主人公は実在した!『ほら吹き男爵の冒険』のモデル、作者、あらすじを紹介【名作を5分で読了気分】

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『ほら吹き男爵の冒険』とは、その昔、ドイツ人男爵が自分の館に人を集めて、各国を旅したエピソードを夜な夜な語ったものが元になったと言われている実話集ですが、あまりに突拍子もない冒険談に人々からは「ほら吹き」と呼ばれるように。果たして本当に「ほら」なのでしょうか? どんなお話だったのか一緒にひも解いていきましょう。

ドイツ発『ほら吹き男爵の冒険』ってどんなお話?

『ほら吹き男爵の冒険』はドイツの詩人・作家のG.A.ビュルガーが、実在するドイツ貴族・ミュンヒハウゼン侯爵の冒険談をまとめたものです。

G.A.ビュルガーによる童話

『ほら吹き男爵の冒険』は、18世紀のドイツ貴族であるミュンヒハウゼン侯爵の冒険談を元にした児童文学で、ルドルフ・エリヒ・ラーエンドルフ伯爵によって匿名で出版。その後、改訂版がゴットフリート・アウグスト・ビュルガー(G.A.ビュルガー)によって1785年に出版されました。

原題:ドイツ語表記:Münchhausens Abenteuer、英語表記:The Adventures of Baron Munchausen
国:ドイツ
発表年:1785年
おすすめの年齢:小学校中学年~

G.A.ビュルガーってどんな人?

G.A.ビュルガー(G.A. Bürger)は、1747-1794年の18世紀のドイツの詩人・文学者です。

ビュルガーは、主に詩や短編小説を執筆し、ロマン主義の作品が多くみられます。彼の代表作は、物語詩「レノーレ」(”Lenore”)です。この詩は、死んでしまった恋人を追う女性の物語を描いたもので、恋と死が主題のバラードですが、近代バラード史上、最高傑作のひとつと言われています。

また、ビュルガーは、中世の伝説や民話を題材にした作品も多数執筆しており、その中に、“Münchhausen”(ほら吹き男爵の冒険)“Der Wilde Jäger”(野生の狩人) などがあります。

特に『ほら吹き男爵の冒険』は、奇想天外で楽しい物語として知られており、子どもたちだけでなく大人にも愛読者がいます。また、男爵の冒険談が後の作品に影響を与えたこともあり、多くの映画やテレビ番組、舞台作品などにもなっています。これらの作品は、後の世代の作家たちにも多大な影響を与えました。

 

主人公のモデルは実在する人物

「ほらふき男爵の冒険」は実在する人物、ミュンヒハウゼン伯爵(Baron Münchhausen、18世紀のドイツの貴族)がモデルとなっています。

ミュンヒハウゼン伯爵が、実際にどの程度の冒険や体験をしたかは分かりませんが、彼は自分の館に夜な夜な人を集めて自分の冒険談を語ったそう。

しかし、その物語は、実際にはありえないような驚くような出来事ばかりで、例えば「自分は銃弾に乗って飛行した」「馬の尻尾につかまって空を飛んだ」などと非現実的な冒険を経験したと言っていたようです。人々は半信半疑でしたが、あまりに面白いので、毎晩話を聞きに多くの人が集まったと言われています。

ミュンヒハウゼン伯爵の死因

「とても面白いので、本にして出版したい」とルドルフ・エリヒ・ラーエンドルフ伯爵が提案しましたが、ミュンヒハウゼン伯爵は同意しませんでした。

しかし、彼の反対を無視して本は匿名で出版されてしまったそう。それを知り、ミュンヒハウゼン伯爵は激怒しそのまま憤死したというエピソードもありますが、実際にはクリミア半島での狩猟中に、自分の猟銃で足を撃ってしまい、その傷がもとで死亡したようです。また、別の説では、ミュンヒハウゼン伯爵は、晩年に病気に苦しみ、自宅で静かに死去したともされています。よって正確な死因については不明です。

ただし、ミュンヒハウゼン伯爵の冒険談が、後世の作家たちに影響を与えたことは事実であり、彼の名前は、物語や文学の世界で今もなお語り継がれています。

「ミュンヒハウゼン症候群」の語源にも

「ミュンヒハウゼン症候群」または「ほら吹き男爵症候群」とは、周囲の同情や関心を引くために重病を装ったり、自らの体を身体を傷つけたりする精神疾患の一種で、医学的には「作為症(虚偽性障害)」と診断されます。自己申告病とも、フェイク病とも呼ばれています。

この病気を初めて報告したイギリスの小児科医リチャード・アッシャーによって名付けられました。患者が自分の病状を自己申告する様子が、ミュンヒハウゼン伯爵が自分自身の冒険談を自己申告する様子と似ていることから、この名前を付けたと言われています。

原因は、心理的要因。精神科医や心療内科医による診断が必要です。治療には、認知行動療法や対人関係療法などが用いられますが、治療が難しいようです。

『ほら吹き男爵の冒険』のあらすじ

『ほらふき男爵の冒険』が、どれだけ奇想天外な物語なのか、あらすじをまとめてみました。

※以下では、物語の核心にも触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

あらすじ

物語は、ほら吹き男爵が、旅の途中で出会った、旅人たちに自分の冒険談を語り始めるところから始まります。男爵は、馬の尻尾を掴んで飛行したり、月に上ったり、巨大な魚に飲み込まれて海底を探検するなど、あり得ないような驚くべき冒険を次々に語っていきます。

旅人たちは、最初は男爵の話に疑いを持ちますが、次第に男爵の説明があまりに詳細で、思わず信じてしまうようになります。そして、男爵の話に興味を持った一行は、男爵と共に、より多くの驚くべき冒険を経験するために旅を続けることになります。

男爵と旅人たちは、さまざまな危険な場所を訪れます。そして、人食いオオカミと戦ったり、海賊と戦ったり、竜と戦ったりします。男爵の驚異的な能力と勇敢な行動によって、彼らはなんとか危機を乗り越えていきます。

物語のエンディングでは、男爵の冒険談が嘘であることが示唆されるも、旅人たちは男爵を信じ、彼を称えることで物語が終わります。

男爵は、嘘をついていたことを謝罪することなく、自信たっぷりに去っていくのです。最後は、「この驚異的な冒険物語が、周囲の人々に夢と喜びを与えることができた」と結ばれて終わります。

あらすじを簡単にまとめると…

要約すると、この物語は、ヨーロッパを旅する一行がミュンヒハウゼン男爵と出会い、一緒に奇想天外な冒険を体験するファンタジー小説です。

主な登場人物

物語中には、多数の小さなキャラクターや敵が登場します。下記、登場人物の説明を読むだけでも、ミュンヒハウゼン男爵が驚くべき能力で敵を倒したり、説得したり、女王たちからは贈り物を貰ったり、と大活躍する様子が分かることでしょう。

ミュンヒハウゼン男爵:主人公

身の上話や冒険談を語ることが好きで、驚くべき冒険を次々と語って旅人たちを驚かせる。

旅人たち

男爵の話を聞いていた旅の一行の人々。ミュンヒハウゼン男爵に惹かれ彼の冒険に同行し、彼の驚異的な能力を目の当たりにする。

船長

海賊船の船長。男爵や旅人たちと戦うが、男爵の驚異的な能力に敗れる。

人食いオオカミ

森の中でミュンヒハウゼン男爵や旅人たちと戦う。男爵の驚異的な能力によって倒される。

ミュンヒハウゼン男爵や旅人たちと戦う。男爵の巧みな話術で説得され、戦いをやめる。

月の女王

ミュンヒハウゼン男爵や旅人たちを月に招待する。彼らが去る際には、彼女らは男爵たちに贈り物を与える。

海の女王

ミュンヒハウゼン男爵や旅人たちを海底に招待する。男爵は彼女に一目惚れし、彼女から贈り物をもらう。

「ほら吹き男爵の冒険」を読むなら

ミュンヒハウゼン男爵は、正式にはミュンヒハウゼン・カール・フリードリヒ・ヒエロニュムスという名前だったため、児童書には「ほらふきカールおじさん」などと記載されている本もあります。ここでは「ほら吹き男爵の冒険」を全4冊集めてみました。

ほらふきカールおじさん ロシアのたび (講談社)

斉藤洋 (著), 高畠純 (イラスト)  形式: Kindle版

講談社の創作絵本シリーズです。「です、ます」調で易しい語り口です。小学生低学年~。

カラー名作 少年少女世界の文学 ほら男爵の冒険(小学館)

森いたる (著), 竹山のぼる (著)  Kindle版

美しく迫力あるイラストでフルカラー。Kindle版で完全再現されています。漢字があり、ルビはなしのため、テキスト読み上げ機能のあるKindleで読めない文字を覚えながら読書するのもおすすめです。小学生中学年~。

ほふき男爵の冒険 (偕成社)

斉藤 洋  (文), はた こうしろう (イラスト) 文庫、Kindle版

モノクロですが、読みやすい翻訳です。「である」調のユーモアいっぱいの男爵口調が魅力的な一冊。漢字あり、ルビあり。小学生中学年~。

新訳 ほらふき男爵の冒険 (集英社)

石崎 洋司 (翻訳), 片浦 (イラスト) 新書

240ページと長いですが、平易な表現と全ルビがあり、少しずつ読み進められます。小学中学年~。

子どもたちは想像力をかきたてられ展開が魅力

『ほら吹き男爵の冒険』は、あり得ないような楽しいエピソードが次々と起こるので、子どもたちは想像力をかきたてられ展開に夢中になることでしょう。また、短いエピソード集ですので、読み聞かせにも向いています。

どの本にも「わしは~じゃ」「~なのだぞ」と「男爵節」で語られていますので、男爵になりきって読み聞かせるのも良いでしょう。お子さんと一緒に空想の世界に入ってみませんか。

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文/加藤敬子 構成/HugKum編集部

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