『オズの魔法使い』のあらすじをおさらい。登場人物や結末、作者が伝えたかったことをチェック!

PR

ミュージカルや映画の原作としてもよく知られる『オズの魔法使い』。かかとを3回鳴らすと家に帰れるというラストシーンはあまりにも有名ですが、そこに行き着くまでの物語をご存じですか? 登場人物や続編についてなど、わかりやすくまとめました。

「オズの魔法使い」ってどんなお話?物語の背景について

本記事では、100年以上もの間愛され続ける『オズの魔法使い』が書かれた背景やあらすじ、知っておきたいことをお伝えしていきます。まずは『オズの魔法使い』がどのようにして生まれ人気を集めたのか、その背景をおさらいしておきましょう。

アメリカの作家、L・F・ボームが原作

ミュージカルコメディとして大成功をおさめ、何度も映画化もされている『オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)』は、アメリカの代表的な児童文学のひとつです。

1900年に出版された本作を執筆したのは、アメリカの作家ライマン・フランク・ボーム。新聞記者や劇場の支配人等々として働きながらもなかなか生活が安定せず、子どもの物語を描き始めたといわれています。

カラー図版で出版。子どもたちから大人気に

そんなボームの3作目の物語こそが本作『オズの魔法使い』。当時としては珍しいカラー図版の児童書として出版され、増刷が追いつかないほどの人気を博しました。

原題:The Wonderful Wizard of Oz
著者:ライマン・フランク・ボーム
国:アメリカ
発表年:1900年
おすすめの年齢:小学校3年生以上

『オズの魔法使い』物語のあらすじを「詳しく」&「簡単に」どちらもご紹介

ここからは、出版当初から子どもたちを魅了し続ける『オズの魔法使い』のあらすじをご紹介していきます。詳しいバージョンと、お子さんに説明しやすい簡潔なバージョンの2種類にまとめました。

詳しいあらすじ

竜巻に巻き込まれ、マンチキンの国へ

おじさんとおばさん、そして子犬のトトと一緒にカンザスの大草原で暮らしていたドロシーは、ある日、大きな竜巻に巻き込まれてしまいます。
気がつくと、不思議なオズ王国のなかの美しいマンチキンの国にいたドロシーとトト。
すると、北の魔女がやってきて、「東の魔女を倒してくれてありがとう」と感謝を告げられます。竜巻で飛ばされたドロシーの家は、悪い東の魔女を下敷きにして着地していたのです。
ドロシーが「家に帰りたい」と言うと、北の魔女は、エメラルドの都にいるオズの魔法使いの元に行き、願いを叶えてもらうように助言します。
ドロシーは、東の魔女が履いていた銀色の魔法の靴を履いて、オズの魔法使いに会いに行くことにしました。

かかし、ブリキ、ライオンと出会う

オズの元に向かう道中、ドロシーは、かかし、ブリキのきこり、ライオンの3人に出会います。
かかしは「脳みそ」、きこりは「心臓(心)」、ライオンは「勇気」。それぞれ、オズの魔法使いに授けてもらいたいものがあったので、ドロシーは彼らとともにエメラルドの都を目指すことになりました。
道中、いくつもの冒険を乗り越えながら、一行はついにエメラルドの都へ。

オズと対面。願いを叶えてもらうために、西の魔女を倒す

オズのいる場所に着くと、オズは「大きな顔のみ」の体だったので、ドロシーは大変驚きます。そして、それぞれ叶えてほしい願いをオズに伝えますが、条件に「西の悪い魔女を退治すること」を提示されたため、ドロシーたちは今度は西のウィンキーという国を目指すことに。
しかし、ウィンキーに辿り着くと、すぐに西の魔女に捕まってしまったドロシーたち。魔女はドロシーの靴を奪おうと企てますが、ドロシーがバケツの水をかけると、みるみるうちに魔女は溶けてしまいました。

無事に元の家に帰還

ドロシーたちはオズの元へと戻り、魔女を退治したことを告げますが、実はオズの正体が、魔法使いではないただの人間のおじいさんだということが判明します。「大きな顔」ははりぼてで、おじいさんが裏で操作していただけだったのです。
魔法が使えないオズは、約束のもののかわりにそれぞれに「もみがらの脳みそ」「絹の心臓」「勇気の出る液体」、ドロシーには「気球」を贈りました。
しかしながら、ドロシーは気球に乗りそびれてしまい、再び途方に暮れてしまいます。

落ち込む彼女のところに再び現れたのは、北の魔女でした。北の魔女は「行きたい場所を言って、魔法の靴のかかとを3回鳴らせばそれでいい」と言います。ドロシーは言われたとおりにすると、あっという間におじさんとおばさんがいる家に戻ることができたのでした。

あらすじを簡単にまとめると…

竜巻に巻き込まれて飛ばされてしまったドロシーは、カンザスの家へと帰るため、かかし、ブリキのきこり、ライオン、犬のトトといっしょにオズの魔法使いの元へと旅立ちます。一行を待ち受けていたのは、悪い魔女との戦いをはじめとした数々の冒険。それらの冒険の中で、勇気や知恵を出し合って、絆を育みながら困難を乗り越えていく物語です。

主な登場人物

ここでは、『オズの魔法使い』に登場する主なキャラクターをおさらいしておきましょう。

ドロシー

アメリカ合衆国・カンザス州に暮らす、12歳の女の子。おばさん・おじさんのふたりと子犬のトトと暮らす。

トト

ドロシーが飼っている犬。真っ黒で小さな子犬。

カカシ

棒で固定されていたところをドロシーに助けてもらう。オズの魔法使いから「脳」をもらうため一緒に旅に出る。

ブリキの木こり

錆びて動けなくなっていたところをドロシーに助けられる、もともとはマンチキンの木こり。失くしてしまった「心臓」を取り戻すため、ともにオズの魔法使いの元へ。

ライオン

ドロシーたちに襲いかかろうとしたところ、トトに吠えられて怯んでしまうほど臆病。「勇気」をもらうため、ドロシーと一緒にオズの魔法使いの元へと向かう。

オズの魔法使い

オズの国の大魔法使い。しかしその正体は、ただの人間。

「オズの魔法使い」で作者が伝えたかったことは? 続編もあるの?

ここまで、『オズの魔法使い』のあらすじをご紹介してきました。では、本作を通じて作者はどのようなことを伝えようとしたのでしょうか。ここからは、物語のねらいについての考察や、続編の存在など、本作について知っておきたいことをお伝えしていきます。

「オズの魔法使い」に込められたメッセージとは?

本作を読む際に注目したいのが、知恵を得るために「脳みそ」をほしがるかかしが実際には知恵を絞っていたり、「心臓(心)」がほしいブリキの木こりが涙を流したり、自分を臆病だと思い込み「勇気」をほしがるライオンが案外勇敢に立ち振る舞ったりする点。

オズの魔法使いもまたそれをわかっており、「脳みそ」を欲しがるかかしに「あんたには、そんなものはひつようない。あんたは毎日、なにかをちゃんと学んでる」(※1)と、「勇気」を欲しがるライオンには「あんたは、勇気はたくさんもっている。つまり、必要なのは自信だけなんだ」(※2)と言います。

そして、それぞれに「もみがらの脳みそ」「絹の心臓」「勇気の出る液体」を授ける魔法使い。ライオン、ブリキの木こり、かかしはもらったものに満足し自信を得ますが、これらはどれも実物ではありませんよね。

ライオン、ブリキの木こり、かかしは、ドロシーとの冒険や、仲間たちとの関わりのなかで、自分たちの力で、知恵や、心、勇気を培いました。
さらに、「お家に帰りたい」と願っていたドロシーもまた、たくさん遠回りをしながらも、結局はあっさりとお家に帰れてしまいます。

本作には、願いごとは誰かに叶えてもらうのではなく、自分自身で掴み取れるものだというメッセージが込められているのではないでしょうか。

※1 ライマン・F・バウム(2015)オズの魔法使い(守屋陽一 訳) ポプラポケット文庫 p.134
※2 同上 p.135

「オズの魔法使い」には続編も。その数なんと、34作!

本作『オズの魔法使い』には続編が存在するって知っていましたか?

原作者であるライマン・フランク・ボームは、もともとは続編を書くことを予定していなかったといわれています。しかし、何千もの読者の子どもたちからリクエストがあり、その後、オズ・シリーズ2作目である『オズの虹の国(The Marvelous Land of Oz)』を含む13もの続編を執筆しました。

1919年に彼が亡くなると、代わって、児童文学作家ルース・プラムリー・トンプソンが委託を受けます。彼女は、21作品ものオズ・シリーズ続編を執筆しました。
ドロシーの物語をもっと楽しみたい方は、ぜひオズ・シリーズも読んでみては。

「オズの魔法使い」を読むなら|しかけ絵本から読みやすい新訳まで

ここでは『オズの魔法使い』を読んでみたい、子どもにすすめてみたい、と思った方向けに、おすすめの本もご紹介。小さなお子さんでも楽しめるものから、原作を忠実に翻訳したものまで全3冊集めてみました。

オズの魔法使い (とびだししかけえほん)

フランク バウム (著), ロバート サブダ (原著), わく はじめ (翻訳)

『オズの魔法使い』オリジナル版刊行100年を記念して、飛び出す絵本作家のロバート・サブダが手がけた一冊。ページをめくるたびに、オズの国の不思議で美しいイラストが飛び出します。物語の読み応えも十分で、小さなお子さんはもちろん、大人も楽しめる芸術的な作品です。

オズの魔法使い (岩波少年文庫)

ライマン・フランク・ボーム (著), W・デンズロウ (イラスト), 幾島 幸子 (翻訳)

岩波少年文庫版は、古典的な表現も忠実に訳されているが特徴。『オズの魔法使い』の初版と同様に、表紙・挿絵にはW・デンズロウのイラストが使用されています。原作・初版の雰囲気を味わいたい方におすすめの一冊です。

小学館世界J文学館(大型本)

浅田 次郎 , 角野 栄子, 金原瑞人 , さくま ゆみこ , 沼野 充義 (編集)

『オズの魔法使い』はもちろん、その他の世界名作、現代児童文学、日本やアジアの古典、SF、詩まで、1冊で125冊の電子書籍へと拡がる画期的な児童文学全集です。ひとつの文学作品への興味が、次々と新しい名作への扉を開いてくれます。

映画・ミュージカルでも人気! 派生作品にも触れてみては

今回は、『オズの魔法使い』が書かれた背景や、そのあらすじ、知っておきたいことなどをお伝えしてきました。『オズの魔法使い』は、小説だけでなく、映画やミュージカルのタイトルとしても長年愛され続けています。昨今では、西の悪い魔女と南の良い魔女の友情にフォーカスし制作された裏話的な舞台作品も人気です。小説だけでなく、これらの派生作品にもぜひ触れてみては。

あなたにはこちらもおすすめ

親子で楽しめるファンタジー小説10選|「マイクラ」から「モモ」までおすすめを厳選
魔法やドラゴンなど、空想の世界の楽しさを教えてくれる「ファンタジー小説」。今回は時代を超えた名作から、ゲームの世界を扱った作品、アニメ映画に...

文/羽吹理美 構成/HugKum編集部

編集部おすすめ

関連記事