病気にかかることを「引く」というのは、風邪だけ
「かぜ」と呼ばれる病気になることを、「かぜを引く」と言います。この「引く」ですが、ほかの病気では使いません。なぜ「かぜ」だけ「引く」と言うのかご存じでしょうか?
ほかの病気、たとえばインフルエンザや感冒は、「罹(かか)る」「なる」とは言いますが「引く」とは言いません。逆に「かぜ」は「罹る」「なる」と結びつけようとすると言えなくはないのですが、いささかすわりが悪い気がしてしまいます。
昔は「風」が病気を発症させると考えられていた
これは昔の人が空気の流れである「風」のせいで、病気の「かぜ」を発症すると考えていたからなのです。どういうことかと言いますと、「かぜを引く」の「引く」は、自分の体に受け入れたり、身に及ぼしたりするというのがもともとの意味です。そしてこれが吸い込むとか、かぜにかかるとかいう意味になったのです。つまり病気の「かぜ」は、空気の流れの「風」を体に吸い込んだために起こると考えられていたようです
病気の「かぜ」は漢字で「風邪」と書きます。「風邪(ふうじゃ)」は体内にはいっていろいろな病気を引き起こすとされる風のことなのです。
最近はあまり言わなくなりましたが、薬や茶などが古くなって湿ったり乾燥したりして役に立たなくなることも「かぜを引く」と言います。これも、空気の流れの「風」に当たって、そのような状態になると考えたために生まれた意味のようです。
目病み女にかぜ引き男
ちなみに、「目病み女にかぜ引き男」ということわざがあります。
目をわずらっている女は、目が潤んでいてその様子が男心をそそり、かぜを引いている男は、鼻にかかった声をしているので女心をくすぐるといった意味です。でも人それぞれですから、男がかぜを引いたからといって必ず女性にもてるようになるという保証はありません。