日本の相対的貧困率の現状は? 原因や対策、絶対的貧困との違いも解説

近年、日本では「相対的貧困率」の上昇が問題になっています。ニュースや社会問題を取り上げる報道番組などで見聞きして、気になっている人も多いでしょう。相対的貧困率の意味や世界と日本の現状・絶対的貧困との違い・効果的な支援策について解説します。

相対的貧困とは

そもそも相対的貧困とは、どのような状態を指すのでしょうか。絶対的貧困との違いも合わせて見ていきましょう。

国や地域の水準よりも困窮した状態

相対的貧困とは、住んでいる国や地域の生活水準に比べて困窮した状態を指します。その国や地域に住む多くの世帯に比べて、使えるお金が少ないと考えるとわかりやすいでしょう。

このため、相対的貧困状態にある家庭では、基本的な衣食住でさえ、周りの人と同じ水準を保つことが困難になります。

特に深刻なのが、子どものいる家庭です。貧困家庭では、親が働きづめで子どもの相手をする余裕がなく、子どもが精神的に不安定になるケースも少なくありません。

そのほか、学習や体験の機会がほかの子どもに比べて少ないため、学力の向上が見込めず、安定した職業に就くのが難しくなる可能性もあります。成長して大人になっても貧困から抜け出せない場合、その子どもも貧困に陥ってしまう「貧困の連鎖」が懸念されています。

絶対的貧困との違い

絶対的貧困とは、人間が生命を維持するために必要な、最低限の生活もままならない状態を指します。多くの場合、飢えに苦しみ医療も満足に受けられません。

絶対的貧困の基準は、世界銀行が定める「国際貧困ライン」です。2015年の改訂時に、1日1.90ドル以下で暮らす人が「絶対的貧困者」に該当すると定められました。

絶対的貧困は、南アジアやアフリカなどの発展途上国に多く見られます。一方の相対的貧困は、日本やアメリカなどの先進国にも存在するのが特徴です。

相対的貧困率の現状

相対的貧困は世界各地で起こっています。もちろん、日本も例外ではありません。世界と日本それぞれについて、相対的貧困率の現状を見ていきましょう。

世界の相対的貧困率

OECD(経済協力開発機構)では、相対的貧困率を「一定基準(貧困線)を下回る等価可処分所得しか得ていない者の割合」としています。

等価可処分所得とは、世帯の可処分所得(収入から税金や社会保険料等を除いた手取り収入)を、世帯人数で調整した金額です。また、貧困線は等価可処分所得の中央値の半額を指しています。

なお、2021年にOECDが発表した世界の相対的貧困率のデータによると、調査した国のなかで相対的貧困率がもっとも高い国は南アフリカ共和国で、コスタリカが2位、そしてなんとアメリカが3位にランクインしています。対して、もっとも低い国はアイスランドにチェコ共和国、デンマークと欧州各国が続きました。

参考:Inequality – Poverty rate – OECD Data

日本の相対的貧困率

同じく2021年のOECDのデータによると、日本の相対的貧困率は15.7%で、調査した国のなかで10番目に高い数値となっています。また、厚生労働省の「2019年国民生活基礎調査」では、2018年における17歳以下の子どもの相対的貧困率は13.5%であることがわかりました。

なお、同調査に基づく2018年の貧困線は127万円です。つまり、日本では子どもの約7人に1人が、等価可処分所得が127万円以下の世帯で暮らしているのです。

誰が見ても明らかな絶対的貧困と異なり、相対的貧困は見た目では判断できないケースが多く、周囲の人に気付かれにくいとされています。わたしたちは、貧困状態にある子どもが身近にもいる可能性があることを、強く意識しておくべきでしょう。

参考:厚生労働省 「2019年国民生活基礎調査」P16

日本の相対的貧困の原因

世界の中でも経済的に豊かとされる日本で、なぜ相対的貧困率が高くなってしまうのでしょうか。主な原因を見ていきましょう。

高齢化やひとり親世帯の増加

日本の相対的貧困の原因は、主に以下の2点です。

・高齢者世帯の増加
・ひとり親世帯の増加

日本では急速に高齢化が進んでいるうえに、高齢者の多くは年金のみで生活しています。現役時代の働き方にもよりますが、年金受給だけで標準的な生活水準を維持できない人も多いでしょう。高齢であるために働いて新たな収入を得ることも難しく、貧困がさらに進んでしまいます。

配偶者との死別や離婚による「ひとり親世帯」の増加も、相対的貧困率を上げている原因の一つです。特に、母子家庭では母親が十分な収入を得られないことが多く、相対的貧困に陥る割合が高くなっています。

参考:厚生労働省 「相対的貧困率等に関する調査分析結果」

相対的貧困を解決するには

相対的貧困の解決に向けて、国や自治体ではさまざまな対策を講じています。わたしたち個人が力になれることも、たくさんあるはずです。国の取り組みや個人的な支援のアイデアを紹介します。

国が行っている取り組み

相対的貧困状態にある人に対して、国は以下のような支援策に取り組んでいます。

・子どもの学習や生活支援
・児童扶養手当の支給
・教育費の負担軽減
・親の就職支援

学習支援や教育費の負担軽減は、貧困家庭の子どもが学力をつけ、将来安定した収入を得られるようにするものです。貧困の連鎖を断つためには欠かせない対策といえるでしょう。

児童扶養手当は、収入の少なさを補う効果が期待できます。親が安定した収入を得られる仕事に就くために、資格取得費用を助成したり、子連れで就職活動できるようにしたりする取り組みも実施されています。

わたしたちができること

個人的な支援のなかでもっともシンプルな方法は、支援活動をしている団体への寄付です。お金を振り込むだけでよいので、仕事や育児に忙しい人でも困っている人の力になれます。団体の活動内容や理念を理解したうえで寄付すれば、より満足感が得られるでしょう。

時間に余裕がある人は、ボランティア活動に参加するのもおすすめです。ボランティアの活動内容は下記の通り多岐にわたり、中には自分の趣味や特技を生かせる活動もあります。

・放課後児童クラブの指導員
・スポーツや楽器演奏、科学実験などの体験会を主催
・英語や算数、読み聞かせなどの学習支援
・子ども食堂での調理や後片付け

寄付やボランティア活動が難しい人は、貧困への関心を持つ人が増えるように、情報を広めるだけでも十分です。相対的貧困の現状が正しく伝わっていけば、支援者が増えるかもしれません。

相対的貧困へ関心を持とう

今現在は標準的な生活ができている人でも、何かのきっかけで収入が激減する可能性は十分にあります。相対的貧困は、誰にでも起こり得る身近な問題といえるでしょう。

少しでも多くの人が貧困状態にある人に目を向け、解決に導く行動を取ることで、貧困の連鎖が断たれ社会全体によい影響をもたらします。未来を担う子どもたちのためにも、できることから始めていきましょう。

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文・構成/HugKum編集部

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