国立大学の学費はどれくらい必要? 私立大学との違いや奨学金制度も

子どもを国立大学に通わせたいという人に向けて、学費やその他の費用がどの程度かかるのか、私立大学の学費との比較と併せて紹介します。教育ローンや奨学金制度についても詳しくなり、将来のライフプランを立てるのに役立てましょう。

国立大学の学費

子どもを国立大学に行かせたいと思っていても、学費がどれくらいかかるのかわからず不安に感じている人は少なくありません。国立大学の標準額や学費の推移について見ていきましょう。

文部科学省が定めた標準額

国立大学の入学料と授業料は、文部科学省が定めた標準額を基に設定されています。大学はそれぞれの判断によって、標準額の20%を上限に具体的な学費を設定することが可能です。

上限については、社会経済情勢の変化などを理由に隔年で引き上げられており、2019年度から上乗せできる上限が10%から20%に引き上げられました。下限については設定されていません。

2020年度の標準額は、入学料が28万2,000円で授業料が53万5,800円です。授業料を4年間に換算すると214万3,200円になり、入学金と合わせて242万5,200円になります。

参考:国立大授業料、標準額の上限を最大20%に引き上げ!|旺文社教育情報センター

国立大学の学費の推移

文部科学省の発表によると、1975年には3万6,000円だった授業料の標準額は年々増加し、1984年には25万2,000円、1995年には44万7,600円、2005年からは53万5,800円です。約40年の間に50万円と大幅に増加しています。

標準額が53万5,800円になったのは、国立大学が法人化した直後の2005年で、それ以降は増加しておらず、現在まで一定に保たれています。これは、文部科学省が学生やその家族にできるだけ経済的負担をかけないようにしていくことが重要と捉えているためです。

2005年以降は増加していないとはいえ、教育費負担が大きくなり、家計が圧迫されている家庭も少なくありません。

参考:
国公私立大学の授業料等の推移|文部科学省
国立大学の法人化の経緯:文部科学省

国立大学と私立大学の学費を比較

「できれば私立大学に通わせたいが、学費が気になる」という人もいるのではないでしょうか。そこで、国立大学と私立大学では実際に学費がどの程度異なるのか紹介します。

それぞれの学費を知り、子どもの大学選びの参考にしましょう。

両大学の学費の平均額

私立大学の学費も国立大学同様に、年々増加傾向にあります。2021年の平均授業料は93万943円で、入学料が24万5,951円です。4年間の学費の平均額は396万9,723円となり、国立大学の242万5,200円よりも154万4,523円高くなります。

私立大学の場合は、学部によっても平均額が大きく異なります。例えば、文科系の授業料の平均は約81万円なのに対し、理科系は約113万円、医歯系は約288万円と高額です。

入学料に関しても、文科系と理科系が22~25万円なのに対し、医歯系は約107万円と4倍以上で大きな差があります。

参考:令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について|文部科学省

なぜ学費に差がある?

私立大学の学費の平均額は、国立大学と比べて高額になります。その理由は、学生やその家族が負担しなければならない費用の違いです。

私立大学の学費には施設整備や設備費などが含まれるのに対して、国立大学の施設整備や設備費は基本的に国や公共機関など運営団体が負担するという違いがあります。

前述の通り私立大学の場合は学部によっても学費が異なり、理科系や医歯系を希望する場合は高額になる傾向です。また、英語が関連する学部では海外留学が必須の場合もあり、留学にかかる費用がプラスされ、高額になることも珍しくありません。

学費以外にかかる費用

負担しなければならない費用は、学費以外にもあります。状況によっては出費がかさむこともあるため、具体的にどのような費用が必要なのか確認し、しっかり準備することが大切です。

参考書などの教材費、研修費

大学や学部によって差がありますが、教科書や参考書など教材費がかかります。1冊の値段はそれほど高くなくても、4年間を通して考えると大きな出費になることも珍しくありません。

ゼミで研修に参加する必要がある場合は、研修費も必要です。宿泊を伴う研修の場合は、宿泊費や交通費、食費などもかかります。

見落としがちなのが、入学式で着用するスーツや靴、バッグなどです。勉強に使うパソコンを購入する必要がある人もいるでしょう。すべてそろえるとなると、まとまった出費になるため、あらかじめ把握しておくことが大切です。

家賃などの生活費

自宅から通学するのが難しく、アパートなどの賃貸に住む場合は家賃がかかります。地域によって差があり、都内の場合は大きな出費になることも珍しくありません。寮がある大学であれば、利用することで生活費をある程度抑えられるため、事前に確認しましょう。

家賃以外にも水道光熱費や食費も必要です。工夫次第である程度節約することは可能ですが、毎月かかる必要経費なので、しっかり把握しておく必要があります。

一人暮らしを始めるにあたり、家具や家電をそろえなければならない人もいるでしょう。家具や家電は決して安くないので、出費がかさむこともあります。さらに、引っ越し費用がかかることも忘れてはいけません。

通学のための交通費

大学へ徒歩や自転車で通えれば交通費はかかりませんが、電車やバスを利用する場合は交通費もかかります。実際の費用は、地域やルートによって異なるため、事前に把握しておくと安心です。

出費を少しでも減らしたいなら、定期券を購入しましょう。複数のルートがある場合は、交通費を比較して決めるのもおすすめです。

自転車やバイクでの通学を考えている場合は、駐輪場代やガソリン代を含めてどの程度かかるのか確認する必要があります。万が一のときのために、修理費を含めて予算を立てておくと安心です。

教育ローンの種類

学費が足りないときは、教育ローンの利用を検討しましょう。国と金融機関が運営している2種類があり、それぞれメリットとデメリットがあります。特徴を比較しながら見ていきましょう。

日本政策金融公庫の教育ローン

40年以上の実績がある国の教育ローンで、学生1人に対して350万円まで借りられます。一定の要件を満たす場合は、450万円まで借りることが可能です。

年1.95%の固定金利ですが優遇制度もあり、母子(父子)家庭など家庭の状況や年収に応じて金利が低減されます。返済期間が最長18年と、長期返済が可能なのも特徴です。在学中は利息のみの返済にし、負担を減らすこともできます。

受験前の申し込みが可能で、学費だけでなく定期券代や教材購入費など幅広い用途に利用可能です。インターネットで簡単に申し込みができます。

参考:教育一般貸付(国の教育ローン)|日本政策金融公庫

民間の金融機関の教育ローン

民間の金融機関が運営する金融ローンを利用する方法もあります。

国の教育ローンは、世帯年収によっては利用できないこともありますが、金融機関の教育ローンには、世帯年収の上限がないことが多く、利用しやすいのが特徴です。ただし、世帯年収が低いと借りられないことがある点には注意が必要です。

入学前でも借りられるため、奨学金をもらうまで資金として利用することも可能です。限度額・返済期間・金利などは金融機関によって異なるので、比較検討して決めるのがよいでしょう。

奨学金制度も活用しよう

奨学金制度を活用することで、経済的な負担を減らせます。さまざまな奨学金があるので、どのようなものがあるのか特徴と併せて紹介します。利用できるかどうかを確認しましょう。

日本学生支援機構の奨学金

利用する学生が多いのが「日本学生支援機構」の奨学金です。返済が不要な「給付型」と、返済が必要な「貸与型」の2種類があるのが特徴です。

給付型は世帯収入の要件を満たしている必要がありますが、学費が免除もしくは減額になります。貸与型は、利息付きと無利息の2種類に分かれます。いずれかを利用する場合は、利息付きの「入学時特別増額貸与奨学金」の利用も可能です。

詳細については、公式サイトで確認しましょう。

参考:奨学金|JASSO

大学の奨学金

後述する「学費免除制度」があるため、私立大学と比較して独自の奨学金が充実していないことが多いですが、国立大学でも独自の奨学金制度を設けている場合があります。

一般的な貸与型や給付型の他にも、卒業生である著名人の功績にちなんだ奨学金が設けられているケースもあるでしょう。

利用の要件や金額などは大学によって異なるため、進学希望の大学の公式サイトや大学案内の資料などで詳細を確認することが大切です。より多くの学生を獲得するために、今後導入する大学が増える可能性もあるので、定期的に希望する大学の最新情報を確認するようにしましょう。

地方自治体の奨学金

世帯所得が限られていることが多いですが、居住地によっては地方自治体が設けている奨学金制度を利用することもできます。国立大学に限らず、私立大学・短期大学・専門学校など対象が幅広いので利用しやすいでしょう。

近年は、看護師・理学療法士・介護福祉士など医療福祉関連の国家資格取得を志している学生向けの奨学金制度を設けている地方自治体も少なくありません。

ただし、一定期間の勤務が条件になっていたり、対象資格が限られていたりするので、事前に公式サイトで詳細を確認しましょう。

学費免除制度も検討を

国立大学には学費免除制度があり、経済的な理由で授業料を支払うのが困難な学生を対象に全額免除もしくは半額免除になる場合があります。ただし、世帯所得の基準が定められており、誰でも受けられるわけではありません。

前年度の学業成績が、各大学の定める基準を満たしていることも条件の一つです。授業料免除を受け続けるためには、しっかり勉強して基準を満たし続けなければなりません。

その他にも細かく基準が定められているので、まずは希望する大学の公式サイトなどで要件の詳細を確認してみましょう。

国立大学の学費を知り、早めに準備を

国立大学の学費は文部科学省によって標準額が定められているため、私立大学と比較すると低額です。しかし、4年間の授業料やその他に必要な費用を考えると、大きな出費になります。

学費が足りない場合は、国や金融機関の教育ローンや奨学金制度、学費免除制度の利用を検討してみましょう。事前にしっかりリサーチすることで、スムーズに申請ができます。できるだけ早くライフプランを立てて、準備を始めましょう。

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文・構成/HugKum編集部

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