フェーン現象とは? 何が危険なの? メカニズムや影響などをわかりやすく解説

フェーン現象は、発生した地域にさまざまな影響をもたらす自然現象の一つです。日本でもよく起こるため、天気予報で言葉を聞いた覚えがある人も多いでしょう。フェーン現象のメカニズムや起こりやすい地域、影響についてわかりやすく解説します。

フェーン現象とは

フェーン現象とは、どのような現象を指すのでしょうか。名前の由来も合わせて見ていきましょう。

山の上から熱く乾いた空気が流れ込む現象

フェーン現象とは、風上側から山を上った風が、山頂を越えたあと、高温で乾燥した風となり、風下側に向かって吹く現象のことです。フェーンによって山の上から熱く乾いた空気が流れ込むことで、風下側の気温が上がったり、湿度が下がったりします。

foehn」と英語で書くフェーンの名前は、ドイツ語の「Föhn」からきています。もともとはヨーロッパのアルプス山脈を越えて吹く風を指した言葉でしたが、現在では世界各地で発生する同じような風をフェーンと呼ぶようになりました。

日本ではフェーンに「風炎」の字を当てて「ふうえん」と呼ぶこともあります。

2種類のフェーン現象

フェーン現象には、以下の2種類があります。

・湿ったフェーン現象
・乾いたフェーン現象

この場合の「湿った」「乾いた」が示すのは、山に降雨や降雪をもたらすか否かです。風が山にぶつかり上昇するとき、風に水蒸気が多く含まれていると、山頂へ向かう斜面で雲が発生して雨や雪を降らせます。このときに発生するのが「湿ったフェーン現象」です。

図の左側で起こっているのが、山頂へ向かう途中で雨をもたらす「湿ったフェーン現象」

 

ほとんどのフェーン現象は「湿ったフェーン現象」ですが、山頂付近で雨や雪をともなわない「乾いたフェーン現象」が起こるケースもあります。台風が通過したときや低気圧の際などに起こりやすくなります。

フェーン現象のメカニズム

フェーン現象を起こす高温で乾いた風は、どのようにして発生するのでしょうか。メカニズムを学びながら、日本での発生しやすい季節や地域もあわせてチェックしていきましょう。

乾燥した風が気温を上げながら山を下る

まず空気の温度は、標高によって変わる性質を持っています。標高が上がるにつれ、気温は下がります。

具体的には、晴れていて雲がないときは標高が100m上がるにつき気温は約1℃下がり、雲ができ始めると100mごとに約0.5℃下がっていくのです。

湿った風が山を上がるとき、標高が高くなるたびに気温が下がっていき、露点に達すると雲ができます。雲は雨や雪を降らせながらさらに山を上昇していき、山頂を越えたときには雲はなくなり、すっかり乾燥した状態です。

そのため、山を下るときの風の気温は100mごとに約1℃上がっていき、乾いた暖かい風が吹き下ろします。乾燥した状態で雲はできないため、山の反対側の天気は晴れとなります。

湿った風が気温を下げていきながら上昇し、山頂付近で雨や雪を降らせて乾燥してから山を下ることにより、高温の風になるのがフェーン現象の仕組みです。

フェーン現象が起きる季節や地域

フェーン現象をもたらす湿った空気は、発達した低気圧が運んできます。標高の高い山がある地域であれば、季節を問わず、低気圧が発達したときはいつでも発生する可能性があると考えてよいでしょう。

日本では太平洋側から暖かく湿った空気が流れ込む春に、日本海側の地域で発生しやすいとされています。夏や秋に、台風の通過にともなって起こるケースもあります。

なお、冬に関東平野で吹く乾いた強風である「からっ風」もフェーン現象の一つです。ただし、冬はもともと気温が低いため、他の季節のフェーン現象に比べて高温による影響は少ないといえます。

フェーン現象が起こるとどうなる?

天気予報ではフェーン現象の発生が予測されるエリアに対して、さまざまな注意情報を発表することがあります。フェーン現象がもたらす主な影響を見ていきましょう。

急激な気温上昇

フェーン現象が起こる風下の地域では、気温が急激に上昇します。春や秋に、真夏のような高温を記録することも珍しくありません。また、普段から気温が高い夏のフェーン現象は、40℃前後の危険な暑さをもたらすこともあります。

気温の異常な上昇は生物にとって過酷な環境を生みだし、農産物の品質低下や家畜の死亡事故なども懸念されます。もちろん人間にも大きな影響を与え、熱中症への十分な警戒が必要です。

空気の乾燥

フェーン現象では乾いた風が強く広範囲に吹くため、風下の地域では空気が著しく乾燥します。冬にフェーン現象が起こると、低温で乾燥した状態が続き、風邪をひきやすくなったり肌の乾燥が気になったりするでしょう。

木材や布などの乾燥が進んで、燃えやすくなるのも問題です。特に暖房器具を多用する季節は、火災に注意する必要があります。

強風が吹く

フェーン現象は山の上から風が吹き下りてくる状態なので、基本的に通常より強い風が吹きます。乾燥状態に加えて強風が吹くことで、火事が起きた際は被害が大きくなる可能性が高まるでしょう。

例えば、2016年12月に新潟県で発生した「糸魚川大火」は、フェーン現象が原因で延焼範囲が拡大したと考えられています。

ただし、高温や乾燥、強風の原因はフェーン現象以外にもあります。天候の急激な変化に対応できるよう、天気予報で最新情報をチェックする習慣をつけるとよいでしょう。

さまざまな影響をもたらすフェーン現象

フェーン現象がもたらす異常な高温や乾燥状態は、私たちの生活にさまざまな影響を与えます。しかし、どのような状況が起こっても、正しい知識があればいざというときに慌てずに済みます。

未来を生きる子どもたちにも、フェーン現象が起こる仕組みや注意点について、しっかりと伝えていきましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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