数の子とは
ニシンの魚卵、または卵巣をそのまま塩漬けにしたのが「数の子」です。どんな食材なのでしょうか。
数の子
メスのニシンから取り出した魚卵の塊を塩漬けで保存し、塩抜きをすると食用になります。塩蔵数の子が製造され始めたのは、1900年代に入ってからのことで、それ以前は干したものが一般的だったそうです。
ちなみに、昆布に産み付けられた卵をそのまま食す「子持ち昆布」も、ニシンの卵です。
音を食う
食通で知られる北大路魯山人は「数の子は音を食うもの」と記しています。プチプチした食感と共に、咀嚼する時のコリコリした音も特徴的ですよね。
無数の卵が子孫繁栄を連想させることから、正月のおせち料理や結納の縁起物として用いられます。「子ども達が元気に育ちますように」と願う気持ちは昔も今も変わりません。
また、学校の体育祭などで踊る「ソーラン節」は、北海道で盛んだったニシン漁を謡った民謡なんですよ。
数の子の塩抜き
買ってきたばかりの数の子は、強い塩気があるため口にすることができません。上手な塩抜きをマスターしましょう。
塩水の用意
塩蔵の数の子を真水に浸しておけば、素早く塩が抜けますが、表面の塩分だけが抜けてしまい、中心部はしょっぱいままになってしまいます。塩水を使うのは「呼び水」と呼ばれ、均等に塩を抜く方法です。
塩抜きだけで6時間、その後の味染みに一晩かかります。味にこだわるなら、丸1日かけてゆっくりと塩を抜くそうですが、かかった時間の分、ムラのないおいしい数の子に仕上がります。
お正月のおせち料理に用意するなら、3日前には材料を揃え、次の日に塩を抜き、漬け込み始めるとスムーズです。
塩抜きの方法
【1】塩分濃度は、水1リットルに対して、塩小さじ1が適量です。また、数の子の重さに対し、4倍の塩水が必要です。200gの数の子の場合なら、800mlです。
【2】数の子を浸して、3時間経ったら一旦水を捨ててください。
【3】もう一度同じ分量で塩水を作り、追加で3時間浸してください。
【4】塩分が抜けすぎると味気がなくなるので、途中で味を確かめながら進めます。少し塩気を感じる程度になれば、完了です。
塩抜きしすぎた場合の対策
塩抜きをしすぎると、にがりの成分「塩化マグネシウム」の苦味が舌に残り、おいしくありません。適度な塩味に戻す方法をご紹介します。
・塩を戻す
【1】塩抜きした時の塩分濃度と比較して、3倍程度の塩加減の塩水を作ります。今回の場合、1リットルに対して小さじ3杯で、3倍濃度になります。
【2】数の子を浸して、1時間程度で味見してみてください。塩分が戻っているはずです。
・濃いめの味付けにする
適度に薄めた麺つゆに数の子を浸し、かつお節と赤唐辛子を入れて一晩寝かせるのも、解決方法になります。
塩抜き後の日持ち
塩蔵の数の子は、2〜3月の保存ができますが、塩抜き後は痛みやすくなります。ピッタリとラップで包み、冷蔵庫で保存して5日程度のうちに食べ切るようにしてください。
塩抜き後の味付け
次に薄皮のとり方をご紹介します。最近は薄皮の処理が済んでいる数の子も多くみられ、その場合は必要ない工程です。
薄皮の下処理
【1】数の子には「くし目」と呼ばれる割れ目が等間隔に入っています。このくし目に沿って薄皮を引っ張り、きれいに剥いていきます。
【2】くっついてしまう場合は、親指でやさしくこすり取ります。割れ目の部分に入り込んでいる薄皮があるので、丁寧に。
味付け
◆材料
塩抜き後の数の子 500g
水 400ml
薄口醤油 大さじ3
酒 大さじ3
みりん 大さじ3
赤とうがらし 1本
かつお節 適量
◆作り方
【1】鍋に酒とみりんを入れて中火にかけます。沸騰させてアルコールを煮切ります。
【2】薄口醤油と水を加え、沸騰してきたら火を止めます。かつお節を入れて、そのまま冷まします、
【3】粗熱がとれたらかつお節を濾し取ります。
【4】容器に入れた数の子と赤唐辛子に【3】を入れ、冷蔵庫で一晩程度寝かしてください。
松前漬けに仕上げる
北海道の松前藩が発祥の郷土料理、松前漬けに仕上げます。写真付きで丁寧に解説します。
松前漬け
昆布を細切りにするのは大変なので、切り昆布を買うのがおすすめです。材料がセットになった「松前セット」を購入するのも便利ですので、ご参考に。
◆材料
塩抜き後の数の子 150g
松前昆布(他の昆布で代用もできます) 15g
するめイカ(乾物) 15g
人参 1/5本
【漬け液】
水 45ml
酒 45ml
みりん 45ml
醤油 60ml
砂糖 25g
赤唐辛子 1本
◆作り方
【1】鍋に酒、みりんを入れて中火にかけて煮切ります。砂糖、醤油を入れて温め、表面に泡が浮いたら火を止めて冷ましておきます。
【2】昆布、するめ、人参を細切りにします。
【3】するめ、人参をザルに入れます。熱湯を回しかけ、キッチンペーパーの上に広げて水気を拭き取ります。
【4】ボウルに【3】、昆布を入れて【1】の漬け液を加えて10分程度おきます。
【5】数の子の水気を切って、食べやすい大きさに切り分けます。
【6】容器にすべての材料を入れて、一晩馴染ませます。
3日前には材料を揃えて準備を
数の子を塩水に漬け、味付けをして、松前漬けが仕上がるまでにかかった日数は、2日間。時間がかかる料理だったことに、驚きました。お正月に食べるなら、3日前には材料を揃え、塩水に漬けておけば慌てません。
料理人の方は塩抜きに丸1日、するめは天日干しに丸2日かけて仕上げるそうです。時間はかかりますが、難しい工程はありません。上手に仕上げて、おいしく召し上がりください。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)