場所や緊急避難ルートを確認しておくことも必要です。それらをもとに登るルートを決めるとより安心です。

噴石などから頭を守るヘルメットや火山灰から呼吸器を守るマスクも持っていきましょう。ライトも万が一のときに役立ちます。

火口付近からできるだけ早く離れる

噴煙・臭い・地震など少しでも異変を感じたら、できるだけ早く火口付近から離れましょう。もし火砕流が見えたら、直ちに流れと反対方向に逃げることが身を守る方法です。谷筋に流れやすいので、谷筋も避けることが賢明です。

間近に迫っていて逃げ切れないときは、避難小屋や建物に入ることで助かる可能性があります。ただし、火砕流は高速・高温のため、巻き込まれると助かる見込みが低いのが現実です。そのため情報に注意して、巻き込まれないように事前に避難することが重要です。

火砕流による被害事例

過去には、世界各地で火砕流による大被害が出ています。しかし、大被害と聞いても実際にどのような被害なのかピンと来ない人もいるのではないでしょうか。

国内と国外で起きた被害事例から、起こり得る被害について知識を深めておきましょう。

雲仙普賢岳と浅間山の噴火

1990年11月に長崎県にある雲仙普賢岳の噴火が始まり、翌年の6月には大規模な火砕流が発生し、43人が命を落としています。

1994年の終息までに1万回もの火砕流が起こり、住家焼失・全半壊の被害は269棟に達しました。その後も、まとまった雨が降るたびに火砕流の堆積物や火山灰が土石流となり、田畑や住宅地に被害を与えました。

雲仙普賢岳

他にも多くの犠牲者を出したことで知られているのが、1783年に発生した群馬県・長野県にまたがる浅間山の噴火です。

火砕流と石や土砂を含んだなだれが同時に発生し、約10km以上も離れた村全体を一瞬で埋め尽くし、500人近くが犠牲になりました。さらに高温の土砂と水でできた泥流も発生したことで大洪水が起こり、1,000人以上が犠牲になったのです。

浅間山

プレー山とタンボラ山の噴火

人口約2万8,000人が住む町が全滅し、20世紀最多の火山噴火による犠牲者を出したことで知られているのが、1902年のカリブ海にある「プレー山」の火砕流です。

全滅したのは山頂から約6km離れた町で、火砕流だけでなく火砕サージが襲ったことや、パニックを避けるために市外や島外への避難を制限していたことが原因とされています。

また、1815年のインドネシアの「タンボラ山」で起きた噴火による火砕流では、約1万2,000人が犠牲になりました。さらに大量の降灰によって農作物が育たず、飢餓による犠牲者が8万人にも達したといわれています。

大規模な噴火で大気に灰などが舞い上がったことで日光が遮られ、地球全体の気温が低下し、ヨーロッパなどでも飢餓で多くの人が苦しみました。

火山噴火によるその他の現象

火山噴火による被害は、火砕流によるものだけではありません。その他にもさまざまな現象が起こり、大きな被害を引き起こします。具体的にどのような現象があるのか見ていきましょう。

噴石・火山灰

「噴石」は、火口から吹き飛ばされる岩石の中で注意すべき大きさのものを指します。具体的には20~30cm以上で、風の影響をほとんど受けず飛び散るものです。大きな噴石は火口周辺までしか飛びませんが、破壊力が強いため、命に関わるリスクもあるため注意が必要です。

直径数cmの小ぶりなもので、風の影響を受けて遠くまで飛び散るものは「小さな噴石」、直径が2mm未満のものは「火山灰」と呼ばれています。火山灰は風の影響を受けて数百km以上も運ばれ、農作物や飛行機などの交通機関に悪影響を与えます。

桜島の火山灰(鹿児島市内)

溶岩流・融雪型火山泥流

「溶岩流」は、火口からマグマが吹き出し地表を流れる現象です。速度はそれほど速くありませんが、高温の液体のため危険です。溶岩は建物・農作物・道路などを焼き尽くして、大きな被害を引き起こします。

「融雪型火山泥流」は、山に積もった雪や氷が溶け、土砂などと混ざり地表を流れる現象です。流速は時速60kmを超えることもあり、一気に遠方まで流れてくることも珍しくありません。広範囲の道路や建物を埋め尽くし、大きな被害につながります。

泥流・土石流

大雨が降ると、積もった火山灰や岩石が水と混ざり地表を流れ、「泥流」と呼ばれる現象が起きます。土砂と水が混ざり地表を流れる現象は「土石流」です。

いずれも流速は時速数十kmに達することもあり、下流の地区に大きな被害を及ぼします。噴火が終息しても引き続き起こる現象のため、気象情報にも注意しましょう。

なお、泥流と土石流の区別は難しいため、気象庁では雨による火山噴出物が流れる泥流に対して土石流を用いています。

火山ガス

硫黄山(北海道川上郡)から噴き出す硫黄のガス

「火山ガス」は「噴気」とも呼ばれ、火山活動によって噴出される高温のガスのことです。溶岩などとともに噴出するものも含まれます。

水・二酸化炭素・二酸化硫黄・硫化水素が主成分で、さまざまな成分が含まれています。大量に吸い込んでしまうと、気管支障害や中毒を引き起こし命を落とすこともあり危険です。

2000年に起きた三宅山の噴火では、火山ガスが出続けたため、島民が4年以上も避難しなければなりませんでした。

火山噴火による火砕流に注意しよう

火砕流は、火山噴火時に高温のガスや岩石が流れる現象のことです。身を守るためには、日ごろから火山防災マップを確認し、噴火警報に注意することが重要になります。

また、登山に行くときは、噴火に備えることも忘れないようにしましょう。噴火時には火山灰や土石流、火山ガスなど、その他の現象にも注意し、適切な行動を取ることが大切です。

あなたにはこちらもおすすめ

竜巻はどうしてできるの? 竜巻の仕組みや、もしものときの避難方法も
「竜巻はどうしてできるの?」と聞かれて困ったことはないでしょうか。発生する仕組み、前兆、身の守り方など、竜巻に関わるさまざまな豆知識を紹介し...
【子連れで防災】いつも持ち歩きたい「5大防災グッズ」をママ気象予報士が厳選!
持ち歩き防災グッズの選び方 万が一に備える防災グッズ。家に防災グッズをまとめて用意している方も多いかもしれません。しかし災害は家にいるとき...

文・構成/HugKum編集部

編集部おすすめ

関連記事