「厚顔無恥」になりたい人が増えている? 言葉の意味から英語表現まで解説

「厚顔無恥」とは、厚かましくて恥知らずという意味の四字熟語。決していい意味ではありませんが、最近は「周囲の目を気にせず、やりたいことをやったほうがいい」という考えから、ポジティブな意味で使われることも。今回は、「厚顔無恥」の使い方、類語、対義語、英語表現まで詳しく解説します。

「厚顔無恥」の意味や成り立ちは?

「厚顔無恥」という言葉を見聞きしたことはありますか? あらたまって意味を調べたことはなくても、漢字から「あまりいい意味の言葉ではない」という印象を受けますね。まずは、「厚顔無恥」の正確な意味と、言葉の成り立ちから見ていきましょう。

意味や読み方

「厚顔無恥」は「こうがんむち」と読みます。意味は「厚かましくて恥知らず」なこと。間違えて「厚顔無知」と書いてしまわないように気をつけましょう。

「無恥」は恥知らずなこと、「無知」は知識がないことを意味します。音だけでなく漢字の意味と合わせて覚えると、間違えにくくなりますよ。

成り立ち

「厚顔無恥」は「厚顔」と「無恥」という二つの言葉で構成されています。「厚顔」とは「厚かましいこと」、「無恥」とは「恥知らずなこと」。それぞれ「彼は厚顔だ」「無恥な行動」など、単独でもよく使われる言葉です。

使い方を例文でチェック!

堅苦しい四字熟語は、なかなか普段の会話で使いづらいもの。しかし、使い慣れれば、いちいち長文で説明しなくても、簡潔に意味を伝えることができるという利点があります。次は、「厚顔無恥」の使い方を例文で確認しましょう。

1:彼は厚顔無恥な人だ。

「厚顔無恥」は、「厚かましくて恥知らず」という意味から「人」に対して使われることが多い言葉です。その人が「厚顔無恥」な人であれば、老若男女、先輩後輩、誰に対しても使うことができます。一般的には決していい意味ではありませんから、慎重に使いましょう。

ところが最近、「厚顔無恥」をポジティブな意味で使う人も出てきました。周りを気にしすぎて、言いたいことや、やりたいことができないよりは「多少図々しいほうがいい」「神経は図太いほうが得」という考え方から、「厚顔無恥な人になりたい」という意見もネット内で散見されます。が、もともとはネガティブな意味の言葉。使用するシチュエーションには注意したいものです。

2:彼女の厚顔無恥な態度にはうんざりする。

「厚顔無恥」は「態度」に対しても使うことができます。また、「厚顔無恥な振る舞い」「厚顔無恥な行動」などと言うことも。「厚顔無恥」な態度は、自己中心的で、空気が読めず、周りの人を不快な気持ちにします。

3:厚顔無恥にも程がある。/ 厚顔無恥も甚だしい。

「厚顔無恥」の否定的な意味を強調したい場合は、「厚顔無恥にも程がある」「厚顔無恥も甚だしい」と表現することができます。「厚顔無恥な人」と違って、このように使われる場合は、ポジティブな意味を含んでいないと考えていいでしょう。

類語や言い換え表現は?

「厚顔無恥」について、意味や使い方を解説しました。実際に使えそうですか? しかし、相手が「厚顔無恥」という言葉を知らない場合もあります。

そんな時には、別の言葉に置き換えて話してみると、伝わりやすいかもしれません。次は、「厚顔無恥」の類語や言い換え表現を確認しましょう。

1:面の皮が厚い

「面(つら)の皮が厚い」とは、恥知らずで図々しく、厚かましいこと。「厚顔無恥」とまったく同じニュアンスで使うことができます。周りに何を言われても、顔色や感情の変化がわからないほど顔の皮膚が厚い、という意味からこのような表現が生まれました。

2:いけしゃあしゃあ

「いけしゃあしゃあ」とは、憎らしいほど平然としていて、厚かましいこと。意味は「厚顔無恥」とほとんど同じですが、字面も音もかなりカジュアルです。「いけしゃあしゃあ」と言っているうちに、不快な気持ちも思わず緩んでしまうかもしれません。

3:鉄面皮

「鉄面皮」は「てつめんぴ」と読みます。意味は、恥を知らず厚かましいこと。まるで鉄のように面の皮が厚い、という意味からこのような言葉が生まれました。

また、似たような字面で「鉄仮面」という言葉がありますが、こちらは、表情が乏しいという意味。まったく異なる言葉であるため、使うときは気をつけましょう。

対義語は?

「厚顔無恥」の使い方でも解説しましたが、最近は「厚顔無恥な人になりたい」という人がいるように、「厚顔無恥」とは真逆な性格の人も多いはず。次に、「厚顔無恥」とは逆の意味になる言葉を考えてみましょう。

1:遠慮会釈

「遠慮会釈」とは「えんりょえしゃく」と読み、慎みや礼儀を意味する四字熟語。「厚かましい」や「恥知らず」という言葉とは正反対ですね。

しかし、一般的には、「遠慮会釈もなく」と否定表現で使われることが多いです。「その人は遠慮会釈もなく大声で話し始めた」というように、周囲に対して控えめにも、手加減もしないことを意味します。

2:平身低頭

「平身低頭」は「へいしんていとう」と読み、頭を下げて恐縮することや、ひたすらあやまることを意味する四字熟語。漢字からもその意味が想像できますね。

「平身低頭して」というように使われることが多く、「平身低頭してあやまる」「平身低頭して許された」などと表現します。

英語表現は?

英語にも「厚顔無恥」と同じような意味を持つ単語があります。海外でも、厚かましく恥知らずな人は不快に思われるのでしょう。英語表現を知っていれば、海外の人と会話をした際にとっさに使えるかもしれません。そこで、最後に「厚顔無恥」の英語表現を確認しましょう。

1:shameless audacity

「shameless audacity」とは、まさに「厚顔無恥」という意味の単語。「shameless」は、恥知らず、「audacity」は、厚かましいという意味です。

「audacity」は、厚かましいというネガティブな意味を持つ一方、「(勇気ある)大胆さ」や「(考え方などの)斬新さ」というポジティブな意味も持ちます。

2:impudent

「impudent」とは、「生意気な」「厚かましい」「図々しい」という意味の単語。「厚かましい態度」は「impudent attitude」、「厚かましい行動」は「impudent behavior」と表現することができます。

3:unabashed

「unabashed」は、「恥ずかしがらず臆面もない」「あからさまな」という意味の単語。「厚かましい」といったネガティブなニュアンスだけでなく、使い方次第でポジティブなニュアンスにもなる単語です。

「with unabashed curiosity」で「好奇心をあらわにして」、「unabashedly celebrate」で「恥ずかしげもなく褒めたたえる」と表現できます。

最後に

今回は「厚顔無恥」について解説しました。一般的には、いい意味で使われることはありませんが、「厚顔無恥になりたい」という人もいるというのは興味深いですね。

四字熟語の意味自体は変わらなくても、使われる状況や時代によって捉え方が変わることも、言葉の面白さではないでしょうか。

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構成・文/伊藤舞(京都メディアライン)

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